本文へスキップ

青森 行政書士 マンション管理士 介護福祉士 ワタナベ総合法務事務所 最新法令&暮らしQ&A

電話でのお問い合わせはTEL.017-765-6363

〒030-0812 青森県青森市堤町1-3-14

Q&A権利・許認可・マンション関連・介護・福祉など解説。

法律法務、マンション特有、不動産、介護福祉、資格試験など

『マンション管理に関する主体と支援者』Q&A

Q1.マンションの管理者とは?

A.「区分所有法」には、管理者の要件はありません。
 マンションによっては、清掃・修繕・荷物預かりなど、管理人が常駐していることがありますが、管理人は、管理業者等の社員であり、区分所有法で規定する「管理者」ではありません。
「管理者」は、法律上(民法)の委任契約に関する規定となり、人数や任期についても区分所有法に規定はありません。管理規約に別段の定めがない場合は、規約や総会(集会)の普通決議にて、任意に定めたり解任ができます。
 
「管理者」の権利と義務は、以下:1〜5の内容に表すことができます。
1.共用部分の保存行為(マンションの敷地・附属施設を含む)
2.総会(集会)決議・規約の実行
3.受任者としての権利義務
 @善管注意義務
 A報酬支払請求権
 B報告義務
4.職務に関する代理権
 @損害保険金の請求及び受領
 A共用部分に生じた損害賠償金、不当利得返還金の請求及び受領
5.訴訟追行権
 管理費滞納の区分所有者や修繕業者等には、訴訟を起こす場合があります。この場合、規約や総会(集会)決議により原告・被告となることができます。(自己の名前で訴訟当事者となること)
 マンションの標準的な定めを法定している『マンション標準管理規約』では、「管理者」は管理組合の理事長であり、区分所有者から選任すると規定されています。但し、規約を変更し、「管理者」を選任することもできます。また、管理組合の理事・監事に関して、改正前は「マンション標準管理規約」35条で、マンションに現に居住する組合員から、総会にて選任(理事長・副理事長・会計担当理事は、理事の互選)するとなっていたが、平成23年改正にて、「理事又は監事は、組合員のうちから、総会にて選任する。」となりました。これは役員等のなり手不足等の実態を踏まえ、役員資格の要件を緩和する改正です。
 尚、外部者(専門家:マンション管理士等)を管理組合役員に選任する場合は、そのマンションの管理規約を改正することで対応します。


Q2.マンション管理士の必要性は?

A.「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(以下、マンション管理適正化法)2条に、管理組合はマンション管理士その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対して、管理組合の運営その他マンション管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。その為の費用を管理費の支出事項として規定しています。
 日本のマンション居住者が約1700万人(不動産適正取引推進機構 H24年度10月統計)。マンションの修繕・建替え・耐震問題・管理費/修繕積立金滞納・独居高齢者への環境配慮等、マンションは複雑多様で、管理組合(理事会)が全てを対応することは不可能なのが現状です。マンション管理士は、その専門家として支援に加わり、問題点の解決に向け、身近で頼りになるとともに法定された制度です。
 平成23年3月11日発生した東日本大震災は、多くの犠牲と被災者を生み出し、現在も被災からの復興に苦労しています。マンションに関しても、震災に強く安心・安全に暮らせることが不可欠です。
 旧耐震基準の老朽化したマンションは、今後、350万棟強(H25年度10月国交省統計予想)になると予測されています。老朽化マンションが倒壊した場合は居住者のみならず、町にとっても避難・救援等、深刻な問題となります。この問題に対しても、管理組合への支援・働きかけ、最善のサポートができるアドバイザーがマンション管理士です。
 また、マンション管理士は、管理組合の立場に立ち支援を行うことから、様々な本業を持つ管理組合の理事等には、マンションの抱える諸問題に振り回されることなく、諸問題の解決が図れます。

このページの先頭へ

Q3.マンションの管理会社の役割とは?

A.「管理組合から委託を受けて基幹事務を含む管理事務を行う行為で業として行う者」は、国土交通省に備えるマンション管理業者登録簿に登録を受けなければマンション管理業を営むことができないと、「マンション管理適正化法」44条に定められています。
 このように適正化法により、マンション管理業に関しては、管理組合との管理委託契約における業務処理(範囲・内容)の明確化と適正な業務遂行への責任があります。マンションの品質管理・運営・資産及びの的確な管理組合へのマネジメントも含めたものです。
 管理業者がこのような期待に応えていく為には、法律・建築・財務会計・税務等の各専門分野に関する幅広い知識と経験、コミュニティ形成の支援、苦情処理等の能力を含めた総合的な管理能力を備えていく必要があります。
 マンション管理の苦情・紛争相談等の内容によると、売買契約に起因するトラブルや管理委託契約に起因するトラブル、管理組合の運営や居住者の管理意識・生活意識に起因するトラブル等が多くあります。
 トラブルの原因が管理組合の管理者や区分所有者に対する重要事項の説明不足、管理規約・管理委託契約の内容での不備等から発生していることがあります。
 「マンション管理適正化法」56条で、マンション管理業者(6以上の独立部分を有する管理組合の管理事務を受託する場合)には、国家試験に合格し、管理業務主任者証の交付を受けた「管理業務主任者」を、管理する管理業者の事務所ごとに設置するように定められています。
 マンション管理業者が管理組合の管理者や区分所有者から信頼を得る為には、マンション管理に係わるトラブル防止が必要であり、管理業務主任者は重要事項や委託契約、管理事務報告に際し極めて重要な役割を担っています。


Q4.マンション管理会社との管理委託で注意する点は?

A.最近のマンションの約8割以上が管理を外部の管理業者に管理委託しています。マンション購入時に契約書にて指定されている場合もあります。(新築分譲で購入した場合、ほとんどこのケースとなっている)
 理想的には、区分所有者で組織した「管理組合」で管理業者及び管理内容を決定することが本来必要と思われますが、多くのケースは建築会社(建築・施工・販売を一挙に手掛けるディベロッパー等)の関連会社が管理委託を請け負っています。
 そこで管理委託の「チェックポイント」を把握して管理委託が適切にされているかチェックすることが必要となります。

 《管理委託のチェックポイント》
@管理会社は国交省指定の登録業者か? 
A管理委託契約の重要事項説明を「管理業務主任者」が行っているか?
B重要事項説明書は「マンション管理適正化法」に適った内容となっているか?
 (ここは、マンション管理士等の専門家にチェックを依頼する)
C委託契約時に所定の事項が記載された書面の交付(委託契約書など)がされたか?
D委託業者が禁止されている「基幹事務に関して一括委託」が再委託されていないか?
E管理組合の財産(管理料、修繕積立金、駐車料など)が適切に分別され、残金に間違いがないか?また、管理費等の銀行口座が管理組合の理事長名となっているか?
(収納代行方式の場合は管理業者名。*この場合も管理適正化法で厳格な規定がある)
F通帳、印鑑を別々の人物で管理しているか?
G積立保険証券を管理会社が保管していませんか?

 「マンション管理適正化法」で厳格な基準がありますが、管理組合が組織されずに、活動もされていなければチェック機能への役割が不明確となります。また、マンション管理士等の専門家が関わらなければならないケースもあります。(法令解釈・委託業務内容など適正にされているかの検証が必要な場合など)


このページの先頭へ

Q5.マンション管理会社の「管理人=管理員」「フロントマン」とは?

A.マンションの管理員やフロントマンは、管理受託会社が雇用している社員です。雇用されている以上は勤務体系に則り常駐しています。(最近多いのは、勤務体系の中で定期巡回して一人の管理員が数棟のマンションを掛け持ち管理しているケースです)
 マンション内での管理業務や区分所有者への対応、接遇や言葉使いに問題がある管理員・フロントマンも残念ながらおります。ここの改善等への対応に関しては、個々に区分所有者や居住者が行うより、管理組合の理事会経由で問題の指摘と改善要求することが必要です。
 管理会社はこの手続きで上がってきた事案には、『管理組合が主体』との意識を持って、しっかりとした対応を果たす責任があります。
 理事会は、上がってきた事案に関して迅速に調査判断し、質問書や意見書等の書面として管理会社へ伝える方法がベターです。管理会社は、書面で要求されることで「言った言わない」との不誠実な対応逃れが出来なくなります。また、意見や希望がバラバラで、電話やメール等、様々な形式で改善を求められると、管理会社側が混乱することになり、結果として対処に間違いが生じたり、何にも改善されない事態となります。

 マンションの管理組合が共通認識を持ち、窓口を一本化してしっかりと改善要求することで、改善が図られると考えます。また、このような対応を取ることで管理会社に、「ここのマンション管理組合はきちんとしている」との認識付けにも繋がる思います。


『マンション購入・売却時のポイント』Q&A

Q6.マンション購入時の必要かつ不可欠な確認事項は?

A.マンションのご購入には、売主(宅建業者や建設会社)が買主へ引渡しに関して、「マンション管理適正化法」で定められている書面の交付が必要となっています。
 新築に関しては、
 1.付近見取図
 2.配置図
 3.仕様書(仕上げ表を含む)
 4.各階平面図
 5.二面以上の立面図
 6.断面図または矩計図(かなばりず)
 7.基礎状図
 8.各階床状図
 9.小屋状図
 10.構造詳細図
 11.構造計算書
 建築工事完了時に、これら11図面の交付が売り手側(宅建業者や建設会社)に定められています。
 その他、(社)マンション管理業協会(旧高層住宅管理業協会)が、交付が望ましいとしている関係書類と図面があります。
 参考までに:
 1.設計図書関係書類(数量調書、竣工地積測量図)
 2.特定行政庁関係書類(建築確認、検査済証、給水排水設備書類)
 3.消防関係書類(防火使用開始届)
 4.機械設備、取扱説明書
 5.専有部分機器取扱説明書
 6.専有/共用機器完成図書
 7.近隣協定書類
 8.売買契約書関係一式(アフターサービス基準等)
 その他(電気室契約書、廃棄物保管届、建築協定書、備品リスト等)
以上の通り、新たに建築されたマンションで、人の居住の用に供したことがない分譲の場合は、国土交通省令で定める期間内(1年以内)にそのマンション(付属施設含む)の設計図書の交付が義務付けられています。

 中古マンションは、宅建業法で定める重要事項書面にて確認します。
 マンションの販売は購入者が、完成の数ヶ月前に分譲業者から説明を聞き、現地モデルルームを見学する、現地での販売会にて購入を決める等、売買契約に至るのが一般的な流れです。
 その際、宅建業者である分譲会社は、宅建業法で定める一定の重要事項を説明するように法定されています。重要事項を物件契約前に説明するのは、国家試験に合格・登録後、宅地建物取引士証の交付を受けた「宅地建物取引士」(旧名称:宅地建物取引主任者)が行います。
 「重要な事項」とは、取引の当事者にとって契約締結の判断に重要な影響を及ぼす事項をいい、重要事項の説明義務の対象として宅建業法35条に定める事項以外の事項(※判例では、売主もしくは宅建業者が事件・事故等を認識しつつ開示・説明しない場合には物件の瑕疵として損害賠償責任を認めていることから、買主に開示・説明する必要ありと適正業者間では積極的に開示・説明している)でも含まれますので、物件購入の際は十分な確認が必要となります。

 中古マンションを購入する際の税制面では、「住宅ローン」を組んで購入される場合は、『住宅ローン控除』の対象となります。ただ、築後年数要件が定められており、木造住宅など非耐火構造の建物の場合は築20年以内、 マンションなど耐火構造の建物の場合は築25年以内と定められ、さらに、平成17年の税制改正で住宅ローン控除の築後年数要件について、見直しが行われ、購入する中古マンションが、耐震改修等を行ない現行の耐震基準を満たすことを示す「耐震基準適合証明書」が発行されている場合、築何年であっても住宅ローン控除の対象となります。
 しかしこれには条件が定められており、「耐震基準適合証明書」に関して、マンション引渡し前までに、売主名義で発行されている必要があります。中古マンションを購入し、引渡し前までに、この「耐震基準適合証明書」を売主から取得していれば、築何年であっても住宅ローン控除の適用が受けられます。
(優遇税制等の説明が足りない不動産仲介業者は、購入の際の仲介者としては避けた方が無難です)

 マンション購入後、購入者がよく分からない状態にて入居し、トラブルとなることは購入者保護の見地から不適切であり、宅建業法では、マンション管理に関係する事項あるいは居住する際に、避けて通ることのできない共同生活上のルールは、購入者(区分所有者)に対して、売買契約を締結する前に十分説明するように求めています。

Q7.マンションの居住価値(資産価値)は?

A.区分所有者としてマンション(専有部分)のオーナーになった場合は、現在の価値や維持・管理に関心を持つことが必要です。マンションの居住生活には、法律(区分所有法/管理適正化法/標準管理規約)・会計・設備・修繕(メンテナンス含む)等、適切な管理または運営が不可欠です。
 これらの総合的な管理が疎かなマンションは、区分所有者が諸事情で売却したいと希望しても、売却するには泣く泣く売値を下げるなど大変苦労することとなります。
 マンション管理士を活用することでマンションを適切に管理・運営し、長持ちに繋げることが将来の備えとなります。

Q8.マンションの専用使用権とは?

A.専用使用権は、「マンション標準管理規約」14条に明記されていますが、「専用に使用する権利」を意味しており、好き勝手にしていい訳ではありません。専用使用部分を「所有」していることではなく、管理規約や使用細則に則った使用が必要です。
 尚、専用使用部分の通常に伴う修繕は、専用使用権を有する区分所有者が、責任と負担において行います。
 例えば、駐車場の専用使用権に関して、「マンション標準管理規約」は原則として、使用できるのは区分所有者だけであり賃借人等に貸すことはできません。可能にするには、そのマンションの規約にて変更することが必要です。全戸分の駐車場が完備されている場合は、規約にて又貸しを可能にすることがあります。

Q9.マンションの管理業者との管理委託契約とは?

A.マンションの管理業務方法は大きく分けて3通りあります。
 管理組合が自主管理する方式、一部を管理業者に委託する方式と、全部を管理業者に委託する方式です。
 この3方式にはそれぞれメリットデメリットがありますが、個々のマンションに適した方式に適っていない場合はマンションの居住環境や個々の区分所有者の満足度に大きく影響してきます。この方式で最も多いのは「全部委託」する方式です。特に最近、数年前の施行販売では、ほぼ全棟が全部委託となってきました。
 管理業者の管理委託業務においては、区分所有者(居住者)に分かりにくい管理上の専門的知識・領域で行い、委託の業務の一部に複雑な業務の代行があるなど、居住環境に影響する割にはこの委託内容に関して区分所有者の理解が進んでいない現状があります。
 管理委託の内容や時期・回数・金額を明確にした「管理委託契約書」への把握と、不明部分がある場合は、管理業者の管理業務主任者に説明を求めることも必要となります。尚、管理業者が管理組合や区分所有者と管理受託契約を締結する際には、その業者の管理業務主任者(国家資格者:受託件数によって管理業者には法定数の配置が必要)が、管理組合や区分所有者にその委託内容・履行に関する事項を書面で交付し説明する義務があります。この義務は新規受託や現契約の更新でも同様です。
マンション購入時にこの委託契約書を締結して、実際に入居し生活してみて不満や不明点が出来た場合は再契約時(更新の際)に管理業者の管理業務主任者に不満や不明部分を整理し確認することが重要です。
 管理委託契約書に照らして、どの点に問題があるのか、契約不履行があるのか、善管注意義務違反なのか、整理・確認した上で、改善などを申し入れることが有効な方法です。管理業者の良し悪しは一概に言えない部分があります。
 マンションの規模・管理組合の運営体制などによっても「良い管理業者の基準」が異なってきます。マンション管理組合の運営が公平迅速になっているか、維持管理に難しい設備がないか、フロントサービスをどこまで求めかつ契約条項ではどうなっているか、区分所有者にとって快適な生活を守る為にも契約内容の把握と実施状況の精査が重要となります。


このページの先頭へ


『マンション管理組合の組織など』Q&A

Q10.マンションの管理組合の「総会(集会)」とは?

A.「総会(集会)」は、そのマンションの区分所有者全員(組合員)で組織される管理組合の『意志、最高決定機関』です。
 定期・臨時(通常は理事長が招集する)にて、行われます。
 総会への出席資格は、区分所有者全員(組合員)にあります。尚、理事会が認めた者(マンション管理士等)は、総会(集会)に出席することができます。
 因みに、そのマンションの管理を受任する管理業者であっても、総会(集会)に出席するには、理事会が認めることが必要となります。
 総会(集会)には、「通常総会」「臨時総会」に分けられます。一般的な「定期」総会との名称は、区分所有法やマンション標準管理規約にはありません。この場合の名称は「通常」総会に該当します。
 総会(集会)の招集は、区分所有者の5分の1以上・議決権5分の1以上で管理者に対して会議の目的を明確に示して請求することができます。
 この場合、請求を受けたそのマンションの「管理者」は2週間以内にその請求の日から4週間以内を総会日とする招集通知を発しなければなりません。
 「管理者」がこの手続きをしない場合や総会日が4週間を超える場合は、請求をした区分所有者が総会(集会)を招集することができます。
 「区分所有法37条」に、総会(集会)には決議事項の制限として、予め招集通知にて記載事項となっていない事案について、決議することができないと規定されています。例えば、総会(集会)にて、「緊急動議」の提案があった場合でも招集通知にない提案は決議ができません。
 各人がご多忙の中での総会(集会)ですので、通知事項以外の事柄も提案されることがあります。この場合は提案者の意見をよく聞いた上で、次回の審議対象とするなどの対応が必要となります。

Q11.マンションの管理組合の「専門委員会」とは?

A.「マンション標準管理規約」55条に、理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。となっています。
 専門委員会は、理事会の決議にて、様々な懸案事項や今後の計画等に対して検討し理事会に諮問する機関です。決定権はありません。大規模修繕委員会や規約改正委員会、防災対策委員会等があります。委員会のメンバーは、理事会の選任により、特定の課題に関心の強い区分所有者や詳しい区分所有者、また、マンション管理士等の外部者にも参加を求めることができます。
 尚、専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える場合、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等、専門委員会の設置には総会(集会)の決議が必要となります。

このページの先頭へ

Q12.マンションの管理組合の「役員」及び「監事」とは?

A.「マンション標準管理規約」35条に、マンション管理組合に役員を置く。理事及び監事は、組合員のうちから総会にて選任する。となっています。
 役員の選出に抽選や輪番制を実施している管理組合及び区分所有者が立候補する場合には、役員の構成に配慮とバランス(各階ごと等)が必要となります。
 居住者の高齢化・本業の忙しさ等から役員のなり手が少ないという問題があるマンションは、管理規約の改正にて、外部の専門家(マンション管理士等)に役員をお願いすることもできます。(区分所有法では、役員は区分所有者と決められていません)
 管理組合の役員の責任は大変重要です。様々な問題への対処が必要となりますので、まずはそのマンションの管理規約を今一度、熟読することである程度の知識と理解を進めることが肝要です。
 また、役員就任後、勉強会のような機会を設定し、マンション管理士等の専門家から助言・講義など受けることも有意義と思います。
 「マンション標準管理規約」41条に、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。となっています。 監事の業務は、会計だけではなく、業務監査も含まれています。また、監事は理事の一員ではなく理事会への出席義務(理事会の議決権はない)はありません。(理事会から出席を求められた場合は出席義務が生じます) また、業務の執行及び財産に不正が認められる場合は、理事会に左右されることなく、総会招集ができます。
 その他、監事の権限と義務に、「利益相反事項」について監事が代表すると、「区分所有法51条」にあります。「利益相反事項」とは、管理組合が法人となっている場合、理事長を含め理事が例えば、自身で所有している土地をその管理組合に売却取引する場合は、その理事長並びに理事は、管理組合法人を代表することができず、この場合は管理組合法人を「監事」が代表する。となっています。この規定に違反して、理事長並びに理事が法人を代表しても無権代理となり無効となります。
「利益相反事項」の規制は、理事長並びに理事が管理組合法人の利益を犠牲にして自己の利益を図ることを規制・防止することにあります。
 取引であっても、負担のない贈与や無利息・無担保の金銭貸付は、管理組合法人が不利益を受けるおそれがないことから、当事者理事長並びに理事が代表することが可能です。
 理事会役員が専有部分の譲渡または転居等により欠員となった場合を想定して、補欠役員として事前に総会で承認しておく、または理事会にて補充役員を選任できる旨、管理規約を定めておくことも効果的です。


Q13.マンションの管理組合の細則等のルール化とは?

A.マンション管理標準指針(国交省H17年12月公表)では、「標準管理規約と同趣旨の規定が置かれ、かつ、使用細則等にルールが定められている。」ことをマンション管理組合の「標準的な対応」としています。
 この指針には強制力はありませんが、マンションの管理や修繕・改修等に関するルール等を定めるようにと、指針としています。
 各区分所有者が必要なときに専有部分の修繕等を円滑に実施できるように、専有部分の修繕等における基本的なルールや具体的な手続きの方法等を管理規約を補足する「使用細則」等で、明確にしておくことが居住間でのルールを守る上で非常に大切です。
 例えば、床のフローリング・間取りの変更やユニットバスの交換、主要構造部に直接取り付けるエアコンや諸工事、配管配線、インターネット回線のブロードバンド化など、中小の修繕等をどのように段取りし手続きすればいいのか?マンション内の各区分所有者にはどのように連絡調整すればいいのか?など、管理規約では細かな条項はありませんので、使用細則等でルール化することが不可欠となります。
 修繕等の工事の承認または不承認は理事会の決議を経るのが管理規約に定めていても、工事での躯体への影響や防火・防音対策、他の区分所有者(賃貸借している場合は、マンションの住民)への影響等について適切な判断対応が求められます。
 また、細則等が存在するが現在のルールとして、不足感がある場合も現状に適した細則に改訂することも必要です。
 マンション管理士は、管理規約同様、マンションの実情を勘案し、細則等も作成・改訂する業務の専門家です。

 マンション管理組合としては、各区分所有者が修繕等の工事を円滑に行えるように、工事の手続きや守るべき事項等を「使用細則」等に明確にしておき、各区分所有者がその細則等を周知することが大切となります。

このページの先頭へ

『マンションに関するトラブル対処法』Q&A

Q14.マンションの区分所有者や賃借人の問題行為の対応は?

A.マンションは、区分所有者並びに区分所有者から専有部分を賃りている賃借人(占有者)が共同のルール(管理規約・使用細則等)に従って生活することが求められます。
 しかしながら、管理規約や使用細則等に違反する行為もあります。区分所有法では、これを「共同の利益に反する行為」として、対処する上で特別な措置を認めています。

 1.区分所有者(家族など同居人も同様)への措置
   第1段階:行為停止等の請求
    例:カラオケ等の騒音
      共用部分の荷物置き場
      違反行為への予防措置(防音装置の設置など)
 区分所有者や賃借人等の占有者が行為の停止に応じない場合は、訴訟にて上記何れかの請求をすることもあります。この場合は、総会(集会)の普通決議を経て行います。
   第2段階:使用禁止の請求
 違反者に対して行為の請求等をしても十分でない場合は、相当の期間、専有部分の使用禁止を請求することができます。但し、訴訟にて請求することが必要です。
 専有部分の使用を禁止する非常に強い措置となることから、総会(集会)の「特別決議」が必要となります。また、決議をするには予め違反者である区分所有者に弁明の機会を与えることが必要です。(区分所有法58条)
 裁判の結果、原告勝訴の判決(請求認容判決)が確定した場合は、被告とされた違反者(区分所有者)は、相当な期間(裁判所が定める)、専有部分の使用ができなくなります。この場合は、家族やその他同居人も使用できません。尚、定期的に専有部分の換気等、維持管理する上で必要な行為と、他人に賃貸することは認められます。
   第3段階:競売の請求
 違反者に対しての最後の手段となる「排除」という目的達成の請求です。
 使用禁止の請求同様に、総会(集会)の特別決議を経て訴訟を行います。特別決議前に違反者への弁明の機会が必要です。
 原告勝訴が確定したのち、競売の申立てができますが、判決確定から「6ヶ月以内」となっています。(区分所有法59条)

 2.占有者(専有部分を賃貸人・権限のない占有者)への措置
   第1段階:行為停止等の請求
 区分所有者に対する行為の停止等と同様の手続きとなります。
   第2段階:引渡しの請求
 違反者である占有者に対して、行為の停止請求等をしても十分でない場合は、占有者への最後の手段として、区分所有者と占有者間の賃貸借や使用貸借等の契約解除と専有部分の引渡しを請求することができます。(区分所有法60条)
 この請求は、訴訟が必要な点と総会(集会)の「特別決議」及び決議前には占有者に弁明の機会が必要です。訴訟の場合の被告には、区分所有者と違反者である賃借人等の占有者を共同で訴えます。尚、違反者である占有者が占有権限のない(賃借人ではなく、不法に占拠する者)場合は、占有者のみを被告として訴えます。
 裁判の結果、原告勝訴が確定したとき、区分所有者と賃借人(占有者)の賃貸借や使用貸借契約は解除されたこととなり、違反者である賃借人(占有者)に対して原告(管理者等)は専有部分の引渡請求権を取得します。
 原告(管理者等)は、賃借人(占有者)から引き渡された専有部分を、区分所有者に遅滞なく引渡します。
 占有者への引渡し請求で、暴力団組事務所の賃貸借解除と引渡しを認めた判決があります。(1989年最高裁:横浜請求訴訟)
 裁判での解決を求める場合は、法的根拠や手続きを含めた進め方等に関して、理事会・総会の十二分な意思疎通と情報の透明化が不可欠となります。また、長期化が避けられません。
 問題への迅速な対応と解決への「打ち手」を速やかに実行し、訴訟の前で解決できないかを模索・支援しつつ、管理組合(集会決議)や管理者等が訴訟判断した際の弁護士(訴訟代理人)へのコーディネートもマンション管理士の役割と考えます。
 尚、訴訟提起前には訴訟代理人(弁護士)や自治体、民間機関等の関係窓口に相談することで、社会通念や過去の判例を確認し、訴訟対応の戦略策定に活かすことが重要となります。

このページの先頭へ


Q15.マンションの「管理費」等の滞納問題の対応は?

A.「管理費等」には、区分所有者がそのマンションの管理・維持・運営等の為、管理組合へ納める(または積み立てる)管理費・修繕積立金・専用使用部分の使用料等があります。
 管理費等の滞納は、マンション管理組合の財政上はもちろん、管理・維持・運営・大規模修繕等に深刻な問題となります。
 滞納している理由が区分所有者(管理組合組合員)の破産等の場合は、回収が困難となることもあります。この問題への対応のポイントは、できる限り早急に対応措置を行うことが必要です。
 まずは、滞納の初期(滞納1ヶ月〜3ヶ月)における対応策として、訴訟となった場合も想定し督促の日時・内容を「業務実施記録」に記載し催促の証拠を保存することが必要となります。滞納者からの反応(返答・反論など)も時系列で記録する。
 通常の督促(督促状や口頭による催促・請求)は、民法上の「催告」となり、督促から6ヶ月以内に訴訟措置を講ずれば、督促時に滞納者債権(管理費・積立金・使用料等)に時効中断の効力が生じます。(民法153条)
 「マンション標準管理委託契約書 別表2」には、マンション管理会社は、組合員が管理費等を滞納したときは、支払期限後○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う」となっています。
 滞納が発生して4ヶ月以上になると通常の督促では解決できるのか、以下の検討をする段階となります。
   1.内容証明郵便による督促
   2.支払督促(民事訴訟法382条)
   3.小額訴訟
(民事訴訟法368条:訴訟目的価格が60万円以下の支払請求)
   4.通常訴訟(請求金額60万円を超える場合)
    *訴訟目的価格140万円を超えない請求は簡易裁判所へ提起できます。

 滞納者(管理組合組合員)の滞納が長期に及んでおり悪質かつ管理に支障が生じ、区分所有者の共同の利益に反すると認められる場合は、専有部分の「使用禁止の請求」「競売の請求」を行う方法もあります。(区分所有法58条・59条)
 管理費等の滞納問題で注意が必要な点に「消滅時効」があります。マンションの管理費等(年または短い期間で定めた定期金債権)の消滅時効は、「5年」とされています。(民法169条)*平成16年4月23日最高裁判決。

 管理費及び修繕積立金、マンション管理業者との委託業務費も該当します。これらの「消滅時効」の起算日は、「当月分は○月○日までに徴収する」等、管理規約または管理業者との委託契約書にて定められた期限が到来した日から進行します。

 上記2「支払督促」や上記3「小額訴訟」の手続きは、債権者(管理組合、管理者または区分所有者)が簡易かつ少ない費用にて債務の回収を進めることが可能なことから、債権額が少なく遅滞等の期間が短期の場合は有効となります。
 尚、簡易裁判所への民事訴訟は平成14年5月改正にて、司法書士法に基づき「簡易訴訟代理認定」を受けた司法書士も訴訟代理人として行うことができます。

 また、弁護士や代理認定司法書士以外の手続代理人も、簡易裁判所の訴訟につき、簡易裁判所の許可を得て、手続代理人となることができます。滞納金の請求訴訟を簡易裁判所に提起する場合、簡易裁判所の許可を得て、マンション管理組合の委任に基づいて、マンション管理士等が手続代理人を務めることも可能です。

このページの先頭へ


Q16.マンション内の「騒音」「生活音」等への対応は?

A.マンションは音に対する苦情やトラブルが発生しやすい構造であると思います。日常の生活をする上で、音は必ず発生するものですが、他の区分所有者(賃借人含む)にとっては受忍限度を超えて騒音になる場合もあります。受忍限度を超えていると判断される場合は、民法上の不法行為が成立します。(過去の判例で騒音を発生させた者へ損害賠償する旨、命じる判決がされている)
 しかしながら、不法行為の成立には受忍限度を超えるとの一定の裁判官の裁量があり、「騒音」「生活音」への抑制に必ずしも繋がるとは言えません。また、判決まで煩雑な証拠提出と時間を要します。裁判に訴えることではなく、区分所有者間で解決することが本来の対策と思います。
 「生活音」は、飛び跳ねる音、走り回る音、扉の開閉音、大きな声での話声、楽器やラジオ・テレビ等の音、これらの音を「集合住宅における衝撃音レベルの基準」では『軽量衝撃音』と『重量衝撃音』(重量物をドスンと落とすときに発生する音)と呼び、建築する際、備えるべき適用等級を定めています。
 マンション内の「生活音」に不満を感じている居住者は、建築施工書面(建築業者から交付されている施工設備関係書類、または管理組合が保管している書類)にて床・界壁の遮音・防音レベル等級を確認します。

 《レベル等級》
※床軽量・重量の適用等級を表し、数字の小さいほうが優れる。
 床軽量衝撃音:特級L−40、1級L−45、2級L−50、3級L−60
 床重量衝撃音:特級L−45、1級L−50、2級L−55、3級L−60

※界壁の遮音の適用等級を表し、数字の大きいほうが優れる。
 界壁の遮音:D−65、D−60、D−55、D−50、D−45、D−40

 上記、レベル等級の太字の等級が適用(建築の際に基準となる数値)されているか、チェックすること。この太字で記載したL−45・L−50、D−55・D−50の音の感じ方は、「ときには生活の音を意識する程度であり、特に気を付けなくても一応、快適で通常の生活ができる」と定めている。(日本建築学会の建築物の遮音性能基準と設計指針:あくまでも指針であり、建築年数が15年以上のマンションでは、この指針を反映した施工となっていない場合もある)


 レベル等級が適用等級に満たないマンションは、経常的に音へのトラブルが発生する可能性があり、管理組合を中心に遮音・防音工事等への対処が必要です。また、適用等級を満たしているのに騒音が発生している場合は、音を発生させている当事者への意識付け(居住ルールの再認識)が大切です。尚、居住マンションの生活ルールを定めた「マンション使用細則」に関して、居住ルール(楽器の演奏時間を制限、大きな音の原因となる深夜の洗濯・掃除など)が騒音や生活音への基準を設けていない、または足りないと考えられる場合は管理組合へ要望を上げ、改善を図るように働きかけすることが必要となります。(可能な限り、日時を含め具体的な実情を伝える。また、管理組合の役員や管理業者の管理人の方々へ、騒音が発生している場に立ち会ってもらう。)
 管理組合もしくは管理委託業者へ問題提起しても改善が図れない場合は、専門家(マンション管理士、1級建築士)への相談・サポートを依頼することも有効です。


Q17.マンションの供用部分「ルーフバルコニー」等に不具合(瑕疵)がある場合?

A.マンションの「ルーフバルコニー」は、区分所有者(戸別のオーナー等)が専用使用権を有する共用部分です。そのルーフバルコニーの金属製手摺りがぐら付く、一部緩みがある等、通常備えるべき品質・性能を欠いている場合は、瑕疵(かし)と捉えて、販売業者や施工者に『瑕疵担保責任』が発生します。(平成25年3月東京地裁判決で瑕疵担保責任を認定)。
 この判決要旨にて、共用部分である「ルーフバルコニー」も建物の戸別所有者が専用使用権を有することから、マンション売買時の目的物に含まれると判断し、その部分に瑕疵(不具合含む)がある場合は販売業者等が瑕疵担保責任を負うと結論されました。尚、専用使用権を有しない共用部分や箇所にも瑕疵担保責任が認定されています。(平成20年3月東京地裁判決)
 施行者や販売業者は、マンションの共用部分にも責任を認識して、状況把握に留意しなければならないとの参考例となっています。

 「瑕疵担保責任」は、その目的物(ルーフバルコニー等)に善意無過失で瑕疵があると知った日から、1年間以内に損害賠償請求等の担保責任を問うことを明確に告げることが必要になります。目的物の引き渡し後、10年間以内に問わなければ時効によって請求権は消滅します。

注記@:建物等の土地工作物は原則として引き渡しから5年間であるが、新築住宅(新築マンション)は、構造耐力上の主要な部分(基礎・土台・床・屋根・柱・壁等)、雨水の侵入を防止する部分(屋根・外壁・雨水排水管等)の瑕疵責任期間は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」=(「品確法」と呼ぶ )により、売買・請け負いともに引き渡しから10年間と強化されています。損害賠償や契約解除に加え、瑕疵修補義務も販売業者にあります。

注記A:「品確法」が規定する新築住宅(マンション含む)とは、建設工事完了日から1年以内であり、まだ人の居住の用に供したことのない住宅を言います。
 平成21年10月より、「住宅瑕疵担保履行法」が施行され、宅建業者やデベロッパー(新築工事の請負人である建築業者)に住宅瑕疵を担保するため、供託金もしくは保険加入による資力確保が義務付けられています(資力確保の措置を講じない場合は、新築住宅の売買契約や請負契約を締結することができません)。
 「品確法」で瑕疵担保責任を強化しても、賠償を求めた際に宅建業者やデベロッパー(新築工事の請負人である建築業者)に資力がなく履行できない状態を防止する規制となります。

注記B:契約解除に関しては、建物、土地の工作物については解除できません。しかしながら、裁判所の判断は、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があり、建て替えざる得ない場合は、建て替え相当額の損害賠償を請負人が負うことがある」と認めています。(平成14年9月東京地裁判決)

注記C:中古住宅の瑕疵については、「売主(前所有者)及び不動産仲介業者が、瑕疵につながる可能性のある不具合の存否を目視等で確認し、不具合が認められた場合は、その内容と事実を買主に開示し、説明する信義則上の義務を負っている」との要旨となり、瑕疵の補修費用と売買契約不履行の遅延損害金への賠償が相当と判決されています。(平成25年3月東京地裁判決)
 尚、この判決で不動産仲介業者は売主を介して説明する責務があり、説明義務違反があると認定しています。


このページの先頭へ

『マンションの耐震対策について』Q&A

Q18.マンションの耐震基準並びに診断・検査・改修工事は?

A.分譲マンションが普及し約40年が経過して、マンションストックは約505万戸を超えました。この間、各地で数次に渡り大規模な地震が発生してマンションも甚大な被害となっています。
 マンション固有の被災状況には防災や復旧についても独自の取組みがあります。とりわけ顕著な地震は平成7年1月発生した「阪神淡路大震災」や平成23年3月の「東日本大震災」で、改めてマンションの安全性と耐震性が重要であるとの認識となりました。「東日本大震災」では、津波が広範囲で発生し多くの被災と首都圏の一部では液状化現象が発生し、マンションの敷地が沈下する事象も発生しました。
 現行の耐震基準(新耐震基準)は、昭和56年6月から適用されており「震度6から7程度まで人命に危害を及ばすような倒壊等の被害を生じないことを目標」としています。
 この耐震性に関する法令は、過去の震災を教訓として数回見直しされていることから、建設時に現行の耐震基準を満たしていない場合もあります。
 耐震性は「人命保護」の観点から検討されることが求められますので、コンクリート躯体・建材・設備等の劣化で建設当時に有していた性能より低下していると想定される能力を診断する行為が「耐震診断」です。
 マンション管理組合に「耐震対策委員会」を設置した場合等、メンバーに外部者としてマンション管理士を加えることで、各都道府県にある建築士会や管理業者等の連携を図りつつ、問題の解決に取組むことをお薦めします。
 耐震診断の基本的な流れは、現地調査から概況を把握しつつ修繕等の履歴内容・設計図、構造の耐震性評価から補強案並びに概算工事費等の検討と行われます。
〔耐震診断が必要なマンション〕
  1.建築確認日が、昭和56年5月31日以前(旧耐震基準)
  2.1階が柱のみで支持(ピロティ形式の建物)
  3.耐力壁が少ないまたは偏っている
  4.その他(地震時の経験の不安解消など)
 分譲マンションは区分所有建物であり、地震等で被害を受けた場合、区分所有者全員で構成する「管理組合」で意見がまとまらなければ対応できない状態となります。平常時より災害に見舞われた時の管理組合の役割は大きくなります。こうした時の対応について、管理組合・管理業者もしくは、専門家(マンション管理士等)との協力体制と役割分担を決めておくことが望まれます。


このページの先頭へ

『マンション震災対処・防災について』Q&A

Q19.マンションの防災の備えや取組みの方法は?

A.震災対策を時系列でみた場合、「事前の備え」、「発生後の対応」、「被災マンションの円滑な復興」に取組みを分けて考えることが必要になります。「発生後の対応」は、発生直後と発生から3日目ぐらいまで(外部の支援がない期間)と、それ以後(外部の支援が始まる)で対策を取ります。先の東日本大震災の経験を踏まえ、7日間は自力で生活可能な備えが最低限必要と考えられています。

*公益財団法人 マンション管理センター 「マンション震災対策チェックリスト」から編集抜粋

 震災対応を含め、災害時の対応方法として、@公的な備えと対応(公助)、A地域での備えと助け合い(共助)、B自分自身で備え、自力で身体を守る(自助)があります 先の東日本大震災では、共助と自助の重要性が再認識されました。共助には、自主防災組織、自治会、町内会での助け合い、民間組織(企業や団体など)での自主的な助け合いもあります
 マンションは、共同生活との意識が必要なことから共助の枠組みと言えます。マンション内の共助の担い手は、管理組合や委託を受けた管理会社、自主的に区分所有者間で設けた防災組織となります。自主的に設けた防災組織は、現実に震災が発生した場合は、自ら共助の担い手であり同時に被災者であることから対処に厳しい局面もあると想定することが重要となります。
 常日頃から『互助』の必要性と対策方法を管理組合と居住者間(賃借人を含め)でコンセンサスを図り、定期的に震災対応の確認を進めることが震災時の影響を軽減させるポイントとなります。


このページの先頭へ

『マンション管理組合の法人化』Q&A

Q20.マンションの管理組合を「法人化」するとは?

A.管理組合を管理組合法人(法人設立登記)にすることが認められています。
 管理組合法人は、法律上の人格権を持ち、権利義務の帰属主体として、区分所有者と組合との法律関係がより一層明確になります。
 不動産を法人格を持たない管理組合が取得した場合は、代表者個人名義でしか登記ができません。このような場合、法人格を持った管理組合は法人名義で登記ができます。また、管理組合法人となることで、団体としても取引の円滑化と明確性が図られるメリットがあります。
 デメリットとしては、登記手続への対応です。代表者等の登記事項に変更があるごとに「変更登記」が必要となります。
 また、法人ですので、財産目録や組合員名簿の作成(居住者の変更には最新の内容への訂正が必要)が義務付けられており、事務への手間と経費が若干増すこともあります。
 管理組合法人の設立は、区分所有法で、集会で区分所有者総数及び議決権総数の各4分の3以上の多数による決議(特別多数決議)で、法人となる旨、その名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局において設立の登記をすることで、管理組合法人となります。
 最近は、マンションの管理組合を法人化することが多々あります。法人化は、メリット・デメリットをしっかりと組合内で考慮して進めることが大変重要です。


Q21.マンションの管理組合「法人化」で規約変更(改定)必要か?

A.一般社団法人では、法人設立に当たり基本的事項を定めた定款の作成が義務付けられています。
 管理組合法人では、定款に相当する法人管理規約の作成は、法人設立の要件ではありません。
 すでに存在している団体に法人格を付与するものであること、管理組合法人の業務の範囲、組織、管理、運営等について、その基本的な事項は区分所有法に定められていて、管理組合法人となるために特に規約で定めることはありません。
 管理規約をすでに定めている管理組合は、法人設立で、「管理組合法人」と名称を改めます。また、管理者に関する規定が区分所有法により、適用されなくなりますので、実務面や運用面を考えると法人規約に見直すことが有用です。
 管理規約を法人規約に改める場合は、規約の変更と解されています。
 登記実務で、「規約の定めに基づく理事の互選によって、管理組合法人を代表すべき理事を定めた場合は、互選に関する規約を証する書面及び理事の互選を証する書面を添付しなければならない」とされていますので、管理組合法人化には法人管理規約を定めることが無難です。


Q22.マンションの管理組合法人の規約作成に関する留意点は?

A.管理組合法人となる場合、管理規約を多少改める箇所が出てきます。以下、改める箇所を説明します。
  1.名称
 管理組合法人は、その名称中に「管理組合法人」という文字を用いなければなりません(区分所有法48条)。
 例えば、「○○マンション管理組合法人」 
  2.事務所
 管理組合法人は、事務所を定めなければなりません。事務所の登記は、その所在地番(住居表示地区では住居表示番号)まで記載が必要で、事務所の所在地は登記表示に合わせます(区分所有法47条)。 
  3.理事と監事
 管理組合法人では、理事と監事を必ず置かなければなりません(区分所有法49条〜50条)。
 理事が法人代表機関かつ業務執行機関として、対外的に管理組合法人を代表し、対内的には事務を執行しますので、「管理者」を置く必要はありません。既存の管理規約での管理者に関する規定は削除することになります。
 また、理事が数名あるときは、各自が管理組合法人を代表するとされていますが、規約もしくは集会決議で代表理事を定めたり、数名の理事が共同して代表すること、規約の定めにて理事の互選で法人代表を定めることができます(区分所有法49条)。尚、代表権を有する理事は登記事項となりますが、監事は登記の必要はありません。
  4.監事の業務
 管理組合法人では、監事は監査機関として法人の財産状況及び理事の業務執行の状況を監査するほか、管理組合法人と理事との利益が相反する事項が持ち上がった場合には、その件につき、管理組合法人を代表することになります。
  5.その他
 管理組合法人は、保険金額や共用部分の損害賠償金・不法行為への妨害請求等、組合員の為に原告・被告となること、管理組合法人の解散・解散時の残余財産の帰属、財産目録・組合員名簿作成等、これらの事項も確認的に規約に規定することが、管理組合法人の維持・運営に必要となります。


このページの先頭へ

『マンションの長期修繕計画と見直し』Q&A

Q23.マンションの中期・長期の修繕計画から見直しへの進め方は?

A.マンションは堅固に見える鉄筋コンクリート造ですが、年月の経過で、外壁へのひび割れ、炭酸ガスや雨水、降雪等で浸水し、コンクリート剥落や鉄筋が腐食したり、建具・アルミ製品が劣化するなど老朽化現象が現れてきます。この進行状況は、立地環境や新築時の施工により千差万別です。破損や故障の都度に修繕する対処とは、中期・長期修繕計画は別個に計画することが必要です。
 一般的に、5年〜10年先を視野に入れた計画が中期修繕計画。20年〜30年先まで視野に入れた計画が長期修繕計画と言います。

《主な修繕工事箇所:修繕工事は、住宅金融支援機構のリフォーム融資制度の対象となっています》



 《長期修繕計画の基本的な目的》 

@いつどのような工事を行うか? 
A工事費用をどの位、計画し、必要とするか?
B長期修繕計画の「修繕積立金」をいくらで設定するか?

 区分所有者で組織される管理組合が、その自身のマンションをどうしていきたいか?30年持つマンションと考えるのか、50年や100年を目標に維持管理を考えるか、各自の意識が計画を設定する上で重要となります。
 計画の設定や見直しの実施に向け、注意が必要なことは、破損や故障の都度に修繕した「工事内訳書」(供用部分・専有部分を分けた)を管理組合でしっかりと保管し、中長期修繕計画に反映させることです。過去の修繕(大小に係わらず)履歴が不明の場合、修繕箇所が重複したり、修繕の実態を正確に認識できず、過大な費用負担になり非効率となります。(個々の専有部分の修繕・微改修の把握も大切)

 建物・設備の劣化は、仕上げや施工方法、立地条件、環境(台風や地震など)により、当初計画と違ってきます。そこで、概ね5年間隔で、中長期修繕計画を見直すことが肝要となります。

 中長期修繕計画のサイクルと見直し 
@ 5年〜15年 主に物理的劣化が多い個所の計画立案:部材の耐用年数を考慮
A
20年〜30年  主に機能的劣化・社会的劣化への改修を含めた計画立案
B30年以降  主に「建替え」・「再生」を視野に入れた計画


Q24.マンションの「外壁」の状態から推測される修繕時期とは?

A.マンションは、ほぼ全ての棟がコンクリート躯体で建築されていますので、修繕時期を探る方法として外壁の状態を確認(注視等)することがあります。マンションを維持・長持ちさせるには、「躯体」を中心として管理していきますが、劣化や不具合が現れる外壁を目視することで修繕時期の目途を立てます。 外壁に、ひび割れ・欠け・タイルの浮き・エフロレッセンス(コンクリート石灰成分が溶け、外壁に白い汚れが現れる)・シーリング防水材の亀裂(コンクリート打継目地やアルミサッシ取り合い部分のシリコン材)など、異常を確認した場合は計画している修繕時期に間違いがないかを再検討することも大切です。
 外壁の異常や不具合を長い期間そのままとしたり、計画した修繕時期にあまりにも拘り、放置期間が長かったために修繕箇所が増え、出費がかさむこともあります。適度な修繕タイミングを心掛けることで、余計な出費を抑えます。
 修繕時期を探る観点として、外壁の汚れ・見苦しい部分にあまり比重をかけずに、外壁自体の異常や亀裂・ひび割れ・欠け等の破損状態に比重を置きます。この観点は、外壁だけではなく、屋上・屋根・階段・バルコニー・各箇所の金物類・設備・建具など、さまざまな維持管理にも当てはまります。

 修繕の方法、タイミング等は、使用されている素材の性能性質・異常や不具合状態・劣化等、専門家の協力・助言を受けつつ、一緒に進めていくことをお勧めします。


このページの先頭へ

『マンションの建替えと再生方法』Q&A

Q25.マンションに「長く住む工夫」、「建替え」が必要なケースとは?

A.マンションに出来る限り「長く住み続ける」こと。この意識の持続と行動が『マンションの長寿命化』の実現に繋がります。簡潔には、長期修繕計画の作成・実施・部分的見直しを行う。言うのは簡単ですが、実行するには適切な額の修繕積立金がしっかりと確保され、適切な時期での修繕工事(大規模含む)が実施されることが不可欠となります。
 この修繕工事では、設備・機能面において陳腐化して生活上、使いづらい、衛生上不適、利用効率(省エネなど)の面への改善等も、現状の生活様式に応じて性能を向上させることを行います。区分所有者の高齢化への配慮としてバリアフリー対応(手摺り・スロープなど)、耐震補強(新耐震基準を踏まえた)、アスベスト対策、場合によっては専有部分の増改築も考えることでマンションの維持と資産向上に繋がります。

 建替えは、マンションの立地や土地に対する容積率、区分所有者の大きな費用負担となるため、簡単にはいきません。それでも、躯体の問題や劣化、地震・災害等で建替えが問題となる場合があります。建替えは区分所有者の5分の4以上の多数で建替え決議を行う「特殊決議」によって実施することと定められています。(区分所有法62条) また、建替えには多額の費用が掛かることから、一つの事業として区分所有者が主体となって円滑に進められるように、「マンション建替え円滑化法」(平成14年12月施行)制定されています。建替えには、建替組合の設立や区分所有権の権利変換手続きなど、権利関係の正確かつ円滑な移行が必要です。建替えの実施段階についての法制度となります。
 再生や建替えの最大の課題は、合意形成の困難さです。区分所有者の中に、建替えを希望する人と希望しない人、費用負担が無理な人、その他の事情(権利を売って、引っ越し等を計画しているなど)がある人等、この中で、決議を行い、実施する難しさがあります。マンションの専門家として、マンション管理士が関わり、再生・建替えへのニーズをしっかりと把握してプランを提案し、実現に繋げることが、この課題解決の近道となります。


このページの先頭へ

『マンションの管理会計について』Q&A

Q26.マンションの「管理組合会計」とは?

A.区分所有法43条:管理者は、集会において、毎年1回1定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
 管理者は、マンションの管理人(管理員・フロントマン)や管理会社ではなく、管理組合の理事長もしくは会計担当の理事になります。その事務とは、管理費や修繕積立金等の収支管理の状態を明らかにする事務も含まれます。

 マンション管理組合マンションの管理組合会計の目的は、すべての組合員(区分所有者)の大切な共有財産であるマンションの管理組合収支を明確にして、間違いのない収支状態を維持管理していくことです。企業や事業者と違い、営利上の収支を明確にする視点よりも、毎月の「維持管理費」「修繕積立金」「駐車場使用料」等のマンションの暮らしに不可欠な収支をしっかりと維持管理していくことに力点があります。

 維持管理の具体的な力点は、毎月の組合員から振り込まれたお金が、管理組合の総会決議等で決められた用途に適正に使われ、残金がいくらあり、今後の計画出金の事情に不具合が生じないかなど、これらのことを管理組合の組合員(区分所有者)に定期的に報告し、明確な収入・支出(管理費や修繕積立金を区分経理して、目的別に管理する)を行っていきます。
 収入・支出の管理で重要な部分は、会計書面での数値と金融機関の出入金記録がしっかりと整合性があることです。当たり前と思われることですが、管理費口座や修繕積立金口座から、数件の目的を合算して口座からお金を引き出すことがあると思いますが、この際の記録(手書きでも可)を正確に時系列で行っていくことが必要です。ここでの記録間違いや認識のずれが、年間収支を纏める際に数値が合わない原因となります。尚、口座通帳と引き出し目的を常に合わせることで、通帳を見ただけで会計状況の把握ができる利点があります。


Q27.マンションの「管理組合会計」の特性と留意する点は?

A.組合員(区分所有者)から振り込まれた管理費や修繕積立金は、組合員の大変貴重な財産です。貴重な財産を正確に必要な使途に割り振り、適正な収支を継続するために、予算としての特性を認識することが大切です。
 特性として正確な収入・支出を念頭に、どのくらいで「やりくり」をするかを予想して管理していくことを予算:予算準拠主義といいます。毎年の会計期間(通常は1年間)での運営計画(管理組合:総会にて承認された収支予算計画など)に基づいて見積もったものです。
 予算に見積もられた通りの収支となっているか、修繕等で費用の超過している案件はあるか、年度の中途での精査時に非効率な部分はないか、予算外の収支で収支差額(黒字もしくは赤字)が発生していないか など、管理組合会計には予算計画達成に向けた留意点が結構あります。

 年間予算計画の最終として「会計収支予算案、収支決算案報告書」を作り、総会において毎年1回1定の時期に報告することになります。この会計事務(総会報告資料を含め)を管理会社が受託係わっている場合でも、定期的な精査についての監事監査と総会報告・承認は「管理組合が主体」となって行うことが必要です。
 「マンション標準管理規約」58条第1項、59条で、管理組合 理事長は、通常総会において新会計年度の「収支予算案」を提出するとともに「収支決算案」を監事の会計監査を経て報告し、総会の承認を得なければならない。と法定されています。
尚、マンション管理組合が法人格を取得している場合は、「マンション標準管理規約」48条の2で、財産目録を作成することが義務として法定されています。

 マンション管理組合 理事会においては、毎月の収支を確認し、未収金等を管理(未払いの組合員:区分所有者を把握)して、「未収金明細書」及び「月次収支計算書」を整備する必要もあります。これらの整備は大変煩雑のため、公平中立を旨とするマンション管理士を活用して、月次の会計を適正に保つことをお勧めします。

注記@:「未収金明細書」は、マンション管理組合にとって重要な管理資料です。総会等で組合員(区分所有者)へ報告する際には、未払い者のプライバシーを侵害しないように配慮する必要があります。(未収金の項目と金額を開示して、未払い者名を匿名とするなど)

注記A:「財産目録」は、マンション管理組合の資産及び負債を科目別に表したもので、前年度対比が可能である金額を表記したものです。

注記B:平成22年5月1日以降の締結分から、管理委託契約にて「会計事務」を受託している管理会社に以下の点が改正義務化されています。「マンション管理適正化法規則」第87条2項

T)修繕積立金と管理費等を徴収後1か月以内に収納口座から保管口座へ移し換える。
U)管理組合名義の保管口座については、管理会社による印鑑、キャッシュ・カードの保管管理を禁止
V)管理会社に翌月末日までの月次報告(会計区分別の収支報告と収納状況報告)を義務付け
W)管理会社に、管理費等の保証額を修繕積立金等の金銭の1カ月分相当額以上の保証金とすることを義務付け

 改正前は、管理会社の会計事務を3つに規定(原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式)していたが、実際にはそれらの方式を規制内にて微妙に変え、異なる取り扱いが散見され金銭トラブルが増加したことから改正されました。


Q28.マンションの「管理組合会計」:月次別の整理と適正への取組みは?

A.組合員(区分所有者)が管理組合の理事になると年間予算計画に則り、収支を継続する作業が必要となります。(輪番制で理事を決めているマンションでは、区分所有者である限り必ず回ってくる役割と義務、責任です)
 会計での責任とは、不足した管理費等を自前で負担しなければならないなどではなく、役割を著しく怠った場合や年間予算計画を執行していく権限が付与されていることの責任です。
 この責任を果たすことへの積み重ねが、月次の詳細な整理とチェックになります。お金に関する整理とチェックは、預金口座(管理費口座・修繕積立金口座・駐車場等の使用料口座など)の入出金がもれなく正しく計上されているか、ここを押さえることで年間予算・決算、その他の科目も比較的容易に維持管理していくことができます。

 手元に小口現金(事務備品・消耗品等の諸経費に使う小額の予算化された額)を置いている場合は、月末の現金残高を数えて帳簿と一致することを確認する。預金残高の整合性は前月末の帳簿記載と一致するかを確認する。現金と預金が一致確認後、予算計画額と収入・支出が計画通り進んでいるかをチェックします。(会計年度の始期から、その確認した月までの月数/12を乗じた金額と乖離がないかを大まかでいいのでチェックします。
 証憑(しょうひょう)書類となる予算計画や小口現金で支払った請求書や領収書を勘定科目別に時系列(発生日順)に整理します。支払いのつど、ファイルリングすることが望ましいですが、整理日時を決めてある程度纏めて行っていくことが、無理のない方法です。整理日時を決めて行うことで、他の理事の協力や双方のチェックができるメリットもあります。尚、細かいことですが台紙に貼付してファイルすることは極力避けた方が無難です。台紙に貼付すると業者への確認・訂正や管理会社、組合員間の仕訳が必要となった場合に不便となります。


Q29.マンションの「管理組合会計」:会計帳簿作成に関する重要事項は?

A.管理組合は、組合員への報告及び承認に向けて会計処理に必要な書類を整備する必要があります。(前述した会計事務を管理会社に委託している場合でも、書類チェックや適正化への取組みには主体となって進めることが不可欠です)
 会計帳簿は、収支状況と財務状況を正確に反映した書類をいいます。この会計の作成方法には、現金主義と発生主義の2通りがあります。現金主義とは、実際に入金のあった収入と過去年度の未収金額を計上して帳簿を作成していくことです。発生主義とは、滞納などの未収の有無に関わらず、その期に入るべき収入金額のみを計上して作成することです。
 マンション管理組合会計では、予算(年次)と会計期間の収入支出を比較しつつ、整合性を図る必要性から、発生主義での帳簿作成・実施が望ましいとされています。

 会計帳簿作成・実施で未収金への対処があります。未収金は、「未収金明細書」として会計書類に付属するように位置付けられています。未収金明細書には、該当期間の末日に納付(管理費・修繕積立金・駐車場の専用使用料等、区分所有者に支払い義務のある費用)がない金額を項目別に計上します。この明細書を基に、管理組合の理事会にて滞納者への対応を行います。(区分所有者のプライバシーに配慮しつつ、滞納者へ未納通知と支払い履行時期の確認、滞納が数か月になる場合は滞納事由と解決の検討・収受への行動手続など)

 マンション管理組合会計での一般的な処理と、作成が必要となる書類関係を発生順に図に表すと、以下のフローとなります。

 
*公益財団法人 マンション管理センター 「マンション管理組合 会計・税務・保険」編から編集


Q30.マンション管理会社を変更した場合の会計管理・処理方法は?

A.マンション管理組合が会計業務を委託している管理会社を変更した際は、会計処理の一般原則である「継続性の原則」に準拠しているかの確認が不可欠となります。
 前管理会社の会計処理方法が変更した管理会社でも問題なく継続できるか、継続できない場合は、会計法令に定まった正当な理由での変更に該当する事由が必要となります。

注記:「継続性の原則」とは、会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりに変更してはならないことを要請するものです。マンション管理組合が一度選択した会計処理方法は、正当な理由がない限り変更することはできません。
 [正当な理由と認められる事例]
 @.管理組合の事業内容や内外の事業環境の変化に対応する必要があること。
 A.会計処理方法の変更を財務諸表に適切に反映されるために必要があること。
 B.変更後の会計処理方法が一般に適正妥当と認められる必要があること。

 
 @〜B等の要件をみたす正当事由が必要で、管理会社を変更した場合でも当然として変更後の管理会社の処理が適正となるものではなく、会計処理方法への継続性の精査、または適正移行手続が必要となります。


Q31.マンション管理会計での「監事」の役割と業務は?

A.マンション管理組合の「監事」に就任された場合は監査機関としての役割と業務が課されることとなります。(輪番制の就任でも責任が伴います)
 その役割と業務の中で、特に重要な部分を占めるのが会計処理への監査並びに精査となります。「マンション標準管理規約」41条に、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。となっています。
 監事の役割と業務を勘案して、管理組合の理事長や各理事職を兼務することは禁止されています。(理事として自身の行ったことを自身が監査することとなり、公平性が担保されないため認められていません)。管理組合が法人格を取得しても同様に禁止されています(マンション標準管理規約50条2項)。 
 管理組合は、適正でかつ正確な会計書類に基づいて、区分所有者へ財務状況を説明する必要があり、その説明前に「監事」が財務諸表を監査・精査して間違いのないことを確認します(記名、押印等で監事監査を経たことを明示します)。

 数年前、新築のマンション(32戸)にて管理会社(新築施工販売ディベロッパーの子会社)の全部委託方式にて、管理をはじめ会計処理も任せていたケースで、管理費口座・修繕積立口座の預貯金がその管理会社に使い込まれていたことから事件(損害賠償裁判と窃盗詐欺罪への告訴)へと発展した事案がありました。新築マンションとの安心感から管理組合の機能が停滞している最中に起こった事件です。
 この事件で当事者会社である管理会社と親会社であるディベロッパーが倒産して、損害としての賠償金を約半分回収できただけでした。(訴訟経費等を含めて、約6割の預貯金が失われました)
 このような事件等から、最近のマンションの管理組合では、管理費および修繕積立金・駐車場等の使用料等の収入、管理費(管理会社への支払い分含め)・修繕費等の支出への財務会計処理について、区分所有者からの積極的な関与・関心が以前にも増して高まっています。
 管理会計になじみの少ないマンション管理組合、万が一のことがないようにと財務情報の会計管理を見直したいマンション等、管理組合の理事職の方から、直接、マンション管理士へご依頼されるケースも増加しています。


このページの先頭へ


『マンションの駐車場管理・運営について』Q&A

Q32.マンションの「屋内駐車場」「屋外」の種類・維持・管理とは?

A.マンションの屋内、屋外駐車場を法令(区分所有法第4条等)で整理すると、屋外駐車場に関しては区分所有建物の建物部分ではありませんので、法令上、当然には共有部分とはならず、「建物の敷地部分」となります。屋内駐車場(地下あるいは建物内側面に設置されている駐車場など)に関しては、「構造上の独立性」及び「利用上の独立性」が認められる場合には、個々の区分所有者の専有部分と判断されることもありますが、それ以外の場合は「全体の共用部分」となります。(最高裁判例有)
 多くの場合、駐車場に「専用使用権」を設定して、特定の区分所有者等が専用使用するのが一般的です。(バルコニーや専用庭などと同様)

 専用使用権とは:
 建物の共有部分及び敷地を「特定の区分所有者等が排他的に使用できる権利」(法令:標準管理規約第8条)をいいます。この権利に関する運用方法(管理維持、使用料の増額など)は、法令の定める手続要件に従い、管理規約(使用細則含む)又は総会決議をもって、専用使用権者の承諾を得ることなく、変更・修正が可能とされています。
 

 駐車場の種類:
  1 平面自方式(通常の敷地内にある平置き駐車場)
    *車1台当たり2.3m×5.0m、車椅子利用は3.5m×5.0m
  2 立体駐車場(プレハブ式もしくはRC構造の駐車場)
    *屋内に設けるピロティ形式、あるいは別棟屋内建物方式
  3 二段・多段式(地上昇降、地下ピット、昇降横行式)
    *操作盤によるモーター作動で上下する方式
  4 タワー式(垂直循環式、エレベーターかご式)
*商業地域等では狭い土地をタワー状の構築物として、建築し駐車場とする方式。動作方法は、吊り上げ式やゴンドラ式があります。設置費用やメンテナンス費用が多額になる方式のため、各地のマンションで大きな課題となっています。

 
 屋内・屋外駐車場は、「マンション標準管理規約」第15条、同第17条、同第21条2に則り、マンション管理組合の管理下で建物管理、維持、保全されることが適正な管理方法となります。また、同第20条にて、区分所有する組合員は、対象物件について、その価値及び機能の維持増進を図るため、常に適正な管理を行うように努めなければならないと規定されています。これには区分所有者等(賃借人等の居住者も含む)が自ら、法令や規約等を遵守して、利用方法を含めて協力する義務があるとの意味があります。
 また、管理費等(修繕積立金や駐車場使用料など)は、各区分所有者の『持分割合』で算出しますので、各区分所有者間で公正・公平に、管理を含めた利用方法等を取り決めます。「駐車場利用細則」等のルールを定めることが一般的です。
マンション管理士は「マンション管理適正化法」で法定された専門家ですから、当事務所では、これらのルール作りから関与しています。

 管理費等(修繕積立金や駐車場使用料など)の負担割合は、原則として共用部分の持分割合に従いますが、規約によって、それとは異なる内容の負担割合を定めることが可能です。但し、その場合にも個別具体的にみて、区分所有者間の利害の衡平(区分所有法30条3項)が図られるように定めなければならず、その利害の衡平を著しく害する内容の規約が定められた場合には、同項に基づいて当該規約が無効と判断されるおそれがあります。なお、「標準管理規約25条」によれば、管理費等は、共有持分に応じて算出することになっています。

 区分所有法では、区分所有者相互間の基本的な権利義務として、各区分所有者に対し、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止するとともに、その専有部分又は共用部分の保存又は改良のために必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分等の一時使用を認めています。(区分所有法第6条) 
この法定事項の解釈は、駐車場設備が屋内に設けられいる場合でも、区分所有者が所有する専有部分の一部に駐車場の使用や保存・改良で必要な場合は、使用が認められるということを意味します。
(屋内駐車場のマンションは、建物の側面を「ピロティ建築方式」で設けていることから、壁面・躯体等を専有部分(店舗等)と共有している)

平成21年8月に東京高等裁判所で、駐車場等の維持・管理を考える上で参考となる裁判がありましたので、以下、ご参照下さい。

 マンション分譲会社が分譲に際して、自己名義であった洗濯室・倉庫等を規約共用部分として分譲したが、共用部分の登記をしていなかった。その後、同洗濯室等が競売され、その競落人は、共用部分としての登記がなされていなかったので、それらに居宅事務所、事務所への変更登記を済ませて、管理組合に対して改修工事を求めたところ、管理組合はそれを認めなかった。
そのため、競落人は同区分所有権を事情を知る者(悪意の第三者)へ譲渡し、譲受人から管理者に対して同部分の専用使用権の確認等の請求を求めたところ、「競落人及び承継人は背信的悪意者及びその承継人に該当するので、同部分は登記がなくても規約共用部分として対抗できる」と判示されました。


Q33.マンションの屋外にある機械式「立体駐車場」の安全対策・留意事項は?

A.最近のマンションは、限られた立地環境を有効に活用することから、機械式の「立体駐車場」が多く設置されています。『車・社会』を考慮する上での駐車場需給として機械式「立体駐車場」が普及していますが、事故件数も比例して増加傾向にあります。
 平成19年度以降、25年度までの事故件数は、少なくとも26件発生し、その内、死亡事故は10件に上っています。(子供が亡くなる痛ましい事故も3件、発生しています。)
 事故の発生状況としては、「立体駐車場内に人がいる状態での機械作動」が約4割を占め、その他は、「人の乗降・歩行時の転倒や落下」「作動中の装置に侵入・接触」「車両の入出庫時の衝突」等となっています。事故発生場所としては、マンションの立体駐車場での事故が半数を占め、駐車装置を操作する場面で多くの事故が発生しています。
 機械式立体駐車場で自動車を入出庫する際は、運転者以外は駐車場の外で乗降することが原則ですので、十二分な安全認識が必要です。(装置内の機械は、車を載せて動かすことから非常に大きな動力が働きます。この認識を常に持ちつつ、安全確保を取ることが不可欠です。)

 管理者や利用者において特に留意する事項
@「国土交通省及び消費者庁」の『機械式立体駐車場ガイドライン』を活用して、安全対策としての居住者への周知徹底を図る。
安全対策を講じる上での「ガイドライン」ですから、機械式駐車装置の危険性や安全な利用方法について、利用者を含めた関係主体間で情報を共有し、相互の意思疎通を図ること。管理組合が、管理会社やメンテナンス業者と一緒になって、安全確保と適正利用に努めることで事故防止が継続され、暮らしの安心・安全に繋がります。

A機械式駐車場内の照明器具が1個でも切れて点灯しない場合は、即、管理組合や管理会社へ伝え、対処する。視認性の減少を軽く見ないで、即、対処することが事故防止上、必要です。

B機械式駐車場内の「非常ボタン」「非常用脱出口」「避難口」が視認しやすく、正常に作動することを定期的に点検すること。メンテナンス業者や管理会社任せにしないことが肝要となります。(機種や使用頻度等に応じて、1〜3ヶ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を実施する。この際、マンション管理士の立合いで、必要な動作を確認することも有効です。)

C操作する上では、機械式駐車装置のセンサー等の設備を過度に委ねることをせず、装置内に人や障害物がないことを、自ら確認すること。センサーの誤作動や作動が無く、事故が発生した事例も報告されています。自ら確認する「習慣付け」が事故を防ぎます。

D「操作キー」を他人に『預けたり、預かったり』は、事故誘発となります。
他人の鍵等で操作を行わないこと。「ちょっとのことだから貸して」は、大変危険と認識することが重要です。その場に居合わせたために、他の居住者から「貸して」と言われても、ここはしっかりとお断りすることが、その居住者のためにも大切です。

E上記の事項は、確実に実施する必要最小限の事柄ですから、実施するために、機械式立体駐車場の「管理責任者」を管理組合が主体となって選定することが不可欠となります。選定した管理責任者名を装置の視認しやすい場所に明示します。管理責任者の具体的な役割・実施方法を文書に箇条書きで定め、居住者等の機械式立体駐車場の利用者に閲覧可能にするなど知らしめます。事故予防と防止を徹底するために、利用者を含め、関わりのある全員が、決められた事柄が継続して実行されているかをチェック・共有し、意思疎通を図ることが、重大事故を防止・回避・起こさない行動となります。


「機械式立体駐車場」は、設計・製造・設置・保守管理等の各段階において、様々な主体が関与しています。その主体が適正な方法や費用、頻度、気象条件、利用方法等を基本事項として定めていますが、マンションの区分所有者に対して、これらの事項が、必ずしも明確で分かりやすくなっているとは限りません。記述内容が細かく、分かり難いと言った取扱書や利用案内もあります。

「機械式立体駐車場」の維持・管理・保守・安全対策等を、管理会社やメンテナンス業者に委託する場合は、不明確な部分をそのままとせず、具体的な維持・管理・保守・安全対策とメンテナンス内容を、今後のリスクヘッジと合わせて協議して別途定め、契約上、書面に明確に記載することが必要となります。専門技術者との協議等には、管理組合側も頼りになるマンション管理士等を関わらせ、リスクコミュニケーションを図ることが、ひとり一人の安全・安心な暮らしの実現に繋がります。

Q34.マンションの屋内屋外にある「駐輪場」の管理・維持・防犯は?

A.「駐輪場」は、マンション管理を考える上で軽く見られる傾向がありますが、重要な設備であることに変わりはありません。使用台数が増加し、既存のスペースが足りなくなるなど、管理組合によっては頭痛の種となっています。首都圏以外の都市部(繁華街等)でも自転車の所有台数が増えていますので、マンションの居住者や利用者も同様です。

 自転車の駐車面積は1台当たり、0.7m×1.9m。
 自動二輪車(バイク)は1.0m×2.3m。

 敷地のスペース上、平置きで保管場所を増やすことができずに、立体駐輪方式にすることで、維持管理費(メンテナンス含む)が増加しているマンションも散見されます。管理組合は、費用対効果をしっかりと協議しつつ、専門家等を交え、費用の抑制を図ることが不可欠です。

また、防犯対策として、防犯カメラの設置や駐輪場出入口の施錠があります。古いマンションは特に被害を出さないためにも対策が必要です。駐輪場はマンションの敷地内に通じる場所に設置されていますので、不審者の侵入を予防する観点からも早急な対策が必要と思います。

【防犯に有効となる「アクセルコントロール」という対策】
 アクセルコントロールとは、犯罪企画者(不審者等)を接近させないための方策で、設備としては「障壁」「柵」などを施します。
例えば、高い塀、棚、門扉などの物理的障壁と歩行通路(アクセス面)の仕上げ材(歩行の際に音が鳴る部材等)、短い階段、死角のない通路の設計など。
 「監視性」の確保が不審者等を寄せ付けない対策として注目されています。「誰かに監視されている、もしくはデータとして影像記録されている」と分かれば、人は不審な行動はとらないものです。死角になりやすい共同空間(敷地内通路、廊下、外階段、屋外の敷地内歩道など)において、周囲の居住者もしくは防犯カメラで、監視の「目」を高める対策です。
マンション管理士等の専門家に一度、防犯診断を依頼するのも、今後への対策として有意義と思います。

 マンションを購入する際は、駐輪場がどのようなタイプか? 空き台数は、雨風や防犯対策として、駐輪場に屋根・柵などが設置されているか? など、しっかりと確認することが大切です。入居後、「どうなっているの」と文句を付けても、改善される保障はありません。ここは安易に考えないことが肝要です。*エレベーターを利用して、ご自分の戸の玄関先等に駐輪できるマンションもあります。


このページの先頭へ


『マンションの付属施設・設備関連』Q&A

Q35.マンションの「排水設備」「給水設備」の維持・管理とは?

A.マンション内での快適な生活を営むためには、給水・排水設備が支障なく機能することが大前提です。一旦、これらの設備にトラブルが発生すると通常の生活が不自由になるだけではなく、補修費用の発生や修繕まで使用が制限されるなど、居住者全員に影響が及びます。
 マンション管理組合は普段仕事を抱えている方々の集合体ですから、急な対応を求められても対処が困難な事案も多く、これらの対応を管理員を通じ、管理会社へ委ね善処してもらうこととなります。
 また、これらの給水・拝水設備のトラブルの多くは不具合発生前に、予兆が起こっていた事例が数多く報告されていることです。

 [拝水設備・排水管のトラブル発生前の予兆例]
 @.流し・浴室などで水の流れが以前より悪くなったり、ときどき詰まる。
 A.複数の各階で同時に水の流れが悪くなる。
 B.排水口から「ボコボコ」と変な音がする。
 C.排水口から悪臭がする。
 上記の現象が見られた場合は、排水管への内部清掃に足りない面があるか、管の内部に異物があり、流れを妨害している可能性があります。管理会社へ設備等の清掃を委託している場合は早急に清掃方法(頻度・直近の清掃日時・洗浄方法など)の確認を管理会社へ図ることをお勧めします。(管理委託契約に則って清掃が行われているかを確認する)
 管の洗浄方法には、高圧洗浄法・ワイヤー清掃法・圧縮空気洗浄法・薬品洗浄法があり、マンションの付属設備や給水・排水能力や管の状況に応じて使い分けます。
 
 最近増加している事例では、近年新築施工(4年以内位)されたマンションでは、より暮らしの快適性と環境に配慮するシステムとして、住戸内に「ディスポーザー」がキッチン等に付属して設置されているケースがあり、トラブルの一因となっていることがあります。
 *ディスポーザーとは、住戸内及びごみ置き場での生ごみ腐敗臭の抑制等のため、台所から出る生ごみを粉砕して台所排水とともに流すことができる「ディスポーザー排水システム」を言います。

 ディスポーザーが不具合問題の一因とされる事由とは、ディスポーザーから排水された付着物やディスポーザーの使用方法を間違えた居住者(マンションの住戸を区分所有者から賃貸している賃借人に報告事例が多い)によって、管の内部で付着物や異物が強固に固まり、通常の清掃方法では洗浄できない状態となるケースが増加していることです。
 この場合は、ディスポーザーの使用方法を今一度、マンション管理組合が中心となり、居住者(賃借人含め)説明することが必要となります。また、現状の清掃仕様(洗浄方法など)を点検し、場合よっては見直し等の対処を考えることも必要となります。
 
 大切な給水・排水設備の機能を健全に保つためには、定期清掃・定期点検(洗浄など)を中心とした適切な維持管理が不可欠となります。


Q36.「飲料水」に関して、におい・色・味に違和感がある場合は?

A.日常生活に不可欠なマンション内での各住戸への給水は、「受水槽」を通り「貯水槽」に貯えられ供給されています。(高置水槽方式、ポンプ直送方式は受水槽のみ設置型)
 近年では「直結給水方式」を採用し、「受水槽」「貯水槽」の設置が不要としたマンションも増えてきています。また、従来の高置水槽方式、ポンプ直送方式から大規模修繕工事にて、直結給水方式に変更するマンションもあります。
 直結給水方式は「受水槽」「貯水槽」が不要なことから、その分のメンテナンスがありません。しかしながら、貯水のストックがないことから、停電時や災害時には断水となります。高置水槽方式やポンプ直送方式は、停電時や災害時でもストック分の貯水を利用することができることから、復旧までの不便は軽減されます。
 
 高置水槽方式、ポンプ直送方式のマンションにて、飲料水や生活用水に問題を感じた場合は「受水槽」「貯水槽」に問題が発生している可能性があります。これらは、設備の中でも普段、目につかない場所に設置されていることから、何かと手薄にされる傾向があります。マンションの生活環境を維持するためにも、適切なメンテナンスが不可欠な設備です。管理会社の委託内容に含まれている場合は、飲料水や生活用水に、におい等、気になった段階で早急に確認することが必要です。また、管理員、管理会社の対応に不安がある場合は、第三者(マンション管理士・他の給排水設備会社等)に「受水槽・貯水槽の機能面や劣化症状の診断」を依頼するのも、適切な対処法として有効となります。


Q37.マンション内の昇降機設備「エレベーター」の維持・管理・保全は?

A.エレベーターは、2階以上の上階居住者に欠かせないマンション設備です。日々の暮らしの中で、「安全安心」に利用できることが当然と考えられている常設機械でもあります。エレベーターの設置率は約96%(H24年10月時点)、日本中のほぼ全マンションに設置されていると言っても過言ではありません。(1部の低層マンション:二階建て住宅タイプの長屋風マンションに設置されていない)
 「建築基準法」8条において、「建築物の所有者・管理者又は占有者は建築設備(昇降機)を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」と定められ、法の趣旨を具現化するように、(財)日本建築設備・昇降機センターが「安全維持」の指針を発行しています。当然として、マンション管理会社はこの指針を熟知しつつ、エレベーターの維持・運行管理をしなければなりません。エレベーターの維持・保全は基本的に以下の4項目に注力することが不可欠となります。

 [エレベーターの維持・保全で重要となる過程]
 @.運行管理への管理規程と遵守体制の必要な措置。
 A.定期整備・検査及び報告等で安全性を確保すること。
 B.メンテナンス計画・昇降機機能維持と適正な部品供給。
 C.昇降機の耐用年数のサイクルコストから昇降機更新(交換)の実現。

 
 上記@は、昇降機の運行使用を適切に行うことを管理規程等の使用細則に定めることで、区分所有者をはじめとした居住者に遵守するように促し、過度な使用や安全を軽視するような昇降をしない運行体制作りをすることです。
 機械としての昇降機は日々の使用方法によって、耐用年数が変わってきますので、使い方に留意することで維持保全になり、当然ながら、この留意し、大切に使用し昇降することで、人身への対策対処にも繋がり事故予防にも効果的です。運行体制作りには、運行管理者(責任者)と事故時の救急体制も含まれますので、日々の体制網作りが必要となります。

 上記Aは、定期的な昇降機の検査が確実に実施され、法定された検査項目が公的機関に報告されていることです。この検査は、国家資格である「昇降機検査資格者」により、日本工業規格(JIS法)に基づいて実施します。検査実施後、「定期検査成績書」を作成し、特定行政庁に報告され、問題がなければ、『昇降機等定期検査報告済証』が発行されます。エレベーター内の見やすい適切な位置に、この報告済証を掲示することとされています。居住者は、エレベーターに乗った際、報告済証を適時確認することで、マンション内の昇降機が適正を保っているかが分かります。(年1回以上の検査が義務)

 上記Bは、法定検査をクリアしつつ、安全安心・快適な状態を維持するための計画的なメンテナンスと、高度な専門技術者による継続的で質の高いメンテナンスの実施です。近年の建築施工マンションや最新機種の昇降機に更新交換した中古マンションでは、コンピューター制御による24時間365日の常時遠隔監視によるメンテナンスが増加傾向にあります。
 複雑な駆動・制御を行っているエレベーターは、数万点の部品によって昇降動作ができます。きめ細かな部品供給と迅速な措置がメンテナンスの要点となります。
 メンテナンスには、「フルメンテナンス契約」と消耗部品を中心に据えた「POG契約」の2つの方式があり、各マンションの事情によって、どちらかの方式を採用しています。比較的高額となるフルメンテナンス契約と部品取り換え・修理が別料金となり、多少なりとも価格を抑えたPOG契約。(どちらが良いとは一概に言えない、各マンションの管理組合が予算措置から採用方式を選んでいるのが実情)

 
 上記Cは、簡単に言うと、エレベーターの寿命に対して、どのような方策があるかの問題です。他のマンション建築設備と同様に適切な維持・管理・保全をしていてもエレベーターにも寿命があります。法的耐用年数は17年となっています。また、(社団)ロングライフビル推進協会は25年としています。
 昇降機の経年が進むことで部品の供給が難しくなり、メンテナンスにも時間を要し、その都度、利用使用を止めたり、何階まで等の制限を課して、利用者に不便をかけることとなります。
 大体、17年位から、エレベーターの信頼性・安全性・運転効率等の機能、性能面に不安やトラブルが見え始めます。これを解消するには、最新機種への「更新」(モダニゼーション)が必要となります。性能や快適性での改善だけではなく、エコ対策、新耐震基準や車イス等の福祉介護も加味した更新が計画の目標と考えることが肝要です。

 これらの計画指針や対策はマンションに入居した時点から、管理組合が中心となり、出来るだけ早めに合意形成し、作成行動することで、維持・保全ができます。管理会社に対しても、その積極的な姿勢と行動を示すことで協力者となってもらい、乗り心地の良いエレベーター維持が可能です。



以上、マンションに関する最新情報・法令を含めた解説

このページの先頭へ

『行政書士の業務内容と専門性』Q&A

Q1.行政書士とは?

A.行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(電磁的記録含む)及び権利義務・事実証明に関する書類に関して、法律に基づき作成、作成・提出を代理代行し、加えて、当該書類作成に伴う相談に応じることを業とする「隣接法律専門職者」です。
《行政書士が作成できる書類》
1.許認可の申請書・添付書類、行政機関に対する書類(届出・登録等)
2.契約書や約款、示談書、覚書などの「社会一般」に関する法律的な書類
3.株式・合同・一般社団・NPO・学校法人・共同組合法人・管理組合法人・医療法人・社会福祉法人などの設立に関する法的申請等の書類(不動産業・保育所・労働者派遣業・介護保険事業・食品製造業・貸金業・生命損害保険業・ホテル旅館業・貨物運送取扱業・建設土木業・旅客自動車運送業・船舶運航業・産業廃棄物業・消防設備業など)
4.遺言・相続に関する協議書(相続関係図・財産目録など含め)や公証人役場へ提出する公正証書原案書類
5.成年後見制度・任意後見制度への申請書類、契約書作成など
6.行政手続上の処分がされた場合の聴聞や弁明に関しての、「行政不服審査法」を基本とする書類と基本としない書類(反論書など)
7.行政委員会等による準司法手続書類、「行政事件訴訟法」に関する司法審査手続に関する書類
8.著作権・特許・実用新案・意匠・商標・工業所有権に関連する行政手続(願書・明細書・要約書・意見書・取説等の補完書・調査報告書など)。 尚、特許訴訟に関連する代理人は、弁理士、弁護士の独占業務であり、行政書士はできません。


Q2.税理士や社会保険労務士など、他の「士」業との共管は?

A.行政書士法で、行政書士は「他の法律で制限されているものは扱えない」と法定されています。具体的には、国が定める「士」業によって、その「士」業の独占業務と法定されている業務を言います。弁護士であれば、訴訟に関係する業務。司法書士は、登記業務。宅地建物取引士(旧宅建主任者)は、不動産売買での重要事項説明や契約書締結が独占業務となっています。
税理士の業務では、「税理士法51条の2項」によって、行政書士の作成できる税務書類が以下のように規程されています。ゴルフ場利用税・自動車税・軽自動車税・自動車取得税・事業所税、その他政令に定める租税に関し、税務書類の作成を業とすることができる。尚、税務書類でも租税に関する作成業務は以下(石油ガス税・不動産取得税・たばこ税・土地保有税・入湯税)が業務範囲となります。例えば、毎年、一定の所得がある方は「確定申告」が必要ですが、この作成業務も官公署への届出とされていることから、作成ができます。
社会保険での労働・社会保険上の申請書、帳簿書類(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿・賃金や退職金の各規程・労働協約など)の代行代理は、社会保険労務士の独占業務であることから、他の法律で制限されている業務となり、行政書士の業務外となります。


Q3.ご依頼する際の行政書士の専門性の確認は?

A.行政書士は、業務の範囲が広く、全ての依頼をお受けしている訳ではありません。行政書士は、経歴や専門性(他の士業も合わせ持つ)によって、ある程度、業務範囲があります。特化した依頼を受けて、専門性を高めて、ご期待にお応えしているのが現状と思われます。例えば、車両への許認可(車を主体とする事業や車検・車庫証明書など)を専門とするなど。依頼者は、その行政書士の専門性や経験なども考え、ご依頼することが、ご期待通りの結果に繋がる秘訣です。当事務所では、権利(契約書など)関係・事実証明関係・起業法人設立・不動産関係・介護福祉関係・告訴告発書作成/事件事故調査書・後見人制度などを得意としています。また、日々の研鑽にも努め、ご要望にお応えすることを基本としております。

行政書士 マンション管理士 介護福祉士 宅地建物取引士 管理業務主任者 CG検定1級技術者 ワタナベ事務所では、共管業務の範囲を守りつつ、他の士業者とのネットワークを構築し、進めています。


このページの先頭へ

『許認可(登録・届出・申請など』Q&A

Q5.「許可」「認可」への申請とは? 尚、その決まり事や注意点は?

A.社会生活上では、法令や条例(自治体が定めた法律)を守ることが不可欠な要素です。その中で「何かを始める」とき、事前に官公署へ許可や届出といった、「許認可申請」を経なければならない場合があります。例えば、マイカーを購入する際には、管轄している警察署に「車庫証明」を受けます。これも許認可です(行政法学上は、警察許可といいます)。 注意点として、各種の許認可は、その種別ごとに決められた要件を満たさなければ、申請が通らず、受付てもらえないことになります。要件を熟知した専門家の代行代理が、スムーズに許認可を受けるポイントです。行政書士は、官公署に提出する書類の作成、代行代理が独占業務となっており、開業する店舗等の形態によって、許可申請手続や届出を行う専門家です。

《官公署》とは:各省庁、都道府県、市区町村、警察署、保健所、税務署、その他の行政機関等です。尚、「行政機関」の中には、公的役割を担っているNHKや各種の公益団体・委員会が含まれています。因みに、委員会で許認可に関係する組織では、市町村に設置が義務付けられている「農業委員会」があります。農地の権利移動(売買等で所有権を移転する際)は、農地法によって事前に許可を受けなれければなりません。受けないで行われた農地売買は、法的に無効となり、契約の効力は発生しません。この場合の許可は、行政法学上、「認可」と呼ばれます。
「認可」には、建設業許可、一般ガス事業者への供給約款認可、運賃の認可、医薬品製造販売承認などがあります。 尚、「認可」の申請が、官公署へされ、要件が満たされている場合は、官公署は認可をしなければなりません。「許可」と異なり、官公署が意図的に認可を出さないことは違法(行政手続法にて法定されている)となり、許されません。

《許認可申請と許認可取得に共通注意する点》
@『人的要件』⇒各種業態によって、特有の責任者を据えることが必須となります。その責任者に対して、国家資格が必要であったり、専門の経験が必要であるなど。これを「人的要件」といいます。申請する業態によっては、国家資格や民間資格(各種団体が実施、付与している資格など)の必要な業態においても、国家資格と更に指定された研修を受講終了して、ようやく申請に必要な要件を満たすものもあります。人的要件は、許認可申請する上で、最も難関な部分と言えると思います。例を挙げると、「宅地建物取引業」:宅建業は、申請する事業所に、宅地建物取引士(旧名称:宅地建物取引主任者)の登録を受けた者が在籍することが必要です。事業所の代表者が資格者でなくとも、資格者を雇用することで、人的要件が満たされます。

A『物的要件』⇒許認可申請での当該事業を行う場所や設備・備品等をいいます。事務所や工場、倉庫など、事業を行う場所が、自己所有であれば不動産登記簿、賃貸物件であれば賃貸借契約書が必要です。ここで肝要なことは、その物件が法人代表の個人名義である場合は、その個人からの使用承諾書が必要となることがありますので、準備することが不可欠となります。 物件が、賃貸物件であった場合は、居住用・事務所用かをチェックして、居住用として賃貸した場合は、家主との使用承諾書が必要となることがありますので、注意が必要です。更に不動産でチェックする点は、業態によっては、その地域で営業できないこともあります(都市計画法の用途地域での制限。例えば、ホテル・旅館は、工業地域では建築できませんので、営業の許可申請もできません)。

B『財産的要件』⇒許認可の業態によっては、自己資本金が500万円以上必要という業種もあります(以上・以下は、その基準となる数値を含めますので、この場合は500万円あれば、要件を満たします)。 この自己資金の確認は、個人・法人問わず、必要となり、貸借対照表や銀行の残高証明書など、自己資金を証明できる証拠によって行います。尚、自己資金は、全ての業態で定まっている要件ではありませんが、「確定申告書」や「納税証明書」を要件としている業種が多くあります。 *申請が通る要件であることから、定まった自己資金以下の余力の場合は、申請却下されるケースがあります。この場合は、他の物的資産を評価する業種もあります。例えば、不動産(土地・建物)であれば、固定資産税の評価額を自己資金相当として要件と認めるケースなど。

@ABの要件は、要件としての内容に違いがあるだけで、全ての許認可申請に共通する必須事項であることから、早めに行政書士へ相談することが、許認可を無難にクリアするポイントです。


Q6.「飲食店」「バス・トラック・タクシー」業の許認可とは?

A.飲食店(食堂・喫茶店・ラーメン屋・弁当屋・居酒屋など)は、営業開始前に所轄している保健所警察署に必要書類を提出して、開業する施設が決められた基準を満たしているか等の、「飲食店営業許可」を受ける必要があります。この場合の許可の意味は、「本来は、誰もが禁止であるが、特定の場合、または、その申請の『当事者』に限って、禁止を解除するという法律効果を有する証明事項です。「許可証」が渡されて、始めて営業が可能となります。許可の無い営業行為は、保健所に付与された執行力(営業停止・禁止、罰則など)によって、罰を受けることがあります。スナック・クラブ、料亭は、「風俗営業許可」が必要となります。
同様の意味を持った「許可」に、自動車の運転免許、医師の免許、建築士の免許、産業廃棄物処理業許可、古物商許可、刀剣類所持許可等があります。

バス・タクシー・トラック等の運送業を始めるためにも、許可を得ることが必要です。この場合の許可申請書は、複雑な内容となっているため、行政書士に依頼することがベストと感じます。特殊車両の通行許可申請、軽貨物や運転代行業も許可等の開業手続が必要です。 行政書士は、開業への相談は勿論のこと、開業後の業務サポート(法的なフォローと収支等を含め)も行いますので、ご相談することをお勧めします。

「許認可」には、『特許』と行政法学上、分類される行政行為もあります。著作権等の特許法で認めらてる特許とは、分けて考え、異なります。因みに、特許法での特許を行政法学上は、「確認」といいます。
行政法学上の「特許」とは、特定の個人、または法人に対して、本来、有しない権利を新たに付与し、または包括的に法律関係を認めることをいいます。
道路工事(一定の期間、優先的に占有できる権利)等での道路占有許可。工事業者等が許可証の立札を立て、一部の道路を封鎖して工事する様子がありますが、これは事前に特許という許可を得て行っています。その他、「特許」には、無線局の免許、鉱業権の設定、漁業権の設定、電気事業の許可、河川占用許可、公有水面埋立の免許、外国人への帰化の許可等があります。


このページの先頭へ

『各種の株式・団体・組合など、法人設立』Q&A

Q4.法人は、どのような組織・団体なのか。また、種類は?

A.『法人』とは、法人格が認められることにより、法人自身の名義にて権利を取得することができ、また、義務を負うことになる主体をいいます。尚、性質として自然人ではありませんので、自然人を前提とした帰属主体ではありません。法人等を法定する「会社法」や「各種設立法人の法令」によって法人格を与え、健全な状態へと規定しています。
「会社法」は、法人格取得の要件を定め、その要件が満たされた場合には当然に法人格を認める。これを準則主義といいます。営利性と社団性を有します。営利性とは、法人の構成員(従業員ではありません)に利益を分配するという意味です。社団性とは、特定の共同目的達成のために複数の者が結合する団体という意味です。因みに、構成員が1人のいわゆる「1人会社:いちにんがいしゃ」も会社として認められます(合資会社は除く)。
《法人の種類》
@会社法で規定する法人は、4種類(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社:合名・合資・合同は持分会社という)。平成18年度から施行された会社法では、有限会社はなくなりました。尚、その以前から設立されている有限会社は、特例有限会社として名称使用が有限会社のまま、許されています(有限会社は、法律上は、株式会社扱いのため、簡易な変更にて、株式会社名にすることも可能。勿論、そのまま、有限会社として名乗り続けることも許されています)。現在の会社法で、以前の有限会社に近い形態は、設立が容易な「合同会社」が当てはまります。合同会社は、株式会社同様で資本金の範囲のみ責任を負う「間接有限責任」でありつつ、組織のルールである「定款」の縛りが比較的緩く、自由度が広くなっているのが特長です。出資金(株式会社での基本金)は金銭等(1円以上)に限られるが、公証人の認証は不要で、設立登記のみで設立となります。(合名会社・合資会社も公証人の認証は不要)

A会社法で法定される以外にも、法人があります。一般社団法人、一般財団法人、労働組合、弁護士法人や行政書士法人の各士業法に基づく法人、マンション管理組合法人、これらは、準則主義が適用され、要件を満たせば当然に法人となれます(登記・登録は必要)。一般社団法人や一般財団法人で、「公益法人認定法」によって、公益性の認定を受けた法人を公益社団法人や公益財団法人といいます(認められることで、公益性が担保され、信頼性も高まります)。

Bそれぞれの法令にて、主務官庁の認可で法人となる法人を、認可主義といいます(登記は任意であるが、登記する傾向にある)。学校法人(私立学校法)、医療法人(医療法)、社会福祉法人(社会福祉法)、生活協同組合(消費生活協同組合法)、農業協同組合(農業協同組合法)健康保険組合(健康保険法)、漁業協同組合(水産業協同組合法)、中小企業組合(中小企業等協同組合法)、地縁による団体(地域で組織化され、財産を有する自治会は、市区町村長の認可で法人となれます。登記も可能)。

C最近、設立の件数が増えているNPO法人(特定非営利活動法人)は、認証主義といい、所轄庁の認証で法人となります。Bで記載した認可主義より簡易に設立が可能であるため、登記登録が必要となります。宗教法人も認証主義の法人です。 NPO法人は、「非営利」とあることから、事業活動で利益を得てはだめと思われていますが、運営していくためには資金が欠かせません。当然、設立後は何らかの収入が不可欠です。社会貢献が根柢にあるNPO活動でも、運営が適正にされることが前提ですから、収入を得ることには、法的に問題はありません。適切な経営手腕で、活動を維持することが重要ですので、法人の構成員である理事長や理事は、給与以外に利益を貰うのではなく、活動資金や経費に使用していきます。また、残った利益は適正な会計処理にて留保することも認められています。官公署からの補助金・助成金は、申請しなければ貰えません。そして、実際に支払われるまで数か月を要し、貰える期間も「単年度」「3年間」「5年間」等、期限が決まっています。また、補助金・助成金を貰えたとしても、支出への細則規程があることが多く、自由な使い方はできません。補助金・助成金の目的に添った使用を、当初から事業計画等で検討・考察することが、NPO法人運営のポイントです。


Dその他にも、特別法にて設立できる法人があります。マンション建替組合(マンション建替えの円滑化等に関する法律)、土地区画整理組合(土地区画整理法)、市街地再開発組合(都市再開発法)、防災街区計画整備組合(密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律)、商店街振興組合(商店街振興組合法)、酒造組合や酒販組合(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律)など。このように、多種多様な事業活動に法人格を認め、権利主体を担保しています。特別法で認められた法人は、非営利法人であるから、構成員(役員等)に利益を配当することはできませんが、給与支給は認められています。


このページの先頭へ

『遺言、相続、贈与など、法律対策』Q&A

Q7.「遺言」「相続」とは? また、その種類(法的)と手続きは?

A.遺言と相続は、密接に関連する手続きと言えます。生前に遺言を残すことで、親族間や縁故のある人へ明確に、自身の意思を残すことができ、後の相続時での紛争を予防する効力となります。また、相続が発生した場合でも、まずは、亡くなった方(被相続人という)の意思が示された書面があるかを確認することが必要となります。このように、遺言をする・しないに関わらず、遺言と・相続は密接に関連しています。
「親族間や縁故のある人」としているのは、相続人となる可能性があるからです。例えば、亡くなった方:被相続人に親族が無く、生前に身の回りの世話をした縁故者が居た場合、被相続人の遺産を相続する申請ができます。因みに、全くこのような「親族間や縁故のある人」がいなく、相続人の不存在が確定された場合は、国庫に帰属することになります。(この判断は、家庭裁判所が行います) 遺言・相続には、その他にも民法や過去の判例等にて、どのように処理するかの、指針が示されています。まずは、これに則って手続を行います。(手続に不満があり、その理由に正当性が伺われる場合は、訴訟することも可能です。しかしながら、一方の相続人が、他方をいきなり訴えることはできず、この場合、まずは、家庭裁判所への「調停」申立てを行い、ここでも解決を図ることとなります。)

《遺言の種類と手続》
@生前の遺言作成と紛争予防への準備:遺言は、3種類が定められています。
1)自筆証書遺言⇒本人が自ら書き残す。自らの手で全文・日付を書き、押印した書面です。※パソコンやワープロ文は認められません。 因みに、カーボン紙に複写の形で、自筆した書面は認めるとの判例があります。
「自筆証書遺言」の特長は、証人や公証人が不要で、いつでも書き変えることができる点です。遺言の存在自体も、本人だけの秘密とできます。この場合は、費用もかかりません。 しかしながら、この部分はデメリットでもあります。比較的に簡便に作成できることから、本人だけの秘密で亡くなった場合や偽造・改ざん、紛失等の不安があります。 自筆証書は厳格性が求められていますので、ある程度、考えが纏まった段階で、一度、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)等へご相談することが、デメリットを回避するポイントです。

厳格性としての注意点:書き残しても、法的効力が認められない内容があります。例えば、亡くなった時点で自分の体の一部(臓器など)提供したいと記載しても、現行の法律(民法)では、遺言事項として認めていません。認められない事項は、遺族がその意思に従うかは、遺族の判断となります。
認められている遺言内容として記載する事項は、1.相続分や財産分割・遺言書の執行者、 2.遺贈・寄付・信託の設定内容、 3.身分に関する認知や後見人・後見監督人などの3項目に限られています。

遺言書保管の注意点:
遺言書は、しっかりと保管することが肝要です。保管場所も選定・考察することをお勧めします。すぐに発見されることろでは、盗難等の心配があります。だからといって、亡くなった後も全く発見されない場合は、遺言書の意味がありません。因みに、当初、遺言書が存在せず、相続人間で相続が完了してから、正当な遺言書が出てきた場合は、被相続人の意思が優先され、その内容に従った遺産分割をやり直されければなりません。
保管にあたっては、念のため、同様の自筆証書遺言を2通作成して、1通を専門家(弁護士・司法書士・行政書士)等へ預けることが間違いのない保管方法と思います。

2)公正証書遺言⇒遺言者(本人)の口述を公証人役場の公証人が筆記、その内容を遺言者、証人に読み聞かせ、全員で署名・押印した書面です。公証人が原文を作成しますので、法的効力が担保されます。このときの原本は、公証人役場に保管されることから、偽造・隠匿もありません。公証人が書面を作成することから、遺言者がその書面に身体的障がい等で署名できない場合は、公証人が付記して署名に代えることができます。デメリットは、手続きが煩雑で、証人が2名以上必要なことから、秘密保持できないこと。公正証書遺言は、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)等へ依頼して、遺言の『原案』を持って、公証人役場へ行くことで、より一層、自身の思いが遺言書に反映できます。


3)秘密証書遺言⇒遺言者が完全な秘密を望む場合に有効な書面です。遺言者が遺言書を作成して、封印して、ご自分の遺言であることを2名以上の証人立ち合いのもと、公証人役場の公証人に申述します。身体的障がい等で、口がきけない者は手話通訳による申述、もしくは封紙に自書します。作成手続が一番煩雑な方法です。尚、遺言内容に公証人は一切関与しません。また、家庭裁判所の検認が必要です。 デメリットとして、遺言内容に公証人や専門家(弁護士・司法書士・行政書士)等が関与しないため、方式や内容に不備があり、場合によっては、内容が認められないこともあり得ます。この場合に遺言証書の全てが無効となるのではなく、自筆証書の要件が備わっているときは、「自筆証書遺言」として有効となるとの裁判所の判断がが示されています。 方式や内容への予防対策として、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)等へ、要望と意思をご相談して、適切なアドバイスを受け、「雛形」を作成してもらうことが、デメリットの軽減となります。

《相続の種類と手続・生前の対策》
相続とは、その対象者(被相続人)が持っている財産を法定相続人や縁故者、遺言で示された人物が引き継ぐことをいいます。法律の定義では、「個人の財産的な権利や義務を、その者の死亡と同時に、法律で定められた者が包括的に引き継ぐこと」と狭い意味で運用されています。法律で定められた者とは、対象者の配偶者や子供・孫・親、遺言で示された受遺者、裁判所で認められた縁故者などをいいます。
被相続人の遺産を引き継ぐ際の法定順位に則り、遺産分割がされることが原則ですが、遺言で示された者(自然人の他、団体や法人等も受遺者となります)が、いる場合は、法定相続人に保証されている遺留分を侵害しない限度で遺産分割がされます。遺留分とは、本来の法定相続人が受けられる相続分を、法律で保証した範囲をいいます。被相続人の配偶者や子、その孫も2分の1が保証されています。被相続人の親は3分の1。被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
相続には、「生前」での対策として、前述した「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」が一般的に活用されています。この他にも、特別の方式による「生前」での遺言として、「危急時遺言」「隔絶地遺言」があります。特別な事情で遺言する方式ですから、災難や病気(隔離が必要な場合)、在船中に地上との連絡が取れなくなったときなどに利用されます。

遺言書や縁故者がいない一般的な法定相続は、亡くなった方や遺族の希望などを重視せず、法定相続分に則って遺産分割がされます(単純承認という)。包括的に承継されることから、プラス財産・マイナス財産も原則として、引き継ぎます。ここで考えることは、マイナス財産をどのように処理するか? 重要な問題で、そのまま相続した場合、債務(借金など)を相続人の財産や預金から、完済することとなります。相続人に債務を返済する余力があれば、不安要因ではありませんが、通常は、多くの相続人が直面する問題となります。この問題等を含め、そもそも、被相続人の遺産を相続しない方法が法定されています。「相続放棄」「限定承認」という方法です。相続放棄は、一切の承継を拒否することです。相続放棄は、その相続に関しては、初めから相続人ではないと認定され、相続人であった者の子供や孫にも及びます。いわゆる代襲相続権もないこととなります。

限定承認は、相続財産を限度に、被相続人の遺産を受け、その範囲内で債権・債務の責任を果たすことです。例えば、借金が残っている場合、相続した遺産の限度で完済します。相続人自身の財産や預金から完済しないで済ませる承認方法です。但し、債務を完済することが不可欠ですから、限定承認への申述は、相続人全員が家庭裁判所に対して行います。相続放棄は、相続人単独で申述できます。尚、それぞれの申述は、相続があったことを知った日から、原則3か月以内に行います。この3ヶ月の期間(熟慮期間という)を過ぎた場合は、単純承認(承認したと扱われます)となります。

法定に則った「一般的な法定相続」でも、法定相続人の中に、被相続人の生前に、財産の維持、または増加につき、特別に協力・助力した法定相続人がいる場合は、『寄与分』を考慮して、遺産分割の割合に加算することができます。これを寄与分といいます。
寄与分は、相続人間の協議によって決めることが原則ですが、協議が定まらない場合は、「寄与分の請求」基づき、家庭裁判所へ申立し、決定を受けることができます。この場合は結構、時間がかかります(約半年から1年位は確実にかかります)。
寄与分等の相談でよく問われる内容に、「自営業を手伝った貢献度は、どのようになるのか?」という相談です。裁判所の判例では、事業資金の一部を負担して寄与した相続人療養看護に努めた相続人被相続人の代わりに事業を切盛りした相続人などが、「特別の寄与」に当たるとの判断が示されていますので、この部分を考察して寄与分を考えることとなります。 示された判断を元にお答えすると、自営業を給与を得て手伝っている場合は、「特別の寄与」に該当しないこととなります。
「寄与分」を得る相続人がいる場合は、決定した寄与分を、相続財産から控除します。次に、寄与分を差し引いた残額を、法定相続分で分配し、寄与相続人の分に、最初に控除した寄与分を加算して算出します。この算出では、遺言がある場合は、遺贈の価額を控除した額を超えることはできない(民法904条)となっていますので、遺贈の価額が優先します。


Q8.「遺贈」「相続贈与」とは? どのように違うのか?

A.「老後の面倒」をみてくれた恩人に、自身の財産の一部を贈与したい、と思った場合にそれをする方法として、遺贈と生前贈与があります。遺贈とは、「遺言書によって遺産の全部、または一部を無償で、もしくは一定の負担を付けて他の者に譲与すること」をいいます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈:遺産総額の3分の1を、Aさん与えるという割合で遺贈することです。遺贈を受ける者を受遺者といって、個人や法人等もなれます。但し、相続欠格者(民法891条)は、受遺者になれません。(相続欠格者とは、被相続人や先順位の相続人に対して、故意に殺害して刑に処せられた者。詐欺・脅迫により有利な状況を作出した者。遺言書を偽造・変造・隠匿した者などが該当します。)犯罪行為を犯しても、執行猶予の場合は該当しません。また、殺人未遂・予備等は欠格事由となりますが、過失致死・傷害致死は該当しません。 法定相続人が欠格者となっても、その者の子への代襲相続は認められています。
被相続人が、生前において、一部の親族(子や親、兄弟姉妹)から、虐待や侮辱を受けたことから、その親族への相続を除外したい場合の方法も、法定されています。これを「相続廃除」といいます。被相続人(本人)の意思を尊重する制度ですが、安易な除外を抑制する観点から、本人が家庭裁判所に対して請求を上げ、家庭裁判所の審判によって、相続廃除が決定します(廃除請求は、本人が生前に行うことが原則ですが、遺言書に記載されている場合は、遺言執行者が請求することもできます)。

特定遺贈とは:この土地は、Bさんへと、特定の財産を指定して遺贈することをいいます。
受遺者は、相続人以外でも個人・法人問わずに遺贈を受けることができますが、本来の法定相続人に対して、遺贈があった場合は、通常は他の法定相続人の取り分を考慮して、調整します。これを「特別受益」(民法903条)といいます。具体的には、法定相続人が遺贈を受けた場合や被相続人が生前に、その一部の相続人に対して、贈与した場合は、その分を相続財産に加えて、遺産分割をするべきと法定されているからです。例として、その相続人である子供が婚姻する際に、生計の資本として贈与を受けた場合。兄弟姉妹の中で、その者だけが特別に学費を貰い進学した場合。住宅資金の一部を負担してもらった場合。不動産の贈与。借金の返済を肩代わりしてもらった場合などが該当します。尚、これらの贈与が、相続発生の相当前にあった場合でも、その受けた経済的利益を現在の時価として算出して、特別受益分とすることになっています。

この、特別受益を相続で考慮する手続きを、「特別受益の持戻し」と呼びます。
計算例として、相続財産が3000万円、相続人が子供3人。法定相続分は均等。長男が事業資金として、被相続人から、500万円の特別受益がある。というケースでは、3000万円に長男が受けた500万円を加算して、全相続財産を算出します。これを3等分してから、長男の相続分から500万円を引きます。この結果、長男は666万円、二男と三男は、それぞれ1166万円となります。

《贈与》
贈与には、通常の贈与と死因贈与があります。通常の贈与は、当事者の一方が自分の財産を無償で、その相手に与える意思を表示して、その相手が承諾することで成立します。
死因贈与は、「死んだら、この財産をあげる」という贈与で、贈与者が生存中は効力が発生しないが、贈与者の死亡によって効力を生じる契約をいいます。法的には、遺贈の規定が準用されます。
贈与は、契約行為が前提にありますので、これを契約書等の書面で行った場合は、贈与者・受贈者の一方的な撤回は、原則できません(民法550条)。


Q9.「代襲相続」に養子が関係する相続での留意点とは?

A.「代襲相続」とは、亡くなった方(被相続人)のその子が既に亡くなっている場合、孫などに相続権が発生し、相続することをいいます。正確には、本来相続人になるはずだった方が死亡、相続廃除、相続欠格などの事情で相続権を失った場合に、その子孫が代わって相続人になることです。(民法第887条2項)
相続は亡くなった方を基点に、その配偶者や子(直系卑属)もしくは尊属等に発生する権利で、当然ながら相続人(推定相続人)は相続することも、限定承認することも、もしくは放棄することも法定期間内(原則、発生後3ヶ月以内)であれば、可能となります。
 相続での権利関係には、様々なケースがあります。その中で特に留意が必要なのが、相続人の中に養子縁組した方があり、その養子に子がある場合です。養子縁組した時点で、養子は法律上の血縁関係が生じますので、養子の子も法律上の血縁関係に則り、相続権が発生すると考えることが自然ですが、民法では一定の決まりが法定されています。
例えば、祖父が亡くなり、その子が養子縁組した養子であった場合、その養子には、養子縁組前に生まれた子と、養子縁組後に生まれた子がいるケースでは、双方ともが相続人になるのではなく、養子縁組後に生まれた子のみに相続権が認められます。

 民法の相続編(相続法)には、『同時存在の原則』という法理があります。これは、被相続人の相続が開始された時点で相続人が存在していなければならないという原則をいいます。養子の親が亡くなった時点で、養子縁組前に生まれた子と養子縁組後に生まれた子が生存していれば、この原則を満たすように思われますが、このように取り扱う訳ではなく、養子縁組後に生まれた子に相続権があると扱います。根拠は民法第887条2項の「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は民法第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」とあります。
この但し書きの条文の意味は、養子と養親(ようしん)及びその血族との間においては、養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生じますが、養親は、その時点までの養子の親族(既に生まれた者)とは親族関係に立たないということです。養子縁組の日から、養子と養親は法定血族関係となりますが、縁組前、要するに既に生まれている養子の子は、その養親とは親族関係に立たないということです。

 養子縁組後に生まれた子は、その養親の直系卑属として代襲相続権がありますが、養子縁組前に生まれていた子には代襲相続権はありません。


Q10.「遺産分割」手続はどのように進めるのか?

A.被相続人の財産が相続人に承継されるのは、相続が開始されたときとされています。相続財産は全体を推定相続人がお互いに相続分を相続権の割合で共有している状態となっています。そのため、相続後に個々の財産を推定相続人間で、だれが相続するのかを決める手続きが必要となります。この相続分を決めることを「遺産分割」といいます。
 相続人が一人しかいない場合を除き、遺産分割の手続きがすべての相続人に発生します。残された遺産を、だれが、どれだけ相続するのか?ここを法定相続分の割合に従い、遺産分割協議を行って、お互いに納得し、合意することが不可欠となります。すべての相続人ですから、一部の相続人が協議内容を知らない、もしくは協議に参加していない場合は、協議自体が無効と扱われます。この場合は、全員で再度、遺産分割協議をやり直されければなりません。また、遺産分割協議では代襲相続人や認知された子、包括受遺者も出席する権利がありますので、まずは、相続人を明確に確定することが必要となります。戸籍(原戸籍)や除籍抄本、戸籍附票、住民票等を取寄せするなどし、相続人を確定します。戸籍謄本などは取得しても戸籍の見方が分からなければ、相続人を間違えたりする不安もありますので、ここは専門家(弁護士、行政書士、司法書士)に任せる方が無難です(何度も役所へ足を運ぶなど、煩雑な作業に振り回されないためにも)。

 遺産分割協議では、法定相続分(配偶者・子は2分の1など)に則って分割協議を話合いますが、どのような配分でどのように分けるかは、相続人が自由に協議し決めることが可能です。相続人全員の合意があるのであれば、法定相続分に従う必要ありません。しかしながら、遺留分を侵害する遺産分割協議は認められず、侵害されている相続人は、「遺留分の減殺請求」ができます。

遺産分割協議が合意に達しない場合は不成立となり、家庭裁判所の調停、審判へと委ねることもあります(調停や審判を代理人に頼む場合は、弁護士のみ代理業務ができます)。 

遺産分割が制限される場合:
 相続人は相続開始後、原則として、いつでも遺産を分割できます(相続開始後、3ヶ月経過で放棄が出来なくなる)。なお、遺産分割はいつでもできるとなっていますが、名義変更や相続税などで、手続きが発生している場合は、あまり悠長にしていられません。例えば、配偶者には相続税がかからないという特典がありますが、相続税の申告期限までに遺産分割協議が纏まらないと手続きができず、特典を受けられないこととなります。
また、以下の場合は制限(禁止)されることがあります。

 @遺言による分割の制限(禁止)
 被相続人が、遺言によって遺産の一部、もしくは全部の分割を制限、禁止している場合は、その遺言の意思に従います。因みに遺言による遺産分割を禁止する期間は5年間と限度が法定されています。
 A遺産分割協議による分割の禁止
 相続人全員が遺産分割を禁止した場合も遵守する必要があります。
 B審判による分割の禁止
 相続人の資格、遺産の範囲等が紛争の原因となり、家庭裁判所に係争中の際は、家庭裁判所が定める一定期間は、遺産の一部、または全部の分割が禁止されます。

『マイナス財産に関する遺産分割』
 相続する資産には負債も含まれます。例えば、第三者からの借金、買掛金、被相続人の生前の貸付や立替金、仮払い金、入院費、治療費も被相続人の債務となります。金銭債務(借金)に関しては、相続開始(被相続人が亡くなった)と同時に相続分の割合に従い、各相続人に分割されます。これは法定割合ですので、例えば、遺産分割協議にて相続の割合を別に決めたとしても、第三者(債権者など)には主張できません。ただ、分割された債務につき、他の相続人は連帯責任を負うことではありません。(連帯責任を負わないという判例法理が確立しています)
 債務に関しては、債権者の利害等が付随していますので、相続分の指定や分割方法の指定を相続人間で自由に決めることはできません。通常は、法定相続分に従って相続することになります。要するに、相続した分の借金を負うことになります。

相続放棄について:
 遺産目録にて資産・財産が、プラス分、マイナス分が判明した段階で、相続開始を知ってから3ヶ月以内(ご自分が相続人になったことを知ってから)であれば、「相続放棄」をすることができます。相続の放棄をした場合、相続放棄をした人は最初から相続人ではなかったとみなされます。相続放棄は家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。
未成年者・成年被後見人など、法律行為を行うことが制限されている人は、その法定代理人が、未成年者・成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出します。

限定承認について:
 相続によって得た財産の範囲内のみで、被相続人の債務を負担するという条件付きで、相続することを「限定承認」といいます。被相続人の負債額(借金)が不明な場合は、限定承認を申立て、自己の財産から返済するリスクを回避することができます。限定承認を行った場合、相続人は被相続人が残した借金の返済につき、返済額に満たなくても、ご自分の資産・財産から返済する義務はありません。限定承認を申立てするには、相続人全員の合意が必要となります。1人でも意思が違う場合は、限定承認はできません。ただ、相続人の中に相続放棄した者がある場合は、その者を除いた相続人全員で合意すれば限定承認ができます。
 限定承認の申立ては、ご自分のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続限定承認申述書」を提出して行います。限定承認の申立てが受理されると、家庭裁判所によって相続財産管理人が選任され、清算手続きが家庭裁判所によってすべて行われます。なお、相続財産管理人は相続人の中から1人、選任されます。

 遺産分割協議が相続人間で成立するまでは、分割方法にかかわらず、遺産は各相続人の共有と扱われます。その間の遺産の管理は、相続人の法定相続分に従い、多数決で取決めることとなります。遺産である預貯金の管理を行っている相続人も、預貯金の払戻し等は制限を受けます。

遺産分割協議の方法:
 遺産分割協議は、特に決まった作法がある訳ではありません。全員が協議内容に納得し、合意があれば、遺産分割協議は成立しますので、その内容を遺産分割協議書に清書します。この協議書は、合意の内容を記載しますが、後日の争いを避けるための証拠となるものですから、専門家(弁護士、行政書士)に作成代理を頼んだ方が、後々のトラブル防止になります。*専門家に依頼する際は、協議にも同席いただき、法的意味を確認しながら合意形成を行うことが肝要と思います。

 遺産分割協議が成立した段階で遺産分割が確定し、相続のときに遡って有効となります。(遺産分割協議書の日付は、被相続人が亡くなった日とします。被相続人が亡くなった時点で相続は始まり、遺産全体につき、各相続人の共有となります。その後、遺産分割協議が成立し、各相続人に分割され、共有時期はなかったことと扱われますので、遺産分割協議書には、被相続人が亡くなった日を記入します。)
 遺産分割協議書は、財産を明確にした目録と相続人関係図を加え、正確に作成することが必要です。遺産の全部に関して、協議書に網羅されていない場合は、その協議書が無効となる場合もありますので、一字一句、協議とおり正確に作成し、法的手続き(預貯金の解約や動産などの名義変更、相続登記など)に利用した際にも不備がないように清書します。各相続人が合意した証拠として、署名捺印(実印)をし、各種手続きには各相続人の「印鑑登録証明書」を添付して手続き申請します。


このページの先頭へ


『農業法人・農業生産法人』Q&A

Q11.農業法人・農業生産法人の内容と手続き(全体像)とは?

A.平成21年12月に改正農地法が施行されました。この改正によって、農業への参入や農家の法人化取得など、門戸が広がりました。現状の法令等に添う「農業法人、農業生産法人」の手続き等をご案内します。
1.基本構想の立案
  営農計画案、組織案などを作成します。
  
2.農地の確保 
 *現在、既に農地での栽培をしている方はその農地の
  権利関係を整理します。(所有地もしくは賃借、借地など)
  
3.地域の官公署(農業委員会等)との事前確認
  作付計画、収支計画、人員計画等の営農計画書の作成。
  
4.申請書類の整理・作成
農地法3条1項等に添う書式にて、許可申請書(案)を地域の農業委
員会で確認します。地域によっては記載や書類が異なる場合もあり、
所管している農業委員会で確認します。
*ここは専門家(行政書士)が伺った方がスムーズに出来ます。
  *地域により、営農組合、水利組合等の同意書が必要な場合あり。

5.法人設立の定款作成(農業生産法人の要件に適った内容とします)
  この時期に法人印鑑、横印(ゴム印)を作っておきます。
  
6.定款認証
  所管する公証人役場で法人定款の認証を得ます。
  *認証に必要なもの
   @定款3通(公証役場用、法務局用、申請者保管分)
   A法人設立時の発起人全員の印鑑証明書
   B収入印紙代の4万円
   C法人が発起人の場合は、代表者の印鑑証明書
   D登記する法人(会社)の印鑑
   E公証人役場に支払う定款認証手数料:1件5万円
  
7.法人の資本金を発起人の口座に振り込み、資本金払込証明書の作成
  
8.登記所にて新規法人設立(登記の際、1件:登録免許税15万円)
  農業生産法人も実態は株式会社等での設立となります。
  農業生産法人の要件に合致した形で、株式会社等の法人設立です。
  *法人登記は、申請者(代表者)が行った方がいいです。
   法人を設立して、しっかり運営する意識がより強くなります。
   登記所へは関わった行政書士に同行させることをお勧めします。
  
9.農地法3条1項の許可申請の提出
  (他の関係官庁へも法人届出必要)
上記3、4で確認した書類を仕上げ、所管の農業委員会に申請する。
  
10.所管の農業委員会会議へ出席 (関わった行政書士が同行)
最終的な申請者の意思確認と営農計画の説明など。
  
11.法人許可申請の承認
  許可申請は、概ね申請から2カ月位でおります。


Q12.農業法人・農業生産法人の違いは?

A.『農業法人』とは、農業生産法人、一般農業法人を含めた呼び方で、「農業を営む事業主体となっている法人の総称です」。例えば、農産物、畜産物の生産をその法人が行い、生産物を法人として売り、天災や病害虫、相場の変動等の損益も、その法人が負担して、責任ある法人格として事業を遂行する法人を農業法人といいます。

農業法人が農業の生産事業を行うとき、農地の所有権や使用収益権(借地権、賃借権、永小作権等)を法人が保有する必要がある場合と、必要がない場合(もっぱら購入飼料に依存した養豚や養鶏の場合)があります。

このような場合、法人が農地・採草放牧地の所有権、使用収益権を取得することがあります。ここに、農業生産法人が関わってきます。
 
「農地法2条」に農地・採草放牧地の所有権・使用収益権を取得する資格の
ある法人を、農業生産法人といい、それ以外の法人は、農地・採草放牧地
の購入や借地を許可しない。となっています。 この規定から、農地・採
草放牧地を活用して農業を行う法人は、「農業生産法人」ある必要があり
ます。

『農業生産法人』とは、株式会社、合資会社、合名会社、合同会社及び農事組合法人(農協法の法人)のうち、その法人の行う事業、構成員及び役員に
ついて、一定の要件を満たして、設立されている法人をいいます。

※農業生産法人という名称の独立した法人がある訳ではなく、「農地法」
の定める農業生産法人の要件を備えている法人が、「農業生産法人」で
すので、上記の株式会社等の法人名での設立を経て、所管の農業委員会
の許可を得て、農業生産法人として営農できるようになります。

Q13.農業生産法人の要件は?

A.
a.農業生産法人になれる法人形態
 ・「会社法」に基づく株式会社、合資会社、合名会社、合同会社
  *株式会社は、定款で株式の譲渡制限を設けていることが必要。
 ・「農業協同組合法」に基づく農事組合法人

b.農業生産法人になれる事業要件 (農業生産法人が行える事業範囲)
 ・農業
 ・農業に関する事業
 ・農産物を原材料として使用する製造・加工
 ・農畜産物の貯蔵、運搬、販売
 ・農業生産に必要な資材の製造
 ・農作業の受託
 ・林業、共同利用施設の設置
 ・その他の事業(除雪、キャンプ場運営、民宿、造園業など)
 
c.構成員要件 (農業生産法人の構成員の資格)
 ・農地または採草放牧地を提供している個人(所有権、賃貸、借地含む)
 ・当該法人事業に常時従事する個人
  *農地法施行令規則9条に定める条件を満たしている従事者
   (必ずしも農作業である必要はなく、事務・運営・経営でもOK)
 ・年間労働日数が150日以上
  *150日未満でも構成員の年間平均労働日数が3分2以上あること
 ・年間労働日数が60日未満でも、農地等の提供者であり、下記の要件
  (必要日数÷構成員×3分2)もしくは、(必要日数×提供農地)。
 ・当該法人に農作業を委託している農業者(個人)
 ・農業協同組合、農業協同組合連合会
 ・農地保全合理化法人
 ・地方公共団体
 ・法人から継続的に物資の供給または、役務の提供を受ける者
  (個人、法人)*直産契約者、生協、スーパー、食品加工会社など
 ・法人へ継続的に物資の供給、役務の提供をする者(個人、法人)
  *農産物輸送業者、堆肥生産者、苗木業者など
  *法人は、総議決権の25%以下であること。
  *「認定農業者」からの出資は、総議決権50%未満までの特例有り。
 ・法人事業の円滑化に寄与する者(個人、法人)
  *ライセンス契約する種苗会社、生産資材等の新商品・新技術開発・提
   供に関する契約をする個人と法人
  
【構成員の議決権制限】
 構成員の議決権は、株式会社が1株1個。
 合名・合資・合同会社、農事組合法人は1人1個です。

d.経営責任者要件 (農業生産法人の役員の資格)
・役員とは、法人の取締役、組合の理事等をいいます。
 代表権を有する者とは限りません。
農業生産法人の経営責任者に求められる要件は、法人の経営責任者の過半数が、その法人に農地・採草放牧地を提供している構成員であり、かつ、その法人の農業(関連事業を含む)に常時従事している者です。尚且つ、そのうちの過半数が法人の農作業に一定期間(年間60日以上)従事していることが必要です。
 
【法人要件の確認】
 所管の農業委員会が要件を満たしているか確認します。農業生産法人は毎
年1回、事業状況等を農業委員会に報告する義務が生じます。また、農地
の権利移動は当事者が農業委員会の許可を得る必要があります。これらの
報告、許可申請は専門家(行政書士)の届出・申請代行をお勧めします。
役所や農業委員会等からの訂正指導への対応、または申請許可の遅滞等を
防ぐことにも繋がります。


補足:市町村「農業委員会」について:
 農業生産法人等、許可を受けようとする者の住所地にある市町村の区域内
に、対象の農地等がある場合は、当該農地等のある市町村「農業委員会」が
許可権限を有します。農業委員会は、その地域で営農等を行っている方が農業委員となって審査しています。地域によっては、農協関係者が委員となっている場合があります。
申請者は、適正で法令に沿った申請を行うのは当然ですが、地域の理解・協
力等を得ることも、大切な要素となってきます。

農業委員会をはじめ、農業に関する届出、申請等は、所管している役所・官
公署の機関が数多くあり、非情に分かり難く、具体的な手続きや方法が各地
域で異なることもあります。許認可業務の専門家(行政書士)を入れ、手続き等を進めることをお勧めします。

当事務所でも、事前相談をはじめ、上記1〜10の作成・手続き、申請代
行・運営フォロー、「認定農業者支援制度申請」、「第六次産業化(生産物
の地産地消、加工・販売の営業申請)」、「有機JAS制度申請」等も対応
しております。


このページの先頭へ

『介護・福祉等の制度活用ポイント』Q&A

Q14.「介護保険」の全体像と諸手続きは、どのようになっているのか?

A.介護保険制度は、被保険者が介護を必要とする状態になったときに、必要なサービスを受けることができる「公的社会保険制度」です。この制度は、一定の年齢に達した人が、自動的にサービスを受けられることではなく、介護サービスを希望する者からの申請によって、提供するかの判定に入り、認定(要介護、要介護支援)を受けた者が、設定された範囲内で、サービスを受ける制度です。介護保険は市区町村が保険者(制度を運営する主体)です。但し、適正に行われているかの監督官庁は、都道府県です。原則として、40歳以上の人が被保険者で、1号被保険者(65歳以上の者)・2号被保険者(40歳以上65歳未満の者*未満は基準の数値を含みません)に分かれています。
「介護サービス」を受ける上での認定は市区町村が行います。その要介護度に応じたケアプランを、介護支援専門員(ケア・マネージャー)がアセスメントして作成します。介護サービスの利用料は、原則として費用の1割を利用者が負担します(要介護度の区分に応じた限度額があります)。
市区町村から、介護サービスを受ける必要がないと判定された人は、要介護、要介護支援が受けられません。認定を受けた人でも、区分によってサービス内容が異なります。要介護の区分(1〜5まで)「介護給付」、要介護支援の区分(1〜2まで)は「予防給付」と分けられます。

《手続きは、どのようになっているのか》
介護サービスを受けるには、認定が必要です。認定を希望する本人、あるいは家族・親族、相談を受けた専門家(介護支援専門員、社会福祉士や介護福祉士、行政書士など)が市区町村の介護保険課にて、申請手続きを行います。申請後、行政側の担当者が申請した家庭やホーム等を訪問して、認定調査を実施します。尚、この過程で、希望者本人の主治医に意見書を求めて、1次判定分析が出されます。1次判定後、介護認定審査会による審査(2次判定という)を経て、区分の通知が出されます。この通知は、原則30日以内に本人に対して、行います。


『要介護』『要支援』の認定を受けてから、介護サービスを受けます。65歳以上は、1号被保険者。40歳から64歳で医療保険に加入している人と、その被扶養者が2号保険者となります。1号被保険者の人は認定判定後、サービスの提供を受けることができますが、2号被保険者は、特定疾病によって介護や支援が必要となった場合に限られます。そして、2号被保険者がサービスを受けるには、1号被保険者と同様、認定判定を受けます。

介護保険制度は、40歳〜64歳までの医療保険に加入している人及び65歳以上の人は、特別な手続きをしなくても自動的に住所地の保険者に加入することになっています。中には法令により、この条件に該当していても、介護保険の適用を受けないとされている人がいます。障害者総合支援法に規定されている「指定障害者支援施設」に入所している身体障がい者の一部及び「適用除外施設」に入所している人です。介護サービスは、居宅での介護支援を基本としていることから、この方々への利用需要が少ないとの考えと、それぞれの施設で生活援助など必要なサービスを提供しているなどの事情から、適用除外となっています。

認定判定区分の《要支援》とは:要支援とは、要支援状態にある人で、社会的支援を必要としている状態をいいます。具体的には、日常生活をする上で、基本的な動作(食事・排泄・入浴など)を行うとき、見守り・手助けなどが必要とする状態を指します。「要支援」と判定された人には、日常生活での手助けの機会を軽減する点と、それ以上の身心の悪化を防ぐ点から、介護サービスの提供を受けます。要支援は、予防介護が根底にあり、2区分(要支援1、要支援2)に分類されます。

認定判定区分の《要介護》とは:要介護とは、日常生活をする上で、必要となる基本的な動作へ、介護を必要とする状態をいいます。身心への手助けが常に必要な状態を指します。「要介護」は、介護が必要な状態の程度によって、5段階(1〜5)に分かれます。 要介護判定の際、1次判定で要介護状態でないとされても、1日の中で要介護状態が25分〜32分の申請者(被保険者)や、間接生活介助と機能訓練行為にて、手助けを1日の合計で10分以上必要となっている申請者は、要支援状態と判定され、予防介護での介護サービスを受けることが可能となります。介護や手助けに必要となれている日々の時間は、「要介護認定等 基準時間」と呼ばれ、1次判定の際、、推計されます(実際に受けられるサービス時間ではありません)。

「要介護認定等 基準時間」として計算される内容は、5つあります: 
1.直接生活介助、2.間接生活介助、3.問題行動関連介助、4.機能訓練関連行為、5.医療関連行為
※認知症高齢者の要支援・要介護の認定判定では、1次判定・2次判定の際に認知症高齢者の日常生活自立度という基準が用いられます。例えば、何らかの認知症を申請者の家族が感じているが、家庭内及び社会的にほぼ自立しているのであれば、ランクTとなります。日常生活に支障をきたすような症状や、行動・意思疎通の困難さが頻繁に見られる状態であれば、ランクWとなります。


Q15.「介護保険」の利用料や自己負担・上限などは?

A.「介護保険制度」の費用は、利用者となりうる被保険者と、市区町村・都道府県・国が負担しています。被保険者の保険料の割合は、介護サービス料の全額から利用者本人が負担する1割分を除いた残りの9割の半分で、残りの半分を国・都道府県・市区町村の機関が負担しています。被保険者は、介護保険での介護サービス等を無限に受けるのではなく、認定判定の区分ごとに支給限度額がありますので、その範囲内で介護サービス等を利用します。支給限度額を超えて、介護サービス等を利用した場合は、その超えた分は、全額自己負担となります。尚、低所得者等は、市区町村に申請することで一部負担金の軽減処置を受けることができます。 また、介護サービスの利用料が高額になってしまった場合等は、「高額介護サービス費」として、市区町村から払い戻しを受けることができます。


「介護保険制度」はサービスを提供するために、多くの財源が必要となっています。この中で、介護サービスを受けながら介護保険料を1年以上も支払っていない被保険者に対しては、一旦、介護サービス等の利用料を全額負担してもらい、申請によって利用料の保険給付分(9割)を、全額負担者に返還する処置が取られています。日々の介護サービスの提供を止めない運営がされています。この処置を「償還払い」といいます。注意点として、1年6ヶ月以上の滞納が続いた場合は、介護サービスを一旦止められ、9割の本来償還される分も滞納分に充当されます。このようになった場合は、介護保険を利用できなくなります(介護サービス等を受けるには、全額自己負担)。 被保険者(利用者)が滞納した保険料の支払い期間は、2年間となっており、それが過ぎると支払できなくなります。そして、滞納期間に応じた措置として、被保険者の自己負担分の1割を、3割にするなど負担が重くなることもあります。


Q16.「介護事業」の事業者とは? また、その事業申請手続きは?

A.「介護サービス」や「介護・福祉タクシー」、「訪問入浴サービス」、「施設」や「グループホーム」など、介護に関する事業は、様々な種類があります。介護事業を始めようと考えている方々は、種類や指定基準を把握することから始まります。


事業としての「介護」ですから、許認可を受けての開所となります。許認可申請での3要件(人的要件・物的要件・財産的要件)は、申請でクリアしなければならない必須事項ですが、開設後、経営への認識が高すぎることで、利用者から苦情が上がることや、職員の離職などにも心を配りつつ、運営を進めることが必要となります。
経営者は、共鳴できる経営理念を明確にして、職員が「活き活き」と「笑顔」で働く環境を整え、維持するように努めます。経営理念等は、許認可申請に直接関係ないと思われるかも知れませんが、ここもポイントです。経営者が利益優先のあまり、現場の不満や、職員の苦労を理解しない結果、職員がついて行けず、離職するケースが増加しています。開設前に、経営理念をしっかり考察することは、申請手続同様、重要な作業です。

《介護事業の申請手続と指定の流れ》
一般的には、申請を提出する都道府県と市区町村との事前協議を経た上で、必要な書類(要件を備えた書類も添付)を作成して、役所(所轄庁)の担当窓口で「指定申請書」を提出します。受付後、申請への審査が行われ、事業者として、人員(資格者)・設備・運営基準等を満たしていれば、指定(許可)がされます。尚、訪問リハビリステーションや介護療養型医療施設等は、指定(許可)を受けることが医療法人や社会福祉法人に限定されています。
指定申請時の主な書類:
1.指定申請書(名称・住所・連絡先・代表者氏名・事業の種類など記載)
2.事業所の指定に関する記載事項(管理者氏名・勤務体制表などの概要)
3.管理者の経歴書(職歴・申請に関する資格・資格取得年月日など記載)
4.事業所の平面図(利用方法・備品の配置図・相談スペースの位置など)
5.その他の必要書類(介護給付算定一覧表・事業所の資産を証する書類等)
1〜5は、一般的な指定申請での主な書類ですので、指定申請を行う所轄庁や種類等で、書類は増えます。申請前、特に注意する書類は、5の資産を証する書類です。資産目録・事業計画書・収支予定書・損害保険証書の写しなど、提出前に「資産・収支等、数値」に間違いがないか、専門家(行政書士・税理士等)の精査を受けることが大切です。

介護事業は、介護が必要となった人以外でも、利用するサービス形態があります。例えば、健康な被保険者が利用できる「高齢者向け住居」や「有料ホーム等の施設」などです。日々の介護が不可欠な被保険者であれば、サービス事業者を選択する際、状況に迫られて選り好みすることを控え、取り敢えず、依頼することも散見されますが、健康な被保険者は、どこの事業者を「終の棲家」とするかということを強く意識して、介護事業者をを選定しています。この需要と視点を事業者側は、しっかりと認識して、実直な職員、様々な設備やサービスと質を提供し、他との差別化を図るようになってきています。当事務所では、開設のお手伝いは勿論のこと、開設後も運営フォローを心掛けています。


Q17.「福祉サービス」の支援事業は? 尚、その制度とは?

A.「福祉」は、人が生活する上で大変重要な、日々の暮らしの中にあると思います。年少の子供、高齢者、障がい者、重度の疾病を抱えた方など、福祉という風土・考えや政策がなければ、困る人々が多くいます。この方々への支援・助成を「福祉サービス」といいます。
福祉サービスは、法律や所轄庁の施策などで、内容が細かく定められています。各省庁で行うもの、各自治体(都道府県・市区町村)で行うもの、など。官公署へ申請することで、各種法人(株式会社や合名・合資・合同会社、NPO法人など)が運営主体となって提供できるサービスもあります。
「福祉サービス」の支援事業を始めるにあたって大切なことは、「福祉を他人事に考えるのではく、ご自分の問題として関わる」ことです。近年、支援業者が増える傾向にありますが、需要と供給のバランスを考えたとき、需要に対して、まだ、供給が足りない状態です。事業者が増えることは、質の向上を考えると大変重要で有意義なことです。

福祉の施策は、4つに大別されます。
1.高齢者福祉 2.障がい者福祉 3.児童福祉 4.母子福祉 
この4つに大別された「社会政策」の一環として、社会福祉事業を第1種、第2種に分け、それぞれの福祉サービスが国や自治体、公的団体、許認可(指定)を経た事業者から、提供されています。
主な社会福祉事業「福祉サービス」:
第1種:
乳児院、母子生活支援施設、知的障害児施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、身体障害者更生施設、知的障害者福祉ホーム、婦人保護施設など
第2種:
生活困難者事業、盲導犬・介助犬・聴導犬等事業、高齢者交通料金助成事業、その他社会福祉事業、就労継続支援事業、知的障害者支援事業、母子家庭日常生活支援事業など

『障害者総合支援法』(平成24年6月施行)について:
平成24年6月、障害者自立支援法を改めて、「障害者総合支援法」(正式には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)が施行されました。旧法の様々な問題点を改める改正です。この改正で、治療方法がが確立していない特殊な疾病を原因とする障がい者も範囲に加えられ、制度の谷間にて、制度外扱いであった障がい者も福祉サービスにて、提供可能となり、適切な支援が、ようやく行えるようになりました。

《サービスを受ける利用者・負担について》
@サービス給付を受ける当事者は、
18歳以上の障害者(身体・知的・精神・発達障害の者)、難病患者(治療方法がが確立していない特殊な疾病に罹患している者)、18歳未満の障害児(身体・知的・精神・発達障害の児童)。
*障害程度の区分認定は、1日あたりの介護、家事援助などに必要とする時間などを推測し、下図の通りに区分して、認定判定します(1が一番軽く、5が一番重い)。区分判定をもとに、利用者のために支援や援助を行うケアプランをを作成して、利用者へのサービス提供がスタートします。



Aサービス給付の負担が、定率負担から応能負担
となりました。当初の制度として、サービスされた費用の一律1割負担とされ、障がいの重い方々は、多くのサービスを利用しますので、負担が掛かり過ぎるとの切実な批判が多数上がり、応能負担に改正されました。応能負担とは、「利用したサービス費用の額から、所得に応じて設定されている金額を差し引いた額」をいいます。尚、最大でも自己負担分は1割、食費・光熱費は実費負担。

B医療型入所施設や療養介護を利用する場合、医療費と食費が減免されます。対象者(要件)は、市区町村に居住所を有する低所得者です。20歳以上の入所者は、少なくとも2万5000円程度が、手元に残るように減免されます。医療型入所施設では、20歳未満でも適用されます。尚、障がい児の場合は要件はありません。 食費・光熱費は、入所施設で異なりますが、最低限のお金が手元にに残るように、サービス給付(補足)が行われます。


Q18.「福祉サービス」の支援事業者は? 申請手続きは?

A.「福祉サービス」の事業者は、指定要件(人的要件・物的要件・財産的要件)を満たすことで、サービス事業ができます。指定をを受けた事業者を「指定福祉サービス事業者」といいます。業態は、様々ありますので、知識・技能・人員・物的諸設備・資金などを勘案して、サービス種類を選定し、申請します。業態の構想を練る際には、専門家(行政書士等)へ、相談することから始めることをお勧めします。 

専門家との話合い・確認を済ませ、所轄庁(都道府県や市区町村)の担当部署へ事前の相談をして、申請書を提出します。
※事業指定での設備要件には、過度の負担とならないように、必要最小限の設備で良いとの配慮がされています。設備への基準を緩めることで、新規参入を促すことが背景にあります。但し、サービス業態によっては、訓練室・作業室を設け、更に、相談室を設置をする事業もあります(就労継続支援事業など)。この場合の相談室は、談話の漏洩を防ぐ観点から、部屋として独立しているか、もしくは、間仕切りが必要となります。

《開設する際の注意点として》
「人的要件」に『サービス管理者』の配置があります。サービス提供の内容と実施が適正に行われること目的としていることから、管理者は専任の者でなければなりません。それ以外の人員は、提供する業態別に設定要件となっています。 サービス管理者になるには、その業態の国家資格者であっても、「サービス管理責任者研修」の終了が必須要件となる場合があります。サービス管理責任者研修は、都道府県単位で行われています。
《サービス管理責任者の基本となる要件(業態によって若干異なります)》
障がい者の保険・医療・福祉・就労・教育現場での実務経験と、サービス管理者研修の終了が必要となります。要件の理由として、サービス管理者の仕事は障がいの特性や生活実態に関して、知識と経験が不可欠であり、個別支援プログラムの作成・評価が行える知識・技術が求められるからです。

指定申請時の主な書類:
1.指定申請書(名称・住所・連絡先・代表者氏名・事業の種類など記載)
2.事業所の指定に関する記載事項(管理者氏名・勤務体制表などの概要)
3.管理者の経歴書(職歴・申請に関する資格・資格取得年月日など記載)
4.事業所の平面図(利用方法・備品の配置図・相談スペースの位置など)
5.その他の必要書類(定款・登記事項証明・事業所の資産を証する書類等)
1〜5は、一般的な指定申請での主な書類です。社会福祉事業の「福祉サービス」は、株式会社やNPO法人等の法人でなければ、事業所として指定申請できないことを基本としていますので、法人や組織(就業規則等)に関する書類が追加されています。また、各業態によって指定申請書を含め、提出書類には、書類作成上での決まり事が細かく定められていますので、注意が必要です。


このページの先頭へ

『法的トラブル、予防への対処・対策』Q&A

Q19.「お金・金銭」を知り合いから貸し借りする際の、注意点の対策とは?

A.行政書士は、社会生活に関わる許認可や事業の支援、家庭や親族にまつわる法的支援など、日常生活の民事全般に関して、サポートを行い、「街の法律家」としての役目を果たしています。その中で、多いのが金銭の貸し借りに関する相談です。
お金を貸し借りすることを、「金銭消費貸借」といいます。金銭の貸し借りで、不安やトラブルの原因は、書面を交わしていない貸し借りです。
自分の先輩だから、親族だから、上司だから、額が少額だから、など、口約束で貸し借りした場合に起こりうる問題は、返済してもらえないとき、証拠がないことです。どのような相手であっても、債権債務を履行させるとき、何らかの証拠が必要です。
貸した人は相手に債権を持ち、借りた人は債務を負っています。この状況で、借りた人に返済を求めたとき、「もうちょっと待ってほしい」と言われるのは、まだ、マシで、借りたこと自体を否定されたら、貸した方は証拠が必要となります。「信用できる人だから、貸したのに・・」と思って貸しても金銭が絡むと、人は変わってきます。貸した方が素人であろうと、貸金業者であろうと、金銭を貸すときは、しっかりと回収できるかを考えます。
契約書や借用証、受領書、覚書などを作成して、万が一に備えることが、トラブル防止に繋がります。簡単な文面でも、「5W1H」で基本事項を記載・作成することが必要です。
1.WHAT(なにが、なにを)、2.WHEN(いつ、いつから、いつまで)
3.WHO(だれが、だれに、だれを、だれと)
4.WHERE(どこに、どこで、どこが、どんな場合に)
5.WHY(なぜ、どうして)、1.HOW(どんなふうに、どのようにした)

契約書・借用書や証拠(受領書、覚書など)があっても、訴訟・裁判になる要因として、書面内容の不明確性があります。明確に基本事項(5W1H)を記載することで、契約の履行を促し、紛争の防止を図ることが可能となります。契約書・借用書や覚書・承諾書・念書(これらの書類も一種の契約書と見なされます)は、権利義務に関する書類となり、法律上、拘束力をもつ約束であるといえます。
「契約自由の原則」「契約優位の原則」は、憲法の私的自治に由来する法原則で、適正な契約書は、当事者を拘束します。契約は、お互いが実行することによって、はじめてその有効性が確認されます。しかしながら、片方が約束を実行してくれなかった場合は、訴訟・裁判を起こしてでも強制的に、実行させなければいけないこともあります。そのとき、訴える側の原告は、証拠を示して、その権利の存在を証明する責任が伴います。これを「挙証責任」といいます(裁判の場合、証拠主義に則りますので、証拠を示せない場合は、敗訴となります)。

《貸し借りへの対処法@》
「金銭消費貸借契約書」や各種の「契約書」「借用証」を公正証書にすることで、公文書とし、強制執行力が認められる文書にします。但し、強制執行が認められるのは、金銭債権者だけです。金銭債権として、裁判所の判決と同様の効力があります。(裁判不要で、強制力を行使できる)
公正証書とは、公証人役場の公証人が作成します。最も間違いのない方法です。

《貸し借りへの対処法A》
金銭消費貸借を書面で交わした場合でも、金銭の回収が滞ったときは、まず、「内容証明郵便」を送り、自身の意思を明確に相手方へ表示することが大切です。貸した金銭の催促文として送るのであれば、文面に返済の期限を付け、その期限を経過した場合に取るべき行動内容も、簡潔に記載することで、相手を牽制しつつ、履行を促します。そして、内容証明郵便は、後日の有力な証拠となります。また、その貸金債権に時効が迫っている場合、一旦、時効が停止します。但し、相手に内容証明が届いてから、6カ月以内に裁判上の請求をしなければなりません。裁判上の請求とは、訴訟・差押え・仮差押え・仮処分・和解の申立てをいいます。
※内容証明郵便が届けられた際に、「受取拒絶」で受け取らない場合でも、相手への重要な意思表示であると、法律上は解釈されています。民法97条「意思表示の通知は、相手方に到達したとき効力を生じる」とあり、特殊郵便物である内容証明郵便を配達(交付)され、その時点で拒絶しても到達となります(この場合、相手は受取った方が得策です。裁判まで発展した場合、受け取らない姿勢は裁判官の心証を悪くします)。

《貸し借りへの対処法B》
相手方に返済の催促(内容証明郵便を出すことで意思をはっきり示し、証拠とした後)を行っても、一向に返済の状況が変わらない場合、簡易・迅速に返済請求する方法として、「支払督促の申立て」があります。
金銭等の給付を目的とする請求について、簡易裁判所(140万円を超える場合は、地方裁判所)に手続きする制度です。
債権者(貸した人)からの申立てによって、通常訴訟手続きによらず、債務者を審尋する手続きも省き、支払督促を発し、債権者に強制執行力を取得させる特別な簡易手続きです。この督促を「債務名義」といいます。督促が発せられた債務者(借りた人)は、届いた翌日から2週間以内に異議を申立てしない場合は、確定判決と同様の債務名義として、強制執行に移行できます。この際の強制執行の手段は、債務者の財産への差押えや競売です。この制度で注意しなければいけないことは、債権者が仮執行できるのに(債務者が2週間以内に異議申立てせずのに2週間経過)、その時より、30日以内にその申立てをしないときは、支払督促が失効する点です。権利行使ができるのに、放って置いた場合、手続きが全て無駄となってしまいますので、期限内に行動する必要があります。行政書士が書類作成のお手伝いが可能です。


Q20.「インターネット・ショッピング」での注意点と対策は?

A.インターネットでの売買で、特に注意が必要なのは、ネット上で購入する場合です。インターネット取引は、いざ、トラブルに巻き込まれた際、そのネット業者を特定し、商品の催告や交換、返金を求める場合のリスクを考える必要があります。業者とのネット・ショッピングで、商品を「代引き」で受け取り、その商品に不具合や欠陥があったとき、この問題をしっかりと対処頂ければトラブルとなりませんが、業者と連絡が取れない場合、困ったことになります。このリスクを回避するために、日頃から信頼あるネット・ショッピングを利用することと、初めて注文する場合は、ホームページ上で「特定商品取引に関する」記述・記載があるかを確認します。これは、特定商取引法で義務付けられているホームページ上で、最低限記載しなければならない内容をいいます。取引業者の名称等(正式名称・連絡先・代表名義・代金・商品の発送と引渡時期、返品に関する記載など)。
特定商取引法は、演劇・音楽・スポーツ・写真・絵画・美術工芸品・鑑賞観覧のチケット販売も含まれるので、「各種の観戦チケット」も対象となります。ネット販売にて、取引業者名称等の記載がない場合は、特定商取引法違反で処分・罰則対象となります。

定められた記載が見られない業者へは、注文をしない・控えた方が無難です。インターネット取引の場合、相手を特定して探し出すことに困難が伴い、場合によっては探し出せずに、泣き寝入りや警察へ相談する事態ともなります。
売り手として自分が関わる「インターネット・オークション」でも同様ですので、商品を出品する際(会員登録するとき)は、オークション・サイトの登録項目に、代金決済システムに関する預託などの項目を確認します。このシステムを採用しているサイトは、商品決済を売買時点で行い、まずは商品代金を立替えしますので、確実な入金が担保されています。このシステムを「エスクロールサービス」と呼びます。インターネット取引(個人と業者、個人間取引)のトラブルに備えたシステムを設けているかが、インターネット・ショッピングを利用する際のポイントになります。

《電子契約(インターネット契約)と一般の契約の違い》
民法では、離れた当事者間で契約の申込み・締結をする場合、承諾の意思表示が発せられたとき、契約が成立します(民法526条)。これを「発信主義」といいます。この承諾に必要な期間は、取り消し行為が制限されます(民法524条)。インターネット・ショッピングでCDを売買契約(注文成立で契約となります)した場合、「電子メール」の発信と受信で、相互間に債権債務が発生します。しかしながら、このような民法の原則を、インターネット取引では、修正して、承諾の意思表示が相手方に到達して成立としました。これを到達主義といいます。特別法である「電子契約法」で法定されていますので、インターネット取引の場合は、これが優先して適用されます。例えば、CDを注文した買い手側に、何らかの手違いで、「電子メール」が到達しなかった場合は、契約成立とならず、債権債務が発生しないこととなります。インターネット・ショッピングでは、この手違いや間違った注文を防止する対策として、注文画面に「確定」ボタンを設けて、予防処置を講じています。何度も確認画面が表示され、確定ボタンの「ボタン・クリック」を求めるのは、この対策のためです。画面に表示された確定ボタンをクリックした記録は、証拠となりますので、この対策を講じているインターネット取引は、サイト側(事業者)に落ち度がない限り、成立となります。1個の注文を10個と入力してしまい、最終的に画面に表示された「確定」ボタンをクリックした場合、事業者側に、落ち度がない限り、注文成立となりますので、よくよく注文内容・個数を確認することが必要です。


Q21.「クーリング・オフ」とは? その活用方法は?

A.マルチ商法、訪問販売、特定継続役務提供(エステ、各種の塾・教室、家庭教師、結婚紹介など)、業務提供誘引(内職商法、モニター商法)、電話勧誘(電話アポイントメント商法など)、宅建業の自ら販売主となる売買(レストランや喫茶店、ホテルのロビー、各種販促用に設置された案内所やテント)など、消費者が冷静に意思表示や判断できない状況・場所で、申込みや契約をした場合に、消費者が、一定期間であれば、無条件で一方的に契約を解除できる制度をいいます。※通信販売や店頭販売は原則として、クーリング・オフ適用除外です。また、申込者が商人や開業準備行為の一環として、申込みした場合も適用除外となります。



「クーリング・オフ」の期間は、申込書または、契約書のいずれか、早い方を受け取った日から計算します。尚、消費者が受け取った上記書面に記載内容の不備・記載漏れ等の内容不備や瑕疵(当初からの欠陥)があるときは、法定された所定の期間を経過しても「クーリング・オフ」できる場合があります。また、クーリング・オフの適用業態の業者より、クーリング・オフ出来ない旨、告げられるなど、妨害と見られる行為があった場合は、クーリング・オフ期間経過後でも、クーリング・オフが可能となります。

《クーリング・オフの手続きと方法》
(1)必ず書面:タイトル「通知書」で、行います。
   ハガキも可能(控えを残す)
(2)クーリング・オフ期間内に通知(発信)します。
(3)複数の業者が関わっている場合は、同時に通知します。
(4)「特定記録郵便」または「簡易書留郵便」で送付する。
 ※一連の書面はコピーを取り、5年間は保管する。


Q22.昨今、増加している「会員ビジネス」と呼ばれる販売形態とは?

A.近年、その販売形態に属した会員が、新しい会員を勧誘して、商品を売ることで勧誘した会員が「金品」を得る、『ニュービジネス』と称する商法が増加しています。この販売形態に必ず付随しているのが、勧誘された新しい会員が、更に新しい会員を勧誘すること。この勧誘において、商品が売れた場合に、勧誘し商品販売に成功した会員にマージン料が入る。そのマージン料が先に会員となった者ほど、多くの還元がある。 この仕組みは、法律で規制されている「無限連鎖講」に該当する恐れがあります。いわゆる、「ネズミ講」と呼ばれる違法行為です。  無限連鎖講とは:「金品を払う参加者が無限に増加する前提において、二人以上の倍率で増加する下位会員から徴収した金品を、上位会員に分配することで、その上位会員が自らが払った金品を上回る配当を受けることを目的とした団体をいいます。」
簡潔に言うと、何らかの商品を販売する団体(事業者・法人・販売所・事務所・クラブなどの会、その他組織的な集まりも含む)に、参加した人が、配当(マージン料など)を得るために、他の人を募り、金品を徴収(商品を販売して代金を得る)し、徴収した成果として数%のマージンも受取る。そして、この販売形態に連なる「元親」⇒「子」⇒「孫」と、下位に位置する会員(勧誘者)が、新たな会員を獲得して商品販売に成功した場合は、上位に位置する会員にも利益がマージン料として入る。自身が金品の販売に直接関わっていなくても、先に、この商法に参加している者に利益が還元される仕組みです。

最近、増加傾向にある『勧誘手法』と『要注意点』:
(1)インターネット:ホームページ開設記念や新規ネット注文などで募る。
(2)「特別会員」でなければ金品の徴収がなく、ネズミ講ではないと募る。
(3)債権や美術・工芸品だから、担保価値があり還元は違法でないと騙る。
(4)「会員特典」ばかりを強調して、違法性がないことを力説する勧誘。
(5)還元・分配システムの説明に、やや無理な計算があるが、説明がない。

「親会員」から「子・孫会員」へと会員が無制限に、ネズミ算的に増殖していく「システム」から名づけられた商法で「ネズミ講」と呼ばれますが、「特定商取引法」で定まった販売形態(Q16をご参照下さい)は違法ではありませんので、この事業形態とは、分けて対処する必要があります。

「ネズミ講」が違法と法定された問題に、「無制限で下位会員が増え、還元される利益も無限に増えていく。だから、傘下に入り会員となって、新たな会員を募ろう」と、単純計算でも分かる矛盾(成長限界の矛盾点)を、言葉巧みに騙す商法です。
常識的な計算では、配当(還元される)金額が、当初の出資金額(会員となる際に出資した分)より、多くなる(下位会員が増えることで)はずですが、現実問題として、無限に増え続けることは無いですから、当初の出資金を回収することが困難となります。この不自然さをはぐらかす・詐称することで勧誘する、この行為は「無限連鎖講」を取り締まる『無限連鎖の防止に関する法律』に抵触する行為です。尚、事業形態が海外に拠点があっても、日本で行為がされた場合は、違法となります。

この行為(違法な商行為)に関わった販売主、加入に加担した者、助長した者(商品を継続的に購入した者も含む)は、何人(外国人も含む)であっても、懲役または禁錮、もしくはこれらの併科に問われます。

 無限連鎖講(ネズミ講)に参加する者は、親族や友人、職場の同僚など、身近な方々を誘ったり、その方々を通して勧誘者を探す傾向があり、得てして人間関係に悪影響を及し、場合によっては、信頼関係や友人関係の亀裂・崩壊といった事態を招くことがあります。無限に新規会員が増え続ける手法はありませんので、信頼できる人の誘いがあっても、けっして誘いに乗らず、関わらないことが大切です。買っただけでも、その行為が、無限連鎖の助長と判断された場合は、罪に問われることがあります。
※販売主(事業者や親の会員)が、どのような呼称で販売しても、販売行為に不慣れな「子・孫」として、連鎖的な還元販売の会員となり、その影響で、更に当事者の関知しない勧誘が行われてトラブルに発展した場合は、責任が問われる問題も発生しています。(誰々の誘いだからと信用して勧誘に参加して、自分の名前が他の勧誘時に利用されるなど)
賢明なのは、これらの行為に誘われても一切関わらないことです。

また、勧誘して、金品の徴収の際に、勧誘商品に謳われている効用や成分が認められない場合は、虚偽・不当表示等の問題で、「不当景品類及び不当表示防止法」もしくは、「消費者基本法」等にも、勧誘者は抵触する可能性もあります。

会員となり、出資した出資分を回収できるだけの下位会員が、「新規で増加できる」「増加する」とは、常識として考え難いことを、常に意識することが大切です。

勧誘され判断に迷ったり、疑いを感じた場合は、隣接法律専門職者(弁護士、行政書士など)へ、ご相談することが大切です。


このページの先頭へ

『交通事故対応、後遺障害の手続・認定について』Q&A

Q23.遭遇したトラブルや交通事故を「話合い」で解決する『示談』とは?

A.「示談」とは、トラブルや事故の当事者間(加害者・被害者)での話合いによって、紛争を解決する方法で、法的には「和解契約」として効力が認められています。一般的には、話合いで決まった内容を「示談書」に記載して和解契約を結び、その書面を証拠する契約行為です。裁判所でも「和解」として扱われるケースが増えており、その有効性が認識されています。但し、示談をする前提として、被害者側から賠償金としての「示談金」を請求されますが、この賠償額が、常識的な価格なのか、示談金の算出根拠などを、確認することが必要です。

示談金の算出根拠の確認として:
(1)被害者が被った基本的な最低限の賠償額として適正なのか。
(2)物損被害の場合は、その物の評価額(販売価格ー減価償却)が適正か。
(3)被害者が被った損害以外の慰謝料(精神的被害)の妥当性
 ※加害者は、被害者への真摯なる謝罪と反省を持って対応することが必要

尚、法的妥当性が示談には不可欠ですから、専門家(弁護士、行政書士など)へ、示談書作成、損害賠償の算出、関係資料の調査、保険適用への申請・手続きなど、相談することが肝要です。依頼を受けた専門家は、示談書に証明として職名・氏名を記入して職印を押印します(法律職者の確認証明として法的効力が付与されます)。
※示談が成立したときは、当事者(関係者に含め)に一定の守秘義務が生じ、第三者への口外は示談契約に違反する場合もありますので、注意が必要です。また、一度、成立した示談は、原則として、その後、取り消し・やり直しが制限されます。尚、示談成立後、決められた示談金を加害者が支払わなかった場合は、原則として契約不履行に該当し、示談破棄となります(示談書の効力は無効となります:そもそも、この件は、違約条項として示談書に盛り込みます)。

示談後の被害者に出た治療費等の負担に関して:
一旦、示談(和解)した後は、「示談書」に示されたこと以外は、効力が及びません。また、そのときの被害(身体的・精神的・物損含め)に関しても、示談後の請求は、原則できません(紛争の蒸し返しを制限する趣旨があります)。交通事故等の被害では、後遺症のリスクも考え、加味して示談金を算出します。ただ、当事者間で早期に示談した場合は、その後、予定しない負担が被害者に発生することもあります。
裁判所は、「怪我が軽いものとして、間違って和解したのだから、重い怪我であれば和解しなかったのだから、和解:示談そのものが無効」と判例を下していますので、示談後の後遺症に関する治療費の請求が認められています。(「民法95条」間違い:錯誤での法律行為は無効とする。)



トラブルや事故などの解決方法として、示談がありますが、示談成立や金銭(示談金)によって被害が元通りになるのではありません。被害者や、それに巻き込まれた親族などは、納得がいかないと感じることも至極当然です。しかしながら、それによって失った被害の回復については、交通事故を含め、事故・被害の民事上の大半は、金銭と誠意・謝罪を基本に、解決するしか、方法がありません。また、示談の重要性は加害者の姿勢を判断する要素となり、刑事責任を問われる事件でも、示談成立が裁判官の心証を左右し、判決が下されています。

問題解決や示談成立までは、難解な部分もありますので、専門家を交え、対処することが大切です。


Q24.交通事故の「後遺障害」認定とは? 納得に向けての『認定方法』とは?

A.交通事故には遭遇し、人身に被害を被った際、適切な治療を行ったにもかかわらず、後遺障害が残り、それが将来において症状として、日常生活や仕事の支障となることがあります。このような状態を「後遺障害」と呼びます。
後遺障害は、その状態・程度によって、1級から14級まであります。後遺障害の「審査」は、その地域の自賠責調査事務所によって、行われます。この機関は、国が定めた機関ですが、審査は、自賠責保険を取扱い、被害者(もしくは交通事故を起こした当事者)が加入している保険会社(共済事業者)が取り揃えた証拠に基づいて申請し、審査が行われます(一般的な手続き)。

審査の証拠となる書類等には、「後遺障害診断書」「経過診断書」「診療報酬明細書」「日常生活や仕事への影響を齎している動作の写真・動画画像など」が用いられます。この証拠類を保険会社(共済事業者)が取り揃えることが一般的な流れとなっていますが、この方法では、後遺障害への不十分な補償と認定される可能性もあります。保険会社(共済事業者)は、認定申請で提出した証拠類を、原則として、後遺障害の当事者に開示する義務はなく、被害者側(当事者)に証拠内容が知らされないのが通常となっています。
保険会社(共済事業者)が申請(提出)した証拠類に、後遺障害の被害者(当事者)が抱える実態が反映されていない不十分な内容であった場合は、実態にそぐわない認定等級となることがあります。自賠責調査事務所は、提出された書類のみで審査判定しますので、このようなことも起こりえます。一度、判定されたものを、後日、覆すことは非常に難しくなります。

【後遺障害認定の「被害者請求」という方法】
「後遺障害認定」は、保険会社(共済事業者)に任せっきりにしないで、最低でも保険会社(共済事業者)が取り纏めた証拠類を、被害者側(当事者)に開示頂くように、保険会社(共済事業者)に要望するか、もしくは、適切な等級認定となる体制(専門家を交える)を取り、被害者救済の制度を利用することが大切です。 
被害者救済の観点から、制度として、後遺障害認定を保険会社(共済事業者)に任せずに、被害者側(当事者)が行う『被害者請求』という方法があります。証拠書類作成や収集を被害者側が行い、直接、自賠責保険調査事務所に提出・申請する方法です。

後遺障害の等級認定は、賠償額(補償額)に大きく影響します。
例えば、交通事故での被害請求において、後遺障害14級が認定された場合、加害者との示談前でも、75万円(慰謝料32万円+逸失利益43万円)が支払われます。当然ながら、認定等級が低ければ、これ以上の賠償はありません(元々、自賠責保険は高額な賠償額を補償した制度ではなく、加害者が任意保険に加入していない場合の被害者救済として、最低限の補償体制として法定されました)。

後遺障害の認定は、労災認定の「認定必携基準」に準拠することとされていますが、詳細な規定・基準がある訳ではありません。そのために、被害者救済の観点から、法整備が遅れていると指摘されています。


《後遺障害認定への手続き:一般的には2通りの手続きがあります》

*ご自身で請求する場合は、相手方損保(自賠責)の確認が必要ですの で、交通事故証明(警察署)を取得すると分かります。


【後遺障害認定の要件】

 後遺障害には「等級認定」と呼ばれる級数があり、この級数によって、賠償額が算定(決められている)されており、重要な意味を持っています。被害者側の慰謝料や逸失利益に大きく影響を及ぼします。ということは、同時に後遺障害認定を受けることで、賠償請求の根拠にもなっているとも言えます。例えば、膝の痛みと機能障害で14等級に認定された方は事例・判例で190万円の金銭賠償が認められています。

要件@:治療が終了した以降(症状固定日)も後遺症が残っていること。症状固定後からでないと後遺障害は認定されません。受傷の程度や治療経過でも個々に異なりますが、一般的には6カ月以上経過した時点で等級認定が決められます。この意味は、単に障害が残っているだけではなく、その障害が将来においても回復見込みのないものであることが必要です。

要件A:事故(交通等)による怪我(後遺症)に、相当の因果関係があることが不可欠です。例えば、事故に遭遇してから2〜3週間後に痛み出し病院に行ったとなれば、事故との因果関係が若干不明確と推測されますので、当事者には因果関係への立証作業が必要となります。このようなケースでは多くの事例で、因果関係が認められないとの理由で非該当となっています。

要件B:後遺症の存在が医学的見解から認められていること。医師の所見にて関節が損傷している、神経麻痺が麻痺しているなど、その後遺症状が医学的所見にて証明できることが必要です。

以上@〜Bの要件は、認定に不可欠との位置付けがされています。その中には認定されにくい症状も、実は存在します。事故前からの罹患症状や医師の診断がない、治癒率が高い、事故状況の検分で後遺症が出るとは考えにくいなど、後遺障害認定には非該当と判断される状況が何点かあります。主に視覚的に捉えることが難しい後遺障害に、その傾向が顕著です。例えば、神経痛などは証明が難しい部類に入ります。上肢・下肢等は見た目での判断やMRI等の画像検査で明白な証明ができますが、証明が難しい後遺症は認められてないのが実態としてあります。

認定されにくい後遺症状には、しっかりとした準備・手順が肝要です。傷病と症状に適合した適切な期間での治療を受診することが大前提となります。適切な治療を受けていても、認定が難しい症状に「むち打ち症状」があります。この症状は上記の@〜Bの要件が揃わない場合もあり、注意が必要です。事故後、早々に後遺障害に詳しい専門家(弁護士、行政書士*事件性のある場合は受任できません。弁護士法第72条関係)へ相談することをお勧めします。

【後遺障害認定へのポイント】
 通常は交通事故発生の際、加入している任意保険会社(損保)に連絡を入れ、対応をお願いします。保険会社には多くの事故報告が引っ切り無しに入電しており、全てにおいて迅速で的確な応対がされている訳ではありません。応対にも限界があり、不誠実な応対も実際問題として、多くの方が経験していることと思います。ここで注意する点は、応対よりも保険会社からの「損保算定」が事実に即しているか納得できるか押し付けの意見も入っているのではないか、など、しっかり確認することが肝要です。事故発生時は、事故に遭遇した精神的動揺と怪我による傷みで体力的に不安定な状態ですが、治療がひと段落した10日前後に損保からの打診がありますので、この間に一旦、専門家へ連絡を入れるなど、出来る限りの準備をすることが必要と思います。交通事故に遭遇した方々の中には、治療頂いている医師に協力をお願いする場合がありますが、治療に当たっている医師は他の患者さんを診察しながらの診療ですので、過度に頼るのは得策とは言えません。日々の患者さんの治療で手一杯であるのが医療現場の実情です。ここは法的な専門家を交えて、後遺障害認定への対応を進めた方が得策と考えます。主治医へお願いする診断書の内容に満足できない場合は、どの点が問題なのか、症状に詳しい専門家を同席させて修正をお願いすることが必要と思います。

 後遺症認定の自賠責保険では、実務上の要請や制約から140程度の種類、14段階の等級になっています。この公的な種類・等級が、労災保険や損害賠償請求の基本と位置付けされていますので、それに向けた準備、手続き、書類の整理と取得(用意)が大変重要となります。

《後遺障害認定:自賠法施行令の14等級の各等級別の保険金額基準》

第1級   保険金額
3000万円 
第8級  保険金額
819万円 
 第2級  2590万円  第9級  616万円
 第3級  2219万円  第10級  461万円
第4級 1889万円   第11級 331万円 
 第5級  1574万円  第12級  224万円
 第6級  1296万円  第13級  139万円
 第7級  1051万円  第14級  75万円

《後遺障害認定:自賠法施行令の14等級の各等級別の慰謝料金額基準》
第1級  慰謝料金額
1100万円 
第8級  慰謝料金額
324万円 
 第2級  958万円  第9級  245万円
 第3級  829万円  第10級  187万円
第4級 712万円   第11級 135万円 
 第5級  599万円  第12級 93万円
 第6級  498万円  第13級 57万円
 第7級 409万円  第14級  32万円

《後遺障害別等級表及び労働能力喪失率に関する保険金額表》
別表第一 (第二条関係)
等級 介護を要する後遺障害 保険金額 労働能力喪失率
第1級
1  神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2  胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4000万円 100/100
第2級
1  神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2  胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3000万円 100/100
備考
 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

別表第二 (第二条関係)
等級 後遺障害 保険金額 労働能力喪失率
第1級
1  両眼が失明したもの
2  咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3  両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4  両上肢の用を全廃したもの
5  両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6  両下肢の用を全廃したもの
3000万円 100/100
第2級
1  一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの
2  両眼の視力が0.02以下になつたもの
3  両上肢を腕関節以上で失つたもの
4  両下肢を足関節以上で失つたもの
2590万円 100/100
第3級
1  一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
2  咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3  神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4  胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5  両手の手指の全部を失つたもの
2219万円 100/100
第4級
1  両眼の視力が0.06以下になつたもの
2  咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3  両耳の聴力を全く失つたもの
4  一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5  一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6  両手の手指の全部の用を廃したもの
7  両足をリスフラン関節以上で失つたもの
1889万円 92/100
第5級
1  一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
2  神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3  胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4  一上肢を腕関節以上で失つたもの
5  一下肢を足関節以上で失つたもの
6  一上肢の用を全廃したもの
7  一下肢の用を全廃したもの
8  両足の足指の全部を失つたもの
1574万円 79/100
第6級
1  両眼の視力が0.1以下になつたもの
2  咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3  両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4  一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5  脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの
6  一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7  一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8  一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指を失つたもの
1296万円 67/100
第7級
1  一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの
2  両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3  一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4  神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5  胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6  一手のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を含み三以上の手指を失つたもの
7  一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの
8  一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9  一上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10  一下肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11  両足の足指の全部の用を廃したもの
12  女子の外貌に著しい醜状を残すもの
13  両側の睾丸を失つたもの
1051万円 56/100
第8級
1  一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの
2  脊柱に運動障害を残すもの
3  一手のおや指を含み二の手指を失つたもの
4  一手のおや指及びひとさし指又はおや指若しくはひとさし指を含む三以上の手指の用を廃したもの
5  一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
6  一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7  一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8  一上肢に仮関節を残すもの
9  一下肢に仮関節を残すもの
10  一足の足指の全部を失つたもの
11  脾臓又は一側の腎臓を失つたもの
819万円 45/100
第9級
1  両眼の視力が0.6以下になつたもの
2  一眼の視力が0.06以下になつたもの
3  両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4  両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5  両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
6  咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7  両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8  一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9  一耳の聴力を全く失つたもの
10  神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11  胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当に制限されるもの
12  一手のおや指を失つたもの、ひとさし指を含み二の手指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指を失つたもの
13  一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの
14  一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15  一足の足指の全部の用を廃したもの
16  生殖器に著しい障害を残すもの
616万円 35/100
第10級
1  一眼の視力が0.1以下になつたもの
2  咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
3  十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4  両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたものの
5  一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
6  一手のひとさし指を失つたもの又はおや指ひとさし指以外の二の手指を失つたもの
7  一手のおや指の用を廃したもの、ひとさし指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指の用を廃したもの
8  一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
9  一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10  一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11  一下肢の三大関節の一関節の機能に著しい障害を残すもの
461万円 27/100
第11級
1  両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2  両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3  一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4  十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5  両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6  一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7  脊柱に奇形を残すもの
8  一手のなか指又はくすり指を失つたもの
9  一手のひとさし指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の二の手指の用を廃したもの
10  一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
11  胸腹部臓器に障害を残すもの
331万円 20/100
第12級
1  一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2  一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3  七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4  一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5  鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい奇形を残すもの
6  一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7  一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8  長管骨に奇形を残すもの
9  一手のなか指又はくすり指の用を廃したもの
10  一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
11  一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
12  局部に頑固な神経症状を残すもの
13  男子の外貌に著しい醜状を残すもの
14  女子の外貌に醜状を残すもの
224万円 14/100
第13級
1  一眼の視力が0.6以下になつたもの
2  1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
3  両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
4  五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5  一手のこ指を失つたもの
6  一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
7  一手のひとさし指の指骨の一部を失つたもの
8  一手のひとさし指の末関節を屈伸することができなくなつたもの
9  一下肢を1センチメートル以上短縮したもの
10  一足の第三の足指以下の一又は二の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
11  一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
139万円 9/100
第14級
1  一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2  三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3  一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたものの
4  上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5  下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6  一手のこ指の用を廃したもの
7  一手のおや指及びひとさし指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
8  一手のおや指及びひとさし指以外の手指の末関節を屈伸することができなくなつたもの
9  一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
10  部に神経症状を残すもの
11  男子の外貌に醜状を残すもの
75万円 5/100

備考
1  視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。
 手指を失つたものとは、おや指は指関節、その他の手指は第一指関節以上を失つたものをいう。
 手指の用を廃したものとは、手指の末節の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは第一指関節(おや指にあつては、指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
 足指を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。
 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節の半分以上、その他の足指は末関節以上を失つたもの又は中足指節関節若しくは第一指関節(第一の足指にあつては、指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害とする。


 自賠責保険調査事務所においては、一定の要件(上記@〜B)が備わっていなければ「後遺障害」とはいえないと、判定します。法的な解釈にも影響を及ぼしているのが実情で、たとえ傷みが残っていても、認定されない限り、それ以降の治療費の請求が困難となっています。一度、症状を固定(症状を確定した日)し、後遺障害認定がされなかった場合は、その判定を撤回させることが大変難しくなります。症状固定は慎重に決めることが不可欠となります。自賠責保険調査事務所は、後遺障害の等級認定について、「将来も回復が見込めない、困難と認められる」ことを条件としています。この条件は、被害者の逸失利益(本来得られた利益が、事故によって逸した利益)の請求権にも影響を及ぼし、裁判所では5年以内分の請求しか認めていません。

 交通事故は、被害者本人だけではなく、家族にもマイナス要因を齎します。交通事故被害に遭遇して、後遺症や損害賠償請求への対策、慰謝料を含めた損害額の算定、自賠責保険による「後遺障害認定」「等級認定」、被害者側としての加害者側に対する損害賠償請求、自賠責への等級認定の異議申立ては、権利義務・事実証明に関する相談や書類作成は、行政書士業務となります。

《相手方に対して、損害賠償する上での法的責任について》
 交通事故の要因には様々な事故形態があり、その状況に適合した責任をしっかりと指摘することが必要となります。これらを総称して法律的責任と呼ばれます。これらの責任には許認可を受けて業務を行っている事業所に対する責任もあり、代表例では「運送契約責任」があります。バス、タクシー、鉄道等の公共交通機関などです。交通アクセス等で利用する乗客に対して、これらの事業者は安全に輸送する義務があり、生命・身体・財産等を侵害した場合は損害賠償責任が発生します。例えば、バスを利用中に運転の振動によって、影響を受けて転倒し、怪我を負ったケースでは、バス会社に対して損害賠償責任を認めています。運転手にも乗客の安全配慮につき過失があると認定されましたが、この裁判では主に「使用者責任」に重点を置き判示しています。
 「使用者責任」とは、民法第715条で法定されている不法行為の当事者だけではなく、その支配力を及ぼしている者(個人・法人・事業所・商店等)にも責任を負わせる法理をいいます。当事者に賠償する資力がない場合もあり得ますので、被害者保護、公平の観点から使用者にも責任を負担させる目的にも適います。
 使用者責任に並ぶ責任として「監督義務者責任」と呼ばれる法理があります。未成年者を監督する親権者等が、未成年者の起こした事故等につき、責任を負う場合をいいます。例えば、小学生が自転車に乗って歩行者に衝突した人身事故では、その小学生のご両親に監督義務者責任を認定しています。監督者責任も資力や判断能力の劣る者にだけ責任を負わせることで、被害者保護に悪影響を及ぼすことを補正しています。
 「工作物・営造物責任」と呼ばれる法理もあります。電車の踏切や遮断機、工事現場、電柱、橋梁、道路に空いた穴、落石、故障車両を放置したことによって起こった交通事故などには、工作物・営造物を管理する者(個人・法人・事業所・その工作物の所有者又は占有者など)にも責任を負わせる考えです。例えば、道路上に工事用の穴があり、その穴に対する適切な管理や補修が行われずに放置されている中で、自動車の車輪が落ちた事故は、その道路(市道)を管理する市に瑕疵(当初からの欠陥)あると認定し、賠償責任を課しています。

《相手方に対する「損害賠償の算定方法について》
 交通事故により他人の身体や権利、財産等に被害を及ぼした場合は、原則として「金銭賠償」での償いをしなければなりません。事故に遭遇していなければ得たであろう利益(給与や失われた時間等)、怪我や被害による将来に渡る苦痛や損失などが賠償請求の対象となります。後遺障害にて日常の介護等が必要になった場合も妥当な金額を加算して被害者側は主張することになります。他人の不幸に関して、心無い方は「お金目的だろう」と揶揄する場面もありますが、それは間違った中傷で、賠償請求での補填は被害者の当然の権利です。的確で法的に妥当な最高限度の賠償請求には、加害者側は誠意ある姿勢で賠償する義務があります。加害者側がこの請求を不当と考えて減額を希望する場合は、当然ながら減額の根拠を示す必要があります。

 賠償請求を権利・義務、事実証明として提示するには、賠償額の算定方法に則ることも必要となります。「賠償額の算定方式」は、加害者側の一方の責任を計算するだけでは足りず、被害者側の事故状況も算定することが不可欠です。被害者側にも過失が認められる場合は、「過失割合」も算定式に組み入れ計算します。一般的に「公平」「迅速」「被害者保護」の観点から、以下の計算式にて賠償額を算定します。

車両と歩行者、道路を横断中の歩行者など、事故状況を分けて考えつつ、道路交通法等の法令上では、どちらが過失割合が高いのか、などを考察します。因みに、道路交通法で横断歩道上の歩行者は強く保護されていますので、原則として、この状況下での事故では歩行者側の過失相殺はなされません。

任意保険(損保)では民法が優先され、原則として、所有権絶対主義・私的自治・過失責任が法理となり、事故当事者に落ち度(過失)がなければ、責任を負いません。この法理を賠償額に当て嵌めた場合、双方の過失割合に応じた減額が行われます。任意保険(損保)は民法を基準に作られたと言える運用方法が取られています。後遺障害認定での基本は、民法との関係では特別法に当たる「自動車損害賠償保障法:通称:自賠責法」が根拠規定となっています。この法律では民法に関する特則として、自賠責法第3条に「無過失責任」を法定しています。これは被害者側が損害賠償を算定する際に、自動車運行によって損害が発生したという事実のみを主張するだけで賠償責任が問えることになっています。任意保険と自賠責保険には、どちらも損害を保障する保険制度ですが、優先適用される法令等の違いによって、運用方法に違いがあります

過失割合の決め方について:
 過失割合は、基本となる過失割合率に則り決めていく方法が一般的です。加害者及び被害者に道交法違反等のルール遵守の状況を確認しつつ、事故発生報告書や警察署の検分を聞き、その内容によって、双方の当事者に割合を当て嵌めます。裁判での認定では、過去の判例や類似事件を基に判示しているのが通常です。事故に遭った被害者の車両が止まっているところに追突された場合は、考えた方としたら過失割合は0%ですが、駐停車禁止帯に止めていた場合は、0%にならないケースがあります。この場合は、道交法の違反を問われ、反則金と過失割合での賠償額の減額が予想されます。

《「損害賠償について、賠償義務が課せられる方とは》
 交通事故を起こした当事者は当然ながら賠償義務が発生します(民法709条:不法行為責任)。事故を起こした運転手等の使用者(支配下にある人物が起こした事故)にも、事故によって他人の身体、権利、財産等に損害を与えた場合は賠償義務が発生します(民法715条:使用者責任)。また、事故によって被害者もしくは加害者が亡くなった場合でも、被害者側の請求権が相続されることと、加害者側には、その相続人が賠償の責任を負うこととなります。事故車両への同乗者も加害者側に対して、賠償請求できますが、一般的には減額した賠償額の請求となります。

 これらの賠償には時効がありますので、注意が不可欠です。時効とは、一定の法定期間が過ぎた場合は、その請求権が消滅することをいいます。民法第709条に基づく損害賠償請求権の時効期間は、被害者が被害にあった事実と、加害者の両方を確知した時から3年間となっていますので、その間に、被害者側の主旨・主張を明確に示して、賠償請求することが肝要です。尚、事実や加害者に関係なく、事故発生後、20年で時効が成立する除斥期間もあります。因みに、自賠責法の時効は、事故の翌日から3年間。但し、死亡事故の場合は、死亡日から3年間。後遺障害事故は症状固定から3年間(*平成22年3月31日以前の事故は2年間)。時効中断には、任意保険会社へ「時効中断書」を提出し、その債務が承認された場合は、更に2年間時効が延長されます。

事故当事者(運転手など)が負う社会的責任:
@民事上の責任(謝罪や損害賠償、物損への賠償など)
A刑事上の責任(他人の生命や身体への刑事罰としての責任)
B行政処分(交通事故を起こしたペナルティとしての反則金や免停など)


 事故の結果、身体に後遺障症が残ってしまった場合は、その後遺症の状態・程度によって、将来の労働能力が減少したと判断します。健常者の労働能力を100%と設定した場合の減少についての法的な言い方は、「労働能力喪失率」といい、この率によって賠償額や補償額(自賠責や任意保険など)に違いを設けています。簡単にいうと、労働能力の減少割合に応じて、後遺症のために減少してしまった将来の収入相当額(逸失利益)を算定し、事故の相手方や自賠責事務所、または加入している任意保険会社に請求もしくは申請することができます。*任意保険の申請(書類作成)に関しては、任意保険約款に規定されているかが基準となりますので、ご相談・お問合わせの際は、約款をご用意頂ければ、より具体的にサポートができると思います。 

 被害者側から加害者側に対して、損害賠償請求する場合は、様々な事実について、その責任を立証する必要がありますので、この部分の事故調査、法的な権利・義務、事実証明などの全賠償額の算定など、必要な調査・手続き・関係書類の作成など、当事務所では専門的研鑽に努めつつ、実直にサポートしております。無料相談会などもご利用できますので、何なりとお問合せ下さい。

※専門家による事故対応は、「権利・義務、事実証明に関する書類作成(実地調査を含む)や契約書その他の書類を代理人として作成する業務、それに付随した相談業務」に該当します(行政書士法第1条の2、1条の3)。
現在の法令では、他人の依頼を受け、この業務(報酬を得て行う)を受任できる隣接法律専門職者は、弁護士(弁護士法第3条)と行政書士のみとなります。(行政書士は、書類作成・手続等の代理代行として、事件性の法律事務には関われませんが、法律上の効果を保全・明確にする事柄を処理する法律事務を取り扱っています)
但し、紛争性が明確(蓋然性)となっている場合は、弁護士法(弁護士法第3条、第72条関係)で制限されている業務領域に抵触する場合があります。その場合は、弁護士への依頼が必要となります。
具体的には、当該事故によって、当事者間にて、既に争い・疑義が発生しており、訴訟によらなければ解決ができない程度に具体的事情となっているケースです(法務省債権回収監督室〈サービサー法〉指針、日本弁護士連合会調査室編纂:条解弁護士法より)。
このようなケースでは、「法律事件での法律事務」としての対処が必要と考えられることから、当事務所では、適切な対処方法をご説明しています。



このページの先頭へ


『戸籍・附票の見方と活用について』Q&A

Q25.戸籍とは何なのか。その見方とは?

A.日本国籍がある日本人には、必ず戸籍があります。戸籍のある場所を本籍(本籍地)と言います。役所では、戸籍等の調製を管轄して、請求があれば証明書(戸籍謄本や抄本など)を発行します。請求は役所の窓口の他、郵便でも請求できます。
 戸籍に生存者が登録されているのが通常の戸籍簿と呼び、戸籍が他界で空になった場合は除籍(現在、1名の登録もない状態)となり、戸籍簿と呼ばず、除籍簿となります。
 戸籍には「謄本(とうほん)」「抄本(しょうほん)」と呼ばれるものがありますが、謄本は全部の写し、抄本とは一部の写しという意味です。これらは、原則、ご自身もしくは法的な関係者(尊属・卑属)であれば役所に請求し、取得することができますが、正当な理由のない他人は請求することができません。近年は特にプライバシー保護の観点から厳格に運用されています。依頼を受けた代理人(隣接法律専門家:弁護士・行政書士等)でも、請求理由を明確にして、専門職を証する資格証(書面含む)等を提示し、請求しています。
 日本国籍がある日本人は戸籍が調製されると説明しましたが、日本に居住する外国人も「外国人登録法」によって戸籍に代わる登録簿があり、戸籍簿や住民票の役目を担っています。現在は、住民基本台帳に統合されています。
 戸籍は、「出生」「婚姻」「離婚」「親子」「相続」「死亡及び失踪」等の確認や証明に欠かすことのできないもので、個人を特定する重要なものとなります。

【戸籍の記載事項】
1 氏名 2 生年月日 3 戸籍に入った原因及び年月日
4 実父母の氏名及び実父母との続柄
5 養子である場合は、養親の氏名及び養親との続柄
6 夫婦について、夫または妻である旨
7 他の戸籍から入籍した人の戸籍の表示
8 その他法務省令で定める事項  以上の8項目

【戸籍の見方】
 戸籍簿をあまり難しく捉える必要はありませんが、基本的な「見方」は知っておく必要があると思います。戸籍の記載内容は、本籍地の他、個人ごとの氏名、出生年月日、入籍した年月日、実父母の氏名と続柄(つづきがら):長男や長女など、夫婦の続柄、他の戸籍からの入籍、その他法務省令で定める内容となります。要するに「出生から死亡までの個々の歴史」が調製されています。

 戸籍は「本籍地」を管轄する市区町村ごとに戸籍簿で調製され、個人や遺族には届出義務(出生・結婚・死亡などを届出期間に行う)があります。例えば、不動産や預貯金を相続する際は、本籍地の役所にて「戸籍謄本」を取得する必要があります。この証明書が添付されない限り、不動産や預貯金の権利(名義変更)が不確かなため、手続きができない、受理されないこととなります(銀行等も引出しを含め、名義変更を受理していない)。
 戸籍の届出や交付申請を行う場合は、備え付けの「申請書」に住民登録した現住所(住民票の住所)を記入することになっています。ただ、戸籍には住所を記入する欄がないことから、本籍地と住所が一致しないこともあります。これを補うように戸籍にはご自身の住所の移転を記録した「附票」が付けられています。これが「附票」と呼ばれるものです。

【戸籍記載の順序】
 戸籍の個人記載は、戸籍筆頭者、配偶者、子の順となります。複数の子がいる場合は、原則として出生順となります。
例外:養子や非嫡出子(ひちゃくしゅつし)を入籍させる場合は、出生順ではなく、戸籍の最後に記載・調製されます。例えば、兄弟姉妹がいる人が離婚して、親の戸籍に復籍した場合は、弟や妹の後に記載・調製されることとなっています。

【新しく戸籍が作られる原因】
 戸籍は、現在の本籍地、転籍地の住所地を管轄する市区町村の役場で調製されています。戸籍が様々な原因で「新しく」なる場合があります。
 その原因は:
1 結婚したとき(戸籍の筆頭者の夫または妻の姓とした場合を除く)
2 外国人と結婚したとき(日本人のみ戸籍の調製となる)
3 戸籍筆頭者とその配偶者以外の人が、同姓の子供や養子を持ったとき
4 離婚や離縁した人が新しく戸籍編製を申請したとき
5 元の戸籍が除籍されていたとき
6 養子縁組等で他の戸籍に入る人に配偶者がいるとき(この場合は夫婦の新戸籍を編製する)
7 特別養子縁組するとき(この場合は養子の新戸籍を編製)
8 裁判所等から、性別取扱いの変更審判を受け確定したとき
9 分籍したとき(分籍とは、現在有効な戸籍から分離独立して、新しく単独の戸籍を調製することを言います)
10他の市区町村から転籍したとき
11戸籍のない人(無戸籍者)が新たに戸籍を作るとき
12戸籍滅失やその虞れがあり、再製したとき
13戸籍を改製したときなど
14その他「戸籍法」施行規則に定める事項


 

Q26.戸籍の活用方法について?

A.戸籍という制度は世界的に実施されている制度ではありません。日本独特の制度となります。日本の戸籍制度の始まりは、明治5年の「壬申戸籍(じんしんこせき)」です。明治5年が、さる年(壬)であったことから壬申戸籍と呼ばれる所以と言われています。この壬申戸籍は、江戸時代からある「人別帳」「宗門帳」を踏襲し、作られたとされています。現在の戸籍簿には筆頭者の記載がありますが、これは家族制度が考えの主体であった江戸時代の名残と言われます。因みに海外(英米)では、住所地法制度が主流で運用されており、日本の戸籍とは仕組みが異なると言われています。

 戸籍には「改製原戸籍(かいせいげんこせき、または、かいせいはらこせき)」と呼ばれる新戸籍に改製される以前の元の戸籍があります。相続等の手続きのため、役所に戸籍謄本を請求した際、「現戸籍」と「はら戸籍:改製原戸籍の通称」のどちらが必要なのか。役所の担当者から聞かれる場合があります。「現戸籍」とは現在、有効な戸籍で、「はら戸籍」とは、除籍の一種で、元の戸籍簿を言います。

【戸籍謄本=全部事項証明書】
 戸籍に載っている全員の記載事項の写し(コピー)が戸籍謄本となり、全部事項証明書です。一部の個人事項を記載した写し(コピー)が抄本(しょうほん)となり、一部事項証明書になります。

戸籍謄本の必要な場面:
本籍地以外の市区町村に届け出る婚姻届、離婚届、転籍届、相続手続など。
戸籍抄本の必要な場面:
パスポート申請、国家資格等の登録時など。
*戸籍は大切な個人情報(親族や姻族にも関わる)ですので、各種の手 続き、確認、証明等に、戸籍抄本で済むのであれば、抄本(個々の個 人のみが記載された写し)を利用するように心掛けることで、情報漏 洩の予防ともなります。

【戸籍謄本等の手数料】
戸籍謄本(全部事項証明書):450円
戸籍抄本(一部事項証明書):450円
除籍謄本(除籍全部事項証明書):750円
除籍抄本(除籍一部事項証明書):750円
改製原戸籍謄本:750円
改製原戸籍抄本:750円
その他、戸籍の附票、戸籍受理証明書、不在籍証明書、350円等
(本籍地のある市区町村で料金が異なる場合あり)

【戸籍に関する届出義務者への罰則】
「戸籍法」には、届出の必要と義務がある人が、届出期間内に届出を遅滞もしくは怠った場合の罰則があります。例えば、正当な理由がないのに、父母(届出義務者)が子の出生の届出をしない場合は、5万円の過料(あやまちりょう)に処せられます。また、出生した子供の名前が決まらないから届出出来なかったとの言い訳は通用しません。この場合は、名前未定で出生届を出すこととなります。名前が決まったら、「追完届」を提出し、戸籍簿の調製を申請します。尚、この場合は、後で、調製を願い出ることと同様な扱いで、反映されるまで時間が掛かります。

【遺産相続に必要な戸籍の範囲】
 相続には、「改正原戸籍」や「除籍謄本」が必要となります。では、その範囲は、どこまで記載されていなければならないのか? ご自身で戸籍謄本等を請求、取得する場合は、二度手間とならないように、必要な範囲を明確にして手続きを行うことが煩雑さの軽減となります。
 
明確にすること:
 @ 誰が相続人か。 A 他の相続人はいるのか。など。 
@Aを明確にするには、「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍」の範囲が記載されている戸籍謄本(全部事項証明書)が必要となります。親族や兄弟姉妹が亡くなった際は、必ず相続が発生します。この場合は、戸籍謄本が必要となります。日本の戸籍制度は大変、優秀な管理・調製がされており、人の身上や親族関係等をほぼ完全な体系で網羅しています。亡くなった親族等の生涯を戸籍から確認し、相続人等を明確にすることで、相続での権利関係を確定します。
 兄弟姉妹の相続では、尊属(自分より上の人)・卑属(自分より下の人)の所謂、直系に繋がる家系の人以外にも、亡くなった人の親の全生涯の戸籍簿も揃える必要があります。また、亡くなった人の父母に離婚歴や婚外子(未婚の子供)の認知経歴があった場合も、相続関係で重要となりますので、揃えることが不可欠となります。それから、亡くなった人の母親に離婚歴がある場合は、結婚・離婚のたびに戸籍が異動することとなりますので、この辺も揃える必要があります。古い戸籍は、文字や記載が分かり難く、読めないこともあります(この場合は、隣接法律専門家に依頼することをお勧めします。当事務所でも対応しています)。

【結婚していない男女間⇒生まれた子の戸籍は?】
 戸籍は入籍の原因を記載しますので、婚姻届や離婚届、養子縁組により入籍した場合は、項目は「入籍事由がなく」、以下のような記載となります。 例えば、戸籍筆頭者でない妻が離婚し、未成年の子供の親権者になった場合は、その子供を妻の戸籍に入れる際は、子供の姓名(氏)の変更の許可後、入籍届を提出します。役所で受理する戸籍事由は、「母の氏を称する入籍」と記載・調製されます。子供が生まれた際は、出生届を提出しますが、婚姻している正式な夫婦間の子供(嫡出子:ちゃくしゅつし)の戸籍には、このような項目はありません。
正式な夫婦以外の子供(非嫡出子:ひちゃくしゅつし)は、原則として母親の戸籍に入りますので、その身分事項に「子の出生」という記載及び入籍事由は「子の出生届出」と調製されます。



このページの先頭へ


『高齢者、障がい者の金銭・財産管理について』Q&A

Q27.高齢者、障がい者の方々の「金銭・財産管理」での問題点と対策は?

A.高齢者や障がい者が信頼する身内を失った場合、金銭や資産をどのように守るか、切実な課題となっています。高齢者が高齢者を介護する「老々介護」にも多くの不安が潜んでいます。「金銭・資産管理」は、その中でも日々の暮らしに影響する重要な課題です。一人暮らしの高齢者や障がい者が、近くに信頼できる身内や縁故者(療養看護や身辺の世話をしてくれる人)がいない場合は、社会福祉協議会や地域の民生委員等へ頼むこともできますが、、対応が役所的であったり、十分でなかったりと、不安解消に至っていない状況があります。
今後の不安を少しでも軽減するために、ご自分の金銭・財産管理を他人に頼みたいと考えた場合、どうすればいいのか? どのような委託・管理方法があるのか? 非常に迷うことになります。
心身の衰えなど、健康面の不安に対して、あらかじめ対策を講じておけば、いくらかでも不安解消に繋がると思います。「金銭や財産管理」の対策として、以下のような方法・種類があります。

《金銭・財産管理の方策と種類》
1.『信託』
信託とは、他者を信じて託すことで、「信託契約」を締結して行います。委託者(金銭・財産管理を依頼する人)と、受託者(金銭・財産管理を受け譲り、運用・管理を依頼された人)、受益者(利益を受ける人)間で、契約条項と責任範囲等を取決めて、信託します。受益者に委託者自身も、第三者もなれます。まずは、委託者は「信託」の範囲(金銭や不動産など)や受託者の責任等を明確にして、信託の内容を決めます。内容は違法性がない限り、自由に定めることができます。
例えば、ご自分(委託者)や家族などが月々の生活費を受け取ることを内容とすることや、信託の受益者、信託の期間、信託財産の管理運用など。 契約締結で、信託財産の管理処分権は、受託者に移転します。受託者は、委託者の信託の目的を厳格に守り、信託財産の管理・運用を図りつつ、受益者へ信託利益を交付します

委託者について:
委託者は、信託契約によって、ご自分の財産を受託者へ引き渡すことになります。引渡しても、様々な権利を持っています。契約後でも、事情変更が生じた場合は、運用方法を現在の事情に変更するように、請求権を保持しています。

受託者について:
受託者は、委託者と信託契約を締結し、信託の目的に添って信託財産を運用・管理あるいは処分します。受託者には、法律上、「善管注意義務=その事務を行う上、その地位にて通常要求される注意を尽くすこと」、「忠実義務=受益者の利益のために、忠実に義務を遂行すること」が課せられます。受託者の過度な事務負担を考慮して、一部の事務を第三者に委託することが認められています。
※「信託法」での信託には、受託者の資格制限があります。未成年者・成年被後見人(家庭裁判所にて後見開始の審判を受けた人)・被保佐人(家庭裁判所にて保佐開始の審判を受けた人)は、受託者になれません。また、受託者が信託を生業とするような、反復・継続の信託業を行う場合は、「信託業法」が適用されますので、許認可や営業保証金を供託しなければなりません。

受益者について:
受益者は、原則、誰でもなれます。委託者も受益者となれます。ご自分の老後の暮らしを考え、ご自分を受益者とすることで安心して暮らすことが可能となります。原則として、信託契約後、受益者を変更することはできません。また、受益者は、委託者に認められた権利と、受託者を監督する権利を持ちます。
受託者受益者を兼任することはできません。「信託法」にて、受託者(委託を受ける人)が受託者自身の利益を図るための行動を、原則禁止しているからです。但し、受託者Aさん、受益者がAさんとBさんというように、受益者が複数いて、そのうちの一方が受益者という契約は可能とされています。この体制の信託契約であれば、受託者は、自分以外の受益者の利益を守る運営・管理をしなければならず、信託の目的に適うからです。因みに、受託者が複数、受益者が一人という上記とは逆の体制は、認めれれません。この体制では結局、受託者と受益者が同一人物で利益の運営・管理となるからです。

信託業を行う「信託銀行」ついて:
銀行等の金融機関は、信託業の許認可をうけ、信託業の代理業や信託受益権の売買を行います。このような銀行を「信託銀行」といいます。通常の銀行でも信託業の許認可を受けている銀行があります。信託銀行の信託業務は、信託法と信託業法に則り、委託者と信託契約を締結して、他人の財産を自己(信託銀行)の名義で預かり、自己財産と分別管理して、財産の運用・管理を行っています。信託する財産の種類は、銀行預金と同様の金銭信託、有価証券信託、年金資産信託、不動産資産信託や不動産投資信託など。


2.『成年後見制度』『任意後見制度』での活用
「成年後見制度」は、未成年後見とも、判断能力が乏しい方々を保護して、経済的な不利益を受けることがないように後見人を付け、暮らしを支援、支える制度です。成年後見制度を利用する被後見人(家庭裁判所から、後見開始の審判を受けた人)が、高額な商品を買わされた場合は、その売買契約を取り消すことができます。但し、日用品の購入は取り消せません。判断能力の不十分な人を法律で助けつつ、本人の意思を尊重する柔軟な考えと、日用品の取り消しを規定した場合の弊害(お店が商品を売ってくれなくなる)の防止が理由にあります。
この制度が適正に運用される必要性から、家庭裁判所が、個々の申立てに対して決定します。後見人は、原則として、弁護士、司法書士、行政書士等の隣接法律専門職者が、家庭裁判所より選任されます。近年は、各自治体(主に市区町村の役所)が市民後見人の育成を進め、ある一定の能力と人格の高潔さで、家庭裁判所により選任されるケースも出ています。
この制度は、制限行為能力者(未成年・成年・保佐・補助)として、家庭裁判所から審判を受けた人に対する支援制度ですが、後見人は複数選任も可能で、権利・金銭・財産の事務系を支える後見人(隣接法律専門職者)と、身体を含め身の回りを支える後見人(地域の社会福祉協議会や社会福祉士・介護福祉士など)と、それぞれの専門分野に精通した後見人の体制も、状況によって家庭裁判所から決定されます。更に、適正化を確保するために、後見人を監督する後見監督人がおかれる場合もあります。
この制度の主旨は、判断能力が不十分な人の権利擁護と財産管理、身上監護することで、地域や社会で共に共生していく、ノーマライゼーションの考えが基本にあります。

「任意後見制度」は、任意後見契約によって行う後見制度で、将来のご自分が衰えた際の備えとして、予め契約を締結しておきます。契約後、本人が判断能力の低下など、後見が必要となったときに、家庭裁判所への申立て・後見決定で、はじめて契約の効力が発生します。この際に、後見人を監督する後見監督人のみを家庭裁判所が選任します(任意後見制度では、家庭裁判所が選任するのは、原則として、後見監督人ですので、後見契約の当事者が資格要件に適合する人を、任意に選ぶことができます。)。
契約時に定められた後見人が、後見事務等を行っていきます。この際に定める後見人の資格等も、原則として、隣接法律専門職者が務めるように、指針が示されています。あくまでも指針ですので、後見人の適正に適う者であれば、複数選任や予備の後見人も選任できます。近年は、財産系事務の後見人と、日々の暮らしや福祉面を支える後見人など、分けて後見人を定めるケースが見られます。また、公序良俗に違反しない限り、後見内容の自由性があり、ご本人の要望を具体的に反映させることができます。

家庭裁判所が関与してして選任する「任意後見監督人」には、役目として、任意後見人の監督と、財産への状況確認、任意後見人が不適任であると判断した際の家庭裁判所への解任申立て、任意後見人が職務を遂行できなくなった場合の代理権が付与されます。尚、任意後見人への重要な監督があることから、勝手に辞任できません。また、任意後見監督人が破産した場合や任意後見人と利害が一致する状況となった場合は、その地位を失います。

「任意後見」が開始されるまでのフォローについて:
任意後見は、契約締結後、ご本人が判断能力等で必要とされるまでは、開始されませんので、その間の不安を支える体制として「見守り契約」という契約があります。任意後見契約を締結する前に、取り敢えず、「見守り契約」を交わして、任意後見契約の後見人として想定している方の適正を判断する上でも、有用性があります。見守り契約は、書式や内容を自由に設定できます。一般的な内容は、ご本人に定期的に連絡を取り、生活での不安要素や健康状態を把握して、見守って支えることです。ご本人の負担とならないように、干渉や訪問頻度に配慮して行っていきます。依頼する人への報酬が発生しましすが、適正で常識的な報酬額が、この契約でも求められます。少額の負担で、日々の暮らしの安心安全に繋がる方法といえます。







「成年後見制度」「任意後見制度」は、本人の事務行為や日々の暮らしを補う制度で、本人の権利と尊厳を守り、不測の損害を防止することを目的に定められた制度で、家庭裁判所の関与により確実性が担保されています。

当事務所では、任意後見人の受任を含め、成年後見人の申請等の相談、契約書作成・証明等、この制度への支援を行っています。


このページの先頭へ

『生命保険や損害保険の仕組み・活用ポイント』Q&A

Q28.「生命保険」の諸手続きと、上手な選定方法は?

A.生命保険は、生命や傷病に関わる損失を保障することを主目的に、被保険者(保険契約を求める顧客側)が、保険者(生保会社や生命共済を受ける事業者側)へ保険金等を請求し、保険者が保険金等を支払うことを約束する契約をいいます。(原則として、保険金の請求は、支払事由発生日の翌日から起算して、3年を経過した時、時効に掛かり、被保険者側の請求権は消滅します)
契約である以上は、お互いに債権債務を伴うこととなります。被保険者は、契約事項(約款や細則・規定など)を順守しつつ、保険料を期限まで納付します。保険者側は、法令等を厳守し、保険金等の適切な支払を果たすべく、公平かつ正確な運営を行う義務が発生します。生保や共済等を監督する「金融庁」への届出及び法令指針へ体制整備も事業者側に求められます。尚、生命保険会社等では、貯蓄や老後の保障といった「貯蓄積立保険」、「個人年金保険」も扱っています。これも生命保険に含まれます。

基本的な保険の種類:
「死亡保険金」、「生存保険=(満期時に生存している際、支払われる)」、
「定期保険=(掛け捨て型と呼ばれる保険で、一定期間内の死亡に給付)」、
「終身保険=(保険期間を定めず、生涯に渡って保障される保険)」、
「養老保険=(保険期間内と、死亡した際に保険金が支払われる保険で、定期保険よりより割高な保険料がが設定されている。貯蓄型と呼ばれる。)」、
「アカウント型保険=(新しいタイプの保険で、定期保険の一部を積立型に充当して、終身保険もしくは年金型に移行するタイプ)」、「子ども保険=(教育過程での入学祝いや教育補助金の給付)」、「個人年金保険=(保険料を積立て、その原資を元として年金を受取る)」、「変額保険=(株式や債券の投資・運用の成果で受取る金額が変動タイプ)」など。様々な用途に対応した保険商品があるが、多くは死亡保険、生存保険等の金額や期間が組み合されています。これらに付属した特約に、「医療特約=(けがや病気が原因で入院した際に、所定の金額が受け取れる)」や、「介護保険特約=(介護の必要が発生したときに、給付金を受取る)」などが代表例として設定されています。

《保険の選定、契約のポイント》
1)保険を選ぶ理由を明確にする。
保険代理店や営業マンに勧められて、選ぶのではなく、将来の備えや万が一の保険ですから、理由と月々の負担可能額、家庭内での計画を明確にして、保険を選ぶことです。保険の種類が多種多様ですので、選定するのも一苦労ですが、理由や負担金額、計画を顧客(被保険者)の方から事業者に伝えることで、希望にあった保険選定が可能となります。負担金額は、継続できる金額が肝要ですので、事前に計算等して自己算定するようにしましょう。 このときの負担額に関する考え方は、必要経費と捉えることです。掛け捨てだと戻ってこないから、損しないように掛け金を抑えることだけで、保険内容を選定した場合は、いざ、保険金が必要な場面に、必要な給付額とならないという事態もあり得ますので、要注意です。日常生活に不可欠な食費や光熱費と同様と考え、保障面の充実に比重をかけつつ、家計経費とのバランスを図ること。

2)複雑な保険内容に翻弄されずに、主目的の保険を選定する。
多種多様な保険と特約によって、非常に分かり難い商品となった現在の保険や共済ですが、被保険者の主目的を基軸に保険商品を選ぶこと。一家の大黒柱である父親には、死亡保障をまずは選定して、医療特約を付ける。家族には、医療保障をまずは選定して、死亡保障は低めの金額保障を付けるなど。主目的を明確にすることで、「何のために、誰のために、どんな時に」が、分かり易くなります。尚、主目的をはっきりさせることで、事業者(保険者)の営業担当者も、その希望に添うようにプランニングしますので、選定を迅速に行うことができます。また、主目的をはっきり告げているのに、いろいろと特約を付けたがる担当者や保険プランに知識不足・説明不備など、不安を感じた場合は、その場で決めずに、仕切り直しや事業者選びを、再度、行うことをお勧めします。

3)保険設計での選定内容を複数の事業者に見積りを依頼する。
知り合いが担当している保険者だからと、割高な金額設定で契約した後、同様の他事業者プランで、割安な金額(負担額)を知った場合は、非常に複雑な気持ちになることがあります。どの保険会社でも、基本的に同様の保険を商品として扱っている以上、金額面の差が発生します。最初から、複数の事業者へ見積り依頼することで、価格面での高低差が解ります。その過程を経た上で、どこに決めるかを判断する。金額で決める、担当者の人柄で決める等々、多くの選択肢を吟味・チェックすることで、納得のいく保険契約が可能となります。

4)保険事業会社・共済事業者の母体をチェックして、安全性を図る。
保険事業会社や共済事業者が破綻しても、保険契約者は「保険契約者保護機構」によって保護されていますので、保障がありますが、給付額が減らされる可能性があります。契約する前には、経営状況を様々な観点からチェックすることが、リスクヘッジとなります。チェック項目は、「格付け会社」が発表しているランク付けと、各保険事業者が毎年発表している「ソルベンシーマージン比率」が経営動向の参考に有用です。「格付け」は保険金の支払い余力をランク分けしたもの。「ソルベンシーマージン比率」とは、将来発生する保険金支払い能力を財務的に数値化した比率です。数値判断は、200%あれば、まずは安心とされています(数値が高い程、優良となります)。

【保険に掛かる税金対策のポイント】
生命保険を受取った場合は、税金が発生します。
例えば、夫が契約者(被保険者)で受取人が妻の場合は、相続税の対象ではあるが、軽減税率制度が適用できるため、生命保険金以外の財産が無い場合は、税金は掛かりません。しかしながら、妻が契約者で、かつ、受取人の場合は、所得税と住民税の対象となり、税金が発生します。また、妻が契約者で受取人を子にしている場合は、贈与税の対象となります。 保険事業会社等の担当者に税金知識が不足している場合は、税理士やファイナンシャルプランナー、行政書士などに相談するをお勧めします。

「年金保険」でも、税金が発生します。例えば、夫が契約者で、受取人が妻の場合に、年金支払いが始まった際は、夫から妻への贈与として多額の贈与税が掛かります。注意する点は、実収入の無い妻が、夫の収入から、保険料を納めていた場合も贈与に該当するおそれがあります。
これを回避する対策として、保険料に相当するお金を夫から妻へ定期的に贈与しておき、その証拠を残すこと。具体的には、まず契約者と受取人を同じにすること。そして、もし妻が契約者なら、保険料の引き落としは妻の口座からにし、保険料相当分(あるいはそれ以上)を夫の口座から振り込んでもらうようにすることです。この金額が年間110万円以下なら贈与税は掛からず、かつ、夫から妻への正式な贈与として認められます。この方法は、あくまでも税務署の判断となりますので、証拠を公的な証明書(公証人による公正証書)にすることで、より認められる証拠とする。文書作成には、行政書士の関与をお勧めします。


Q29.「年金保険」のタイプと、「医療保険」の契約ポイントは?

A.老後の備えで活用されている年金保険には、いくつかのタイプがあり、契約する場合は特に気を付けることが必要です。

 終身年金と確定年金  終身年金⇒  被保険者が生存中、年金をを受取れる
 確定年金⇒ 受取期間が10年間や15年間と確定している
 逓増型と定額型  逓増型⇒  年金額が毎年もしくは、3年ごとに増額される
 定額型⇒ 年金額が最初から一定で変わらない
 積立型(月払い・年払い)一時払い  積立型⇒  退職の数十年〜数年前より、毎月積立てて年金原資を作る
 一時払い⇒ 退職金などの纏まった資金を、年金の原資として一括で払い込む
 終身型個人年金と夫婦年金  個人年金⇒  被保険者が生存中、年金が支払われる
 夫婦年金⇒ 夫婦のどちらかが生存中、年金が支払われる
 定額年金と変額年金  定額年金⇒  契約時に、年金額を決定する
 変額年金⇒ 契約で年金額を決めず、運用成績で増減する


以上のようにタイプには、明確な特性がありますので、払込む負担額と、年金保険を受取れる期間をバランスよく選定することがポイントになります。
例えば、契約者と受取人を夫とし、被保険者を妻とする契約の方法。この場合、夫が先に亡くなっても、被保険者が生きているので年金契約は継続され、その時点で契約者と受取人を妻に変更すれば、妻が生きている間は年金が支払われます(終身年金の場合)。

様々なタイプがありますので、契約前は複数の設計書(見積り)を依頼して、吟味することが大切です。また、毎年、「新しいタイプの保険」が加わったりしますので、ここもチェックすることが有効です。

【「医療保険」契約でのチェックポイント】
第1は、医療特約ではなく単品の医療保険を選定することです。
不必要な保障がなく、保険料を低く抑えることができます。終身保険などに医療特約をセットして加入すると、保険料が高いので、結婚や出産で退職して自分の収入がなくなったときに、続けるのが難しくなることもあります。
単品の医療保険なら、保険料が安いので無理なく続けられます。 尚、妻が自分の名義で契約することです。
医療保障を得るには、夫の生命保険の医療特約を夫婦型や家族型にするという方法もありますが、この方法は、妻の保障は夫の保障の6〜8割となり(夫の入院給付金1日5,000円なら、妻は1日3,000〜4,000円)、保障が十分とはいえません。また、万が一、夫が亡くなったり、保険が満期になると妻の医療保障も同時に無くなります。
月数千円の保険ですから、妻自身の名義で保険を契約する。
保障額は1日5,000円は確保したいところです。前述の通り、差額ベッドは1日10,000円前後のところが多いので、最低でも、その半額はカバーしたいです。 医療保険の保障期間は、5年や10年で更新するタイプと、終身のタイプがあります。一部、80歳満期など期間の長いタイプもあります。更新型は終身保障や長期のタイプと比べて、当初の保険料は安めですが、更新ごとに保険料が値上がりします。
一方、「終身型」、「長期型」は当初の保険料は更新型より高めですが、途中の値上がりはありません。 女性は男性より、長生きする可能性がありますので、終身の医療保険に加入しておくと安心です。保険料は高くなりますが、年齢が若いときの契約と、経済的に余裕があって医療保障を充実させたい方にはお勧めです。
尚、医療保険には女性疾病特約が付けられるものがあります。
基本契約1日5,000円にこの特約を同額付けておけば、乳ガンや子宮系の病気など女性特有の病気での入院の場合にも、合計で1日10,000円の給付金が支払われます。保険料は特約分だけ高くなりますが、1日10,000円の基本契約よりは安くなります。女性系疾病に不安がある人は、この特約を付加することが有効です。
また、医療保険は、商品によって1入院あたりの支払限度日数があります。保険料が低いタイプは、この日数が短く(60日や30日など)決められているのが多く、日数が長くなるほど(120日、360日、730日など)保険料は高くなります。日数が長いものが安心ですが、保険料とのバランスで選定することが大切です。


Q30.「損害保険」の仕組みと、活用での注意点と要点ポイントは?

A.損害保険は、損害保険事業者(損保各社や共済等)が取扱う保険で、風水害、地震などの自然災害と、自動車事故等の損害を補償する保険をいいます。種別は、自然災害等の火災保険や地震保険と、自動車保険、貨物保険、船舶保険などがあります。これらは、保険業法によって法定され「金融庁」が監督官庁となっています。社会生活上、「火災保険」と「自動車保険」が不可欠な保険であり、契約上のルール(約款など)も細かく設定されています。いざ、事故が発生した際に、保険金を請求した契約者と保険事業者で、問題となるケースも多数発生しています。契約者側は、保険事業者の決定に納得できなくても、約款の細かさや保険知識の複雑さから、反論するにも躊躇し、渋々受け入れていることが「保険金不払い問題」ともなっています。問題の多くは、「損害保険金請求のしくみ」(請求での諸手続き・流れ)に起因していますので、その部分を解説します。

?損害保険のしくみ?

保険料の決まり方:
保険料の決まり方ですが、考え方は生命保険と同じです。例えば、自動車保険の場合、過去の統計などを元に、年齢別の自動車事故件数を予測し、将来の保険金などの支払いに充てるための必要額を算定し、また、事業運営に必要な経費をあらかじめ見込み、保険料を算定するといった具合です。
保険金の算定方法:
火災保険など対象物を補償する保険では、契約金額を保険の対象物の時価と同額に設定していれば、損害額の全額が支払われます。契約金額が時価に満たない場合は、その契約金額を限度に以下の算式で保険金が決定されます。
保険金=損害額×契約金額/時価
時価とは⇒同等の対象物を新たに建てたり、購入するための費用から使用による消耗分を差引いた額
契約金額とは⇒受取る保険金の限度額。   
尚、建物を対象としている火災保険などは、契約金額が時価の一定割合以上であれば、契約金額を限度に実際の損害額が支払われます。また、通常の火災保険では、「時価」をもとに契約金額を設定しているため、これだけでは同じ建物を建て直すコストを全額カバーできません。 保険金だけで同じ建物を建て直したいというニーズがある方は、契約時点でその家を新築した場合にかかるコストを算定した「再調達価額」を元に、契約金額を設定することもできます。再調達価額は当然時価を上回りますので、その分、保険料は割高となります。
損害保険の種類には、火災、自然災害、自動車事故、レジャー中の損害、医療費や介護費用など、様々なリスクを補償する保険があります。 また、生命保険と同様に、保険期間が長期におよぶ商品や貯蓄機能をもった積立型商品もあります。ライフスタイルの多様化に伴って、損害を補償する、その対象も多様化・複雑化しています。

【保険金請求の手続きと支払までの流れ:火災保険の場合】
@火災や自然災害(風害・雪害・台風等)で、保険目的物に被害を受ける

A契約者が保険会社もしくは、共済事業者に事故を速やかに報告
(事故の発生した日時、または、発見した日時と被害状況を伝える)

B保険会社や共済事業者  事故を受付。
保険事業者は、鑑定事務所に損害鑑定を依頼(事故調査)

C鑑定会社 現場調査の委託により、契約者等に連絡し、立会調査を行う。

D立会調査にて事故原因を確認し、損害状況を把握する。
(鑑定人より、保険事業者に速報提出)

E保険事業者の指示に則り、契約者が鑑定人へ「修理見積書コピー」を交付。
*鑑定人が、 損害額を算出し、鑑定書の原案(ドラフトと呼ぶ)を作成して、 保険事業者に送付します。

F保険事業者より、 契約者に支払額を提示して、契約者より合意確認して支払いとなります。「支払決定書」等を契約者に送付して、手続きが完了となります。

この一連の手続きに、保険事業者(損保会社・共済会社)から委託を受けた鑑定人が関わりますので、契約者と保険事業者間で、折合いや協議に不満が残る場合が多々あります。問題の要因は、鑑定人の損害評価と、契約者が修理業者に依頼して見積った額に差額が発生して、差額が大きいケースです。
現在、一般的に用いられている損害の算出方法は、「時価評価額=再調達価額(新価額)×経年減価率」で計算されます。
 
時価評価額とは、損害が発生したとき、発生した場所における保険の対象物の価額であって、再調達価額から使用による消耗分を差引いた金額をいいます。
再調達価額(新価額)とは、損害が発生したとき、発生した場所における保険の対象物と同一の構造・質・用途・規模・型・能力のものを再築、または、再取得するのに必要な金額をいいます。

一般的に、保険事業者(損保会社・共済会社)が保険金支払いの可否を判断する根拠として、現地の実況見分を行った鑑定人の鑑定書(ドラフト)に依ります。保険金支払い事案を「有責」、不可を「無責」と呼びます。

有責での損害算定額が、原案として鑑定書に示されていることから、鑑定書を業界用語で、ドラフトと呼んで、この金額を基本として、保険事業者(損保会社・共済会社)より、契約者へ協議・協定が図られます。多くの場合、契約者への打診で保険金額が決定され、異議等は難しいのが実情です。契約者から、保険金額の不満を伝えることは可能ですが、その場合には、単なる不満を言うのでは不十分ですので、異議の根拠を明確に伝えることが大切です。
保険事業者は損害保険のプロですから、契約者も、損害を精査した内容に即した異議が必要です。損害が不動産に関する場合は、専門資格者(1級・2級建築士・木造建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士、マンション管理士、不動産鑑定士、技術士など)へ精査や助言をお願し、適切な損害知識を得ることも、契約者にとっては必要な対応と思います。また、損害保険契約を定めた「約款」は、難解な記述や法律解釈に関係しますので、法律専門職者(弁護士、行政書士、税理士など)への相談も必要なことと思います。

【損害の鑑定を行う「鑑定人」とは】
鑑定人とは、「一般社団法人 損害保険協会」が定めた認定試験(1級から3級)に合格し、同協会に登録した者をいいます(損害保険協会は、公的な機関ではなく民間組織となっています)。
鑑定という名称が付いていますが、不動産鑑定士と違い、あくまでも民意で定めた資格者です。鑑定人の中でも、公的資格を持つ鑑定人は、専門鑑定人と呼ばれ、一定のランクが付与され、鑑定料も通常より高くなります。例えば、認定3級の合格者が、専門鑑定人で定める公的資格(1級・2級建築士・木造建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士など)の要件に該当する場合、専門鑑定人として損害保険協会に登録することができます。(公的資格の1級所持者が、A専門鑑定人。2級所持者が、B専門鑑定人。)

鑑定人は、第三者として鑑定を行いますが、保険事業者(損保会社・共済会社)に鑑定委託先を決める権限があります。当然、鑑定委託料も保険事業者(損保会社・共済会社)から、鑑定人(鑑定会社)に支払われます。 保険事業者(損保会社・共済会社)と鑑定会社が結託できないように、定期的な更新が規定されており、その際に、保険事業者(損保会社・共済会社)と鑑定会社は審査を受けます。鑑定会社は、適切な鑑定調査(正確・公平・迅速)を果たす義務があり、果たしていない場合は、業務等への改善勧告(重大な法規違反には命令もあります)があり、原則として、鑑定調査について、適正化が図られています。( 一般社団法人 損害保険協会では、鑑定査定で納得できない場合の「相談窓口」を設けていますので、こちらに相談することもできます。)

昨今は、台風や竜巻、風雪や地震など、自然災害が激増しているため、鑑定人が保険事業者(損保会社・共済会社)の意向を与して査定する事案も増えています。契約者だけでの対応や諸手続きに不安を感じる場合は、専門家(法律専門職者)への支援を求めましょう。


火災保険を例に解説しましたが、自動車保険や地震保険、貨物保険、船舶保険等でも「保険金支払い」への一般的な流れは同様です。
社会生活の変化に呼応するように、損害保険の分野が拡大・充実する中で、契約内容を定めた「約款」についてもページ数の増加で、難解な部分が表れています。

損害保険は、契約者に降りかかった事故・損害に対して、損害額を補償する重要な備えですが、保険金を請求する際に正確性が求められ、保険を掛けていても、その煩わしさから請求をしない契約者もいます(せっかくの備えでも、契約者が事故・損害を申告し、保険金支払いを請求しなければ保険金は下りません)。 適切な諸手続きと速やかな申告を行い、損害額の経済的損失を補い・手当てすることは、契約者の大変重要な権利です。そして、その補償を商品として販売して、損害保険事業を行っている保険事業者(損保会社・共済会社)は、適切・公平・迅速に対処することが定められています(保険事業の監督官庁:金融庁より、保険事業者に対して、「法令・コンプライアンス」指針に則って、業務体制を構築するように求められています)。

契約者が、保険金請求で困ったり不安を抱くことも昨今は増加していますので、専門資格者や法律専門職者へ相談することも大切な要素と感じます。また、交通事故(Q18にて解説、ご参照下さい)での、損害保険金請求に「交通事故調査書」等が必要となる場合もありますので、作成を含め事故対処に関して、行政書士などの法律専門職者へ早めにご相談されるをお勧めします。


このページの先頭へ

『資格試験の勉強法と試験対策について』Q&A

Q31.「資格試験」チャレンジへのテキスト等、選ぶポイントは?

A.各種の国家試験や各種の民間試験の受験に向けて勉学に励んでいる方々へ、多少なりとも資格試験で培った経験を紹介することで参考になればと思い、勉強法やポイントを紹介します。(あくまでも私見としてのガイドであり、勉強法に正解はありませんので、ご自分の勉強法への工夫や微調整などに活用頂ければ幸いです。)

試験勉強に欠かせないのが、テキストや参考書、過去問集の書籍選びですが、ここが最初の重要なポイントとなります。
@「テキスト・参考書は、最新版を購入します。」
資格試験は、常に最新の法令・情報・時事が出題されますので、前年度、受験された場合でも最新版に変えることが必要と思います。出費となりますので家計には苦しいですが、合格に不可欠と思い、他の出費を控えても最新版としましょう。次に、書店で売られているテキスト・参考書類で、コンパクトに纏まった書籍があります。「この1冊で合格できる!」「これだけ覚えれば大丈夫!」など、これらのキャッチコピーに誘われて購入してはいけません。試験問題を作る試験委員の方々は、これらの書籍をチェックして、あえて記載されていない問題を作ります。また、資格試験は、資格者となる能力を考査する目的で実施されていますので、部分的に暗記しても、本試験では、全く解けない・分からない状況となりえます。
テキスト・参考書を選ぶ際は、敢えてページ数が多く、内容が最新で、過去問が要所要所に載っていて情報量が豊富な難しそうな書籍を選ぶことです。そして、そのような内容のテキスト・参考書を2冊〜3冊、ピックアップして、出版社が違うテキスト・参考書を最低2冊購入します。出版社によって、試験暗記の要点が違ったり、表現(記載)方法や、それぞれカバーしていない法令や情報・時事が載っていたりと、最低2冊購入することで、1冊で足りない部分を補うことかできます。

A「過去問集」は、5年分位がカバーされている解説付きを選びます。
例えば、宅地建物取引士試験(前・宅建主任者試験)は、法令・最新情報が主体で出題されることから、国家試験の「登竜門」と呼ばれ、難関試験の一つです。難関だからといって、10年分の過去問集を購入し、古い過去問を解くことは、せっかく覚えた知識を混乱させますので、過去問は極力、5年分位で十分です。古い過去問集は、法令が変わったり、追加された部分が欠落していますので、惑わされないためにも、直近の過去問をこなしていくことで知識を養うことがベストと思います。

B「予想・模擬問題集」も出版社別に数冊、購入する。
「テキスト・参考書」「過去問集」と合わせて、各出版社から出されている「予想・模擬問題集」も各出版社で出題傾向が違いますので、出版社別に数冊、揃えることをお勧めします。最新の法令改正・情報・時事が網羅された予想問題集を解くことで、ご自身の理解度が分かりますので、必須アイテムのひとつです。予想・模擬問題集には、本試験同様の解答用紙(マークシート方式)が付録で付いていますので、これをコピーして本試験と想定して活用します。資格試験は、試験時間の中で問題を読み、解答を決め、マークアップ(塗り潰す)する作業となりますので、実践に即したこれらの一連の作業に慣れることが、合格への布石となります。常に本試験を想定して勉強するには忍耐が伴いますが、本試験は限られた時間内で、正確にマークアップまで完了しなければなりませんので、この作業の習得も大切な課題となります。


Q32.「資格試験」チャレンジの勉強法と合格への行動は?

A.勉強法は、多くの書籍等で紹介されていますが、これにも正解はありません。ご自身のスタンスで足りない部分もしくは参考として、以下ご参照頂ければと思います。

《私自身が実践した勉強法》
1)テキスト・参考書・問題集には、書込みやアンダーライン等を引かない
資格専門校の先生、講師の方々は、テキスト・参考書・問題集の解説部分等にアンダーラインやマーカーペンで書込みや線を引くように指示しますが、これは極力しない方がいいと実体験として思います。何言っているんだとお叱りを受けるかもしれませんが、書込みやアンダーライン、折目等は、一切しませんでした。テキストや参考書(法令条文・判例六法など)、問題集は購入したとき同様、綺麗な状態で本試験まで、数十回と読み込みました。(古本屋でも高額で買い取ってくれると思われる使用状態の良さです)
テキスト・参考書を書店で購入する際、ブックカバーを付けて頂き、活用しました。なぜ、ここまで綺麗に使用したかと言うと理由があります。資格試験は、知識の刷り込み(インプット&アウトプット)が合否を分けます。頭に知識を刷り込む(インプット)には、読み込みと、鉛筆等での記述が大切ですので、記述は別に大学ノートを用意して、これに書き込んでいきました。勉強のたびに、要点・重要ポイントを大学ノートに書き込んで、書くことで頭に知識を刷り込んでいきました。
条文などは、要点をしっかりと書込み、内容把握に努めました。本試験まで、この勉強法を続け、5クール以上になり、大学ノートも10冊以上になりました(ノートは、資格試験に格闘した形跡が詰まっていますので、処分できずに保管してあります)。

テキスト・参考書等に直接、書込みやアンダーライン等を引くことで、再度、その部分を読み込む際、分かった気分になることのマイナス要素(落とし穴的な感覚)を感じ、常に新鮮な感覚で勉強に励めるように、書籍等を綺麗に扱うように心がけました。また、資格試験は常に最新の法令・情報・時事が出題されることから、出版から1年以上経過したテキスト等は、試験教材・アイテムとして不十分となり、古本屋に買い取ってもらい、最新版購入の足しにしました。1発試験で合格を狙う方々でも、古いテキストは合格後、資格者となった後、不要もしくは、参考とするには不十分ですので、より専門的な最新版を購入することとなります。これらの事情から、テキストや参考書等を綺麗に使用するメリットは、十分にあると考えました。

2)毎日の学習の積み重ねが、記憶の蓄積となります
現在人は、やらなければいけない細々な用事や仕事を抱えています。この中に、資格試験の勉強時間を確保して実践することが、合格を得る条件となります。勉強時間を纏めて確保して、毎日やらない方もいますが、私の知人や仕入れた情報の中で、この方法(纏め勉強)で合格を勝ち取った方はいません。(あくまでも私の知る範囲ですが)
ちょっとした時間(30分程度)でも、毎日必ず勉強を続けることが、合格を引き寄せると思います(当然ながら、正月も勉強します)。 人間は、忘れる習性のある生き物です。資格試験の勉強は、この習性との戦いです。この習性に打ち勝つには、日々の学習での刷り込みと答練(インプット&アウトプット)以外に方法はありません。何度も何度も同様の学習を続け、記憶に蓄積させるには、毎日取組むことが肝要です。また、纏めて勉強しようと予定した時間に急な用事や仕事が入った場合、勉強ができなくなります。このようなイレギュラーな事情が数回続くと、チャレンジへの意欲自体が薄れていき、受験を諦めることにも繋がります。
資格試験勉強を毎日続ける意義は、「継続は、力なり」だけの効果で留まりません。非常に多くの意義があります。

3)電車やバス等の移動時間にも、テキストや参考書を開く習慣を体得する
人間は時間だけは、平等に与えられています(様々な事情等で限られた時間で挑戦されている方もいますので、本当の平等とは言えないかもしれませんが)。
24時間を有効に使う方法として、雑踏の中でも勉強できる集中力を養うことが必要です。電車やバス等の交通機関を利用しているときでも、テキストや参考書を開き、記憶の蓄積を図る(文庫本サイズの参考書を、移動用の勉強教材として購入することをお勧めします)。机でなければ勉強に集中できない方もいますが、24時間を有効に活用するには、欠かせない勉強法です。
どこでも集中できるスタンスを取ることで学習時間をしっかりと確保します。私の場合、移動は車が主ですので、参考書を常に持ち歩き、移動の合間に、次の打合せや商談まで1時間の空き時間がある場合は、訪問先近くのコンビニ駐車場で、45分間、集中して勉強しました。この方法には、その他の利点として、集中力を鍛える効果があります。資格試験の試験会場は、多くの受験生と一緒に、一斉に試験を受けます。雑踏ほどの雑音はありませんが、問題用紙を捲る音、イスを引く音、咳き込み、ため息など、集中力が問われる環境です。このような環境下で試験に挑む訳ですから、雑踏での勉強で、どこでも集中できる能力を日頃から鍛えることが、合格の秘訣と感じます。

4)過去問の正答率を8割以上に、確実に引き上げる。
『過去問を攻略した者こそ、合格を勝ち取る。』一部の出版社のテキストや参考書、資格試験専門校の講師等が言っている格言です。本当に、その通りと思います。過去問ほど、出題傾向を示している教材はありません。最低でも、2クールを過去問解答に当て、知識の刷り込みと答練(インプット&アウトプット)と、出題傾向を知ることで、引っかけ問題への免疫を高めることが必要です。
過去問をこなし続けることで、正答率が8割超えた段階で一旦、過去問への取組みを止め、予想・模擬問題集に取り掛かります。過去問は、こなれてくると、正解を暗記していますので、問題解きには物足りなくなります。ここで予想・模擬問題集へ移行します。出題傾向や表現の仕方が過去問と違い、正答率が格段に下がることと思います。この状況に悲観することはありません。過去問の正答率を8割以上にした実力を信じて下さい。
予想・模擬問題集の正答率が下がった原因は、知識の細かな部分の記憶・理解度に起因しています。予想・模擬問題集は出版社で出題傾向が違いますが、概ね、引っかけ問題を主体として構成されています。予想・模擬問題集の正答率に一喜一憂せず、問題をこなすことで、細かな知識の刷り込みと答練(インプット&アウトプット)を進めることが肝要です。本試験の3日前までに、正答率を7割以上に持っていくことが必要と思います。

5)メリハリのある学習計画で、一日のスケジュールを組み立てる。
合格する人は、勉強時間をしっかりと生活のサイクルに組み込んでいます。私の場合は、早朝(7)と夜(3)の比重で、勉強時間を振り分け実践しました。日中は仕事や用事がありますので、必然的に、朝・夜になりました。早朝は、勉強に集中できる大変有意義な時間です。世間が活動し始める前の貴重な時間として、4時から7時半位までの約4時間ほどです。この時間を勉強に当てることで、一日4時間を最低限確保しました。主婦の方々は、早朝にこれだけの時間確保は難しいと思いますので、1時間程度の勉強に留め、家事がひと段落する時間帯で長めの時間を確保するなど、工夫が必要と思います。

夜はスケジュール通りにこなせない事情が多々あります。急な電話や会合、仕事のやり残しなど、勉強が難しい時間帯ですが、最低1時間半、床に就くまで、確保しました。夜勉強のコツは、参考書の通読に当て、眠くなるまで読書を続けることです。そんなことで暗記・刷り込み(インプット)できるのと感じる方、ぜひ、実践して、毎日続けてみてください。知識の蓄積に大変有効なことが実感できると思います。眠くなるまでと言いましたが、床に就く前の約2時間程度で切り上げて、しっかりと休む(睡眠)ことが大切です。あまり無理をすると、次の日に影響して生活サイクルが崩れます。毎日続けることが肝要であり、その継続した努力が、頭を鍛え、記憶の蓄積となります。 

また、日々の勉強のストレスにも注意が必要です。メリハリには、リフレッシュする時間をしっかりと確保することも含まれます。勉強の継続で、頭が疲れてきます。このように感じたときは、体が休養のサインを出していますので、一旦、勉強を休止します。ちょっとした小旅行やドライブ、温泉、ショッピングなど、ご自分がリラックスできる時間を取りましょう。非常に大切なことです。 アロマやハーブティーで、ご自身を癒すことも効果があります。

6)資格試験の試験科目の全部に毎日、学習を加える。
各種の資格試験の試験科目は、概ね10〜14種類程度が指定されていますが、この科目全部について、短時間でも毎日学習することで、記憶力・知識力への刷り込みと答練を行います(インプット&アウトプット)。この方法は飛躍的に頭を鍛え、思考を柔軟にします。

例えば、行政書士資格試験は、平成18年度試験から大幅に難化して、国家試験の中でも最難関の部類に近づいたと言われています。試験科目も憲法・民法・行政関連法(行政法令総論・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・土地収用法・地方自治法)、商法・会社法・基礎法学理論、個人情報保護法・国際条約等を含めた一般法令(世界法体系理論・憲法・政治経済・財政金融・歴史・会計簿記・社会福祉・情報通信)、文章理解など、広範囲に試験科目が指定されています。私が行った勉強法は、これらの試験科目全部に、毎日、何らかの学習を行いました。そんなの無理、時間がないとお考えの方は、ちょっと考えてみてください。細かく分けて勉強することで、10種類位の科目に、毎日、学習を加えることができます。この方法は、毎日の勉強時間中に、勉強科目を細かく変えていきますので、脳(地頭:じあたま)を飛躍的に鍛えることができます。この結果、知識と思考力がアップして、問題解答への正答率が上がっていきます。最初は大変ですが、3ヶ月過ぎた頃から、苦にならなくなり、過去問や予想問題の正答率に、結果として現れてきます。資格試験は、「知識の刷り込み並びに答練(インプット&アウトプット)を図りつつ、如何に効率よく、脳を鍛えるか」ですので、この勉強法は大変有効と感じます。


資格試験の勉強法に正解はありません。ご自身が体得して、晴れて合格を勝ち取ったときに、やってきたことへの答えがでます。正答(合格)を得るために、合格者から学び参考とする、ご自分の方法への微調整に活用する、大幅に勉強方法を見直すなど、本試験まで、やれることをしっかりと実践することが大切です。尚、資格試験は、法令改正や制度・政策の観点から、試験内容や出題科目が大幅に変わる(難化)ことがありますので、合格者(有資格者)からアドバイスや助言、講義等を受ける場合は、当然ながら、そこを踏まえて参考とすることが必要です。因みに、宅地建物取引士(旧:宅建主任者)国家試験は、平成22年度試験から出題内容が難化、介護福祉士国家試験は平成23年度試験から、出題内容が拡大かつ難化して、資格取得が試験制度に一本化されました。

資格試験に挑戦すると決めた以上は、何とか継続して、食らい付く気概を持つことです。途中で諦めたら、今までの努力が止まります。挫けそうになる気持ちに打ち勝つのも、資格試験合格の条件です
資格試験にチャレンジされている努力を必ず誰かが応援し、評価、協力しています。伴侶、家族、友人、仕事仲間、先生や講師の方々、一緒に挑戦している同志、合格後の皆さんを資格者として待ち望んでいる方々(介護の現場では、合格するスタッフを待っている利用者もいます)など、苦しいときには、周囲の協力やお世話になった事柄などを思い出して、諦めずに踏み留まって下さい。その努力は必ず報われます。

本試験まで、予想・模擬問題集に悪戦苦闘して、希望の正答率を得られなくても、悲観せずに割り切ることも必要です。実は、私の場合は、そのような状態でしたが、本試験で実力を発揮するために、「本試験が肝心」と割り切り、勉強の継続を試験当日:試験開始ギリギリまで取り組みました。

ここまで、偉そうにアドバイスする気持ちで解説・ガイドしている訳では、全くありません。真摯に、チャレンジする方々を、心から称え、少しでも参考となればと考え、自身の経験と勉強法の一端を紹介しました。当事務所では、資格試験にチャレンジされる方、されている方への、助けになればとの信念の元、各種の「資格試験対策講座」も計画し進めております。
法令改正や現政策の理解が問われるのが資格試験です。このため、資格試験は難化傾向にあると言われていますが、絶対に合格するとの確固たる思いで、合格を勝ち取ることを祈念しております。



Q&A 現在、ここまで。



「解説者:ガイド」 渡辺 信二(ワタナベ シンジ)
《所有:国家資格》
行 政 書 士 マンション管理士 宅地建物取引士 管理業務主任者 介 護 福 祉 士
《所有:公的資格》 
認知症(痴呆)介護実務者研修 管理者課程修了(2005年兵庫県社会福祉事業団:公認)
《所有:民間資格》
CGアーツ協会認定:旧画像情報CG部門1級(CG1級技術者)、マルチメディア検定2級


本ページ『Q&A』として記述した以外でも、ご質問をお受けしています。
何なりとご連絡下さい。誠実・守秘義務をモットーに、丁寧にお答えします。
 TEL 017-765-6363 FAX017-765-6364 
 メールはお問合せページをご利用ください。