当事務所の行政書士について、掲載しています。
【相続問題へのサポート】
地域の皆さんにとって、相続問題は必ずと言っていいほど、確実にやってきます。相続紛争に巻き込まれないための対策として「予防法務」をご検討・ご相談されることをお勧めます。
相続人(法的には推定相続人と呼ぶ。被相続人が亡くなった後に真正相続人となる)が交わす遺産分割協議書等は、一種の『契約書』です。この契約書に関して、被相続人の意思を反映させる書類が『遺言書』となります。遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。一番ポピュラーに利用されているのが、自筆証書遺言です。御自身が自筆し、署名・押捺する遺言書をいいます。トラブルに発展している遺言書で、圧倒的に多いのが「自筆証書遺言」です。
【遺言書作成について】
自筆証書遺言とは、遺言者が,その全文・日付・氏名を自書し、これに押印することにより作成するものをいいます(民法968条)。したがって、遺言者が字を書くことができ、印を押す機会さえあれば、原則として、自分の思ったとおりに自由に作ることができます。
自筆証書遺言は簡単に作成でき、遺言をしたことを秘密にしておけることや、遺言作成にほとんど費用が掛からないというメリットがあります。逆にデメリットとしては、遺言書が紛失したり、第三者によって隠匿・偽造・変造されるおそれがあること、また、方式の不備により無効となる場合等があります。
【法律上の効果(効力)が認められる遺言書作成のルール】
@相続に関する事柄の記述
当然ながら相続に関係しない内容は、作文的に扱いになります。例えば、相続人に当たる方々へ仲良く暮らすようにと考えて記述した家訓のような内容は、法的な効力は生じません。遺言を残す側としては、そのような内容を記述したいとの思いは重々理解できます。しかしながら、法的には当事者に厳守させる効力・強制的な効果はありません。
A相続以外に定める財産的な処分
遺贈(財団法人や公共的機関への寄付行為など)や生命保険金の受取人の変更など
B身分行為(遺言認知、未成年後見人・未成年後見監督人指定)
C遺言執行(実行)に関する事柄(遺言執行人を定めるなど)
満15歳になった者は原則として遺言ができます。
遺言をするについても事物の判断は必要ですから、意思能力(遺言能力)のない者は遺言をすることはできないとされています。
成年被後見人とは、「常に精神上の障害により、自己の行為について判断能力を欠く状態にあり、後見開始の審判を受けた者をいいます。」
成年被後見人でも、本心に復したときには、2人以上の資格のある医師の立ち会いがあれば、遺言をすることができます(民法973条)。
他方、被保佐人の場合は誰の承認も必要でなく、1人で遺言できます。
尚、遺言をするについての遺言能力は、遺言をするときに必要なため(民法963条)、正常な精神状態で遺言をなした者が、その後心神喪失中に死亡したとしても、その遺言は有効とされています。
被相続人が死亡したときは、その人が生前に持っていた財産を、相続人(家族や親族等)が引き継いでいくことを『相続する』といいます。相続人の範囲や遺産分割、遺言など「相続制度」をめぐる根本的な規定は民法の相続編(第882条〜959条)に詳細に定められています。実際の実務では、民法を基本に、憲法、戸籍法、不動産登記法、信託法、破産法、相続税法など、相続に関するそれぞれの関係法令に則り、進めることとなります。
相続人が2名以上いる場合で欠かせない手続きが『遺産分割協議』です。遺産分割には、いつまでといった規定がある訳ではありませんが、遺産分割協議が済んでいないと、相続人には様々なマイナス(不利益)が発生することがあります。例えば、被相続人の配偶者に設けられている減税措置が受けられない、被相続人の預貯金につき、払戻しに制限が発生する、不動産名義・自動車名義などが被相続人のままである場合も制限を受けます。長期間、遺産分割協議をせずにいた場合は、本来(第一順位の推定相続人)の相続人が他界するなど、相続人が代襲され、増えることもあります。このようになった場合は、相続手続きも煩雑になります。
相続時に遺言があれば、その意思に従った遺産分割方法となりますが、遺言がない場合は、遺産分割協議を経て、『遺産分割協議書』を作成することになります。これは一種の契約書(合意書)になりますので、この書面を添付して、預貯金や不動産、自動車等の権利者変更を行うこととなります。
遺産分割協議書は法的効力を持つ書面にする意味合いで作成するものですから、専門家(弁護士、行政書士等)に作成関与してもらうことが肝要です。書面には決まった「雛形」があるわけではありませんが、遺産明細(財産目録)や相続人関係説明図(相続人の系図)と、遺産分割協議の内容を明確に記載することは不可欠となります。
【相続に付随した探索/調査】
遺言書作成支援や遺産分割協議書作成での権利・義務関係(農地:耕作放棄地・遊休農地・放置林、利活用の手続き等)、所有者不明の土地(所有者・共有者の探索調査・相続人の確定・所有者不明の原因及び意向調査)等々、相続にて問題となる戸籍等の調査(官公署等)、親族関係(関係説明図作成)の遺産分割協議支援は、登記等の有無に関わらず、行政書士の専管業務となります。
【任意相続財産管理】
「任意」にお受けする相続財産管理について、相続登記に関係なく、戸籍関係書類の取得・取寄せ、相続関係説明図の作成、相続財産の調査(金融機関含む)及び目録の作成、自動車関係の調査・変更及び廃車手続等、遺産分割協議の作成等。
【自身で行う(相続人による)作業での難しい点】
@相続人が少ない家族関係の場合は、一般の方でも遺産分割協議書を作成することは容易ですが、離婚・養子など、様々な要因・関係が絡んでくると、一般の方では大変な作業になります。
A戸籍等の取得は、たとえ親族の分を取得する場合でも、その都度、本人からの委任状を提示する必要がありますので、何度も役所へ足を運ぶこととなります。なお、個人情報保護法の影響もあり、直系の親族(尊属・卑属)でない場合は、取得が制限される場合もあります。例えば、生存している方の戸籍は他人(他の兄弟姉妹など)が役所へ請求しても断られます。
※行政書士は職務上、戸籍などの書類を取得する権限がありますので、最初に依頼人より、委任状を交わし、必要書類を揃えます。
B戸籍等も記載事項が分かりづらく、除籍・改正原戸籍・附票・改正原附票など、どれを取得すればよいのか、一般の方には非常に分かりにくい部分です。行政書士は、戸籍の内容を読み解き、どの書類が必要なのか判断し、一連の作業を代行します。
内容に間違いや祖語(そご)があった場合は、遺産分割協議書の効力が否定されることもありますので、注意が必要です(法務局や陸運局、銀行、証券会社等での変更手続きでも拒否されることもあります)。
Cご自身での相続人の調査で、知らない人が相続人として判明した場合は、その方への連絡が必要となります。この際、専門家ではない一般の方が連絡(通知書を送付するなど)した場合、警戒されたり無視されたりと、遺産分割の手続きが滞る事態ともなります。遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印(実印)と印鑑証明書の添付が必要ですので、日頃から連絡を取り合う関係になかった方へは細心の配慮が必要です。ここを欠いた場合は、ご協力いただけないことにも繋がります。
また、遺産分割協議に未成年者がいるときは、特別代理人を選定することが必要となります。相続の場合は、親など利害が対立する者は特別代理人になれません。この場合は、親族の中から適切な方を選び、家庭裁判所へ申立をして選任することとなります。
『遺産分割協議書』は、相続人の間での後日の紛争を予防するという意味と、各種法的手続き(預貯金の解約・払戻し、自動車の名義変更や譲渡、不動産の登記、税金の申告、有価証券の名義変更など)を行う際に必要となる「権利義務・事実証明」の法的書面となりますので、法定事項に則り、正確に記すことが求められます。
これらの作業は、行政書士の「権利義務・事実証明に関する書類作成」に当たる専権業務となります。なお、行政書士は、ご依頼を受けた代理人として、法律で制限ある事項以外(他士業の専管)、権利義務・事実証明に関する書類作成を許されている隣接法律専門職者です。
民法の相続編(第882条〜1044条)が、相続においての基本的な内容となりますが、この相続改正法が改正(2018年7月6日成立:7月13日公布)され、以下の項目が順次、改められます。
(相続改正法=民法・家事事件手続法及び法務局における遺言書の保管等に関する法律を指す)
1.配偶者の『居住権』が認められます(上記公布の日から2年以内に施行される予定)。相続が発生したご自宅の権利を「所有権」と「居住権」に分け、被相続人の配偶者(妻)には居住権が認められます。例えば、夫が亡くなり80歳の妻(配偶者)とその息子2人が相続した場合、今まででは配偶者2分の1、その子はそれぞれ4分の1ですので、自宅である不動産と預貯金を金銭に評価して、法定相続分を分けていました。改正法では自宅の居住権と所有者を分けて相続できますので、配偶者はご自宅に住み続けることが可能となります。
〔配偶者短期居住権とは〕
配偶者の死亡日から遺産分割協議の成立までの短期的な居住権を認めるものをいいます。遺産分割により相続財産の帰属が確定する日、または相続開始から6カ月を経過する日の何れか遅い日まで、当該居住建物に無償で居住する権利のこと(改正法1037条)。
〔居住権の注意点〕
「居住権は売却などの対象とならない」という点です。居住権は権利を譲渡できません。例えば、居住権を活用して、ご自宅で生活していたが、介護施設等に移ることとなった際、売却して入居金を捻出したいと考えても、売却の対象とならないことから現金化はできません。
2.遺産分割等に関する改正(上記公布の日から1年以内に施行される予定)
(1)持ち戻し免除の意思の推定
持戻しとは、特別受益のうち、婚姻・養子縁組のため、または、生計の資本としてなされた生前贈与を相続財産に加えることをいいます。相続人間の公平性をはかることが目的とされます。例えば、被相続人(遺産を残して亡くなった方)の生前に、大学の学費や結婚式の費用など、生前に贈与を受けた人が相続人にいる場合は、全体の相続分を算出する際に、贈与分を「特別受益」として遺産に加え、持ち戻しとして合算してから、各相続人の相続分を算定します。この際の持ち戻しは、遺留分を侵害しない限度で、被相続人の意思で、これを排除することができます。これを持戻しの免除といいます(民法第903条3項)。 改正法では、被相続人が持戻し免除の意思表示をしていなくても、それがあったものと推定する。これによって、生前贈与や遺贈が行われた相続人は、より多くの相続財産を受取ることができます。
〔持戻し免除を受けることができる要件〕
婚姻20年以上の夫婦の間で一方の配偶者が他方の配偶者に対し、居住用の土地・建物の遺贈・贈与をした場合。これらの要件が認められる場合は、「持戻し免除の意思表示があったものと推定されます(民法第903条4項)。※伴侶亡き後の配偶者の生活保障を厚くする改正と言えます。
(2)預貯金の仮払い制度
預貯金口座は、名義人(被相続人)の死亡によって凍結され、引出しが制限されます。これによって被相続人の葬儀代や関連する精算手続きに支障となっていました。改正法では、預貯金の仮払い制度(民法第909条の2、家事事件手続法第200条3項)を創設し、預貯金の払い出しを可能としました。※家庭裁判所の判断が不要で、相続開始時点の預貯金の額の3分の1に各相続人の法定相続分を乗じた額に相当する預貯金の引き出しが、単独でできる法制度となります。
3.遺言制度に関する改正
(1)自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月施行)
自筆遺言は、改正前の民法第968条1項にて「全文、日付及び氏名」を全て自書し、これに印を押さなければならないとなっていました(要式性と自書性を厳格に求める条文)。改正法では、「全文を自書する」という要件を緩和して、作成の手間を改善する方式として、本文の自書は変わらないものの、遺産を記載した「財産目録」については、パソコン等で作成可能となりました。その他、不動産の登記事項証明書や預貯金コピーの添付も認められるようになりました。但し、財産目録等の全ページには、署名捺印が必要です。
(2)自筆証書遺言の保管制度(上記公布の日から2年以内に施行される予定)
自筆証書遺言は、手軽に作成できる点がありますが、公正証書遺言のように、公証人役場で原本を保管いただくという仕組みではありません。作成した自筆証書遺言を紛失したり、本人亡き後、相続人に気付いてもらえないケースや、隠匿もしくは変造されるケースなど、様々な不安要素がありました。改正法では、自筆証書遺言の「保管制度」を創設(法務局における遺言書の保管等に関する法律=新遺保法)して、不安要素への対策を講じています。
ア 保管の申請
遺言書を作成した場合は、法務局に保管の申請を行います。法務局は形式を審査して問題がなければ原本を保管します(新遺保法第6条、第7条)。※保管後、返還を求めることも可能。
イ 相続人による法務局への照会が可能
相続人等は、遺言者死亡後、遺言書が保管されているかなどの照会を法務局にすることができ、遺言書の証明書を取寄せ、被相続人の意思とおりの相続手続に入ることができます。
ウ 自筆証書遺言の検認が不要となる
改正前では、自筆証書遺言が残されている場合は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続を受けることが民法第1004条1項にて法定されていますが、保管制度を利用した場合は、検認不要となり、煩雑と言われていた検認手続を省略することができます。
(3)遺言執行者の権限の明確化
遺言執行者とは、遺言を遂行する人をいいますが、遺言執行者の法的地位は、改正前の民法第1015条「相続人の代理人とみなす」とだけあるのみで、遺言執行者の法的地位が明確になっていませんでした。改正法(民法第1007条2項)で、遺言執行者の権限を明確化しました。
〔遺言執行者の権限等〕
ア 選任方法 遺言または相続人からの申立て
イ 資格要件 未成年者や破産者は就任できない。
上記以外の受遺者や相続人でも就任は否定されない。
なお、法律専門職者(弁護士・司法書士・行政書士等への依頼可能)
ウ 職務権限 遺言内容を実現するための相続管理その他遺言執行に必要な一切の行為
(財産目録作成交付、預貯金の払い出しや解約、子の認知、相続人廃除等
エ 報 酬 遺言内容等による。遺産の数%など
4.遺留分制度の見直し(上記公布の日から1年以内に施行される予定)
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人が遺産に対して有する最低限の保証された権利(改正前民法第1034条)。例えば、遺言書にて「全財産を相続人甲に相続させる」と自書あった場合でも、他の相続人から遺留分の主張がされた際は形成権として認め、遺留分の主張をした他の相続人に財産を与えなければなりません。近年、相続の際の事業承継などに問題があるとされ、改正法では見直しが図られました。
〔見直しの概要〕
遺留分権利者は「遺留分の侵害額」に相当する金銭の支払いを求めることができます。また、算定方法の見直しとして、相続人に対する贈与は、原則として相続開始前の10年間にされたものに限り、遺留分算定の基礎に含めれること。
5.権利の承継と義務の承継(上記公布の日から1年以内に施行される予定)
改正前は、相続分を定めたり、遺産分割方法を取決めしても、法定相続分を超えて財産を承継した相続人は、登記等の第三者対抗要件を完了しなくても、当然に第三者へ対抗できるとされていましたが、実務では誰が真の所有者かなど、判断ができずにトラブルの原因となっていました。改正法(民法第899条の2)では、遺言によって承継した場合であっても、法定相続分を超える部分については、登記や登録などの手続を完了しなければ、第三者に対抗できないとなりました。自分の権利を守るためには、相続が開始したら、速やかに登記や登録が必要へと改正されました。
6.相続人以外の者の貢献の考慮(上記公布の日から1年以内に施行される予定)
改正前は、特別寄与分が認められるには、結構ななハードルがありました。
例えば、(過去の判例)
改正法(民法第1050条)では、被相続人の相続人以外の親族が、無償で療養看護などの労務を行ってきたとして、被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合は、その相続人に対して「特別寄与料」として金銭を請求することができるようになりました。請求できる人は、相続人、相続を放棄した者、相続人の欠格事由に該当する者及び廃除により相続権を失った者を除いた、「被相続人の親族」である(民法第1050条1項)。この親族には、被相続人の子の配偶者・被相続人の兄弟姉妹及びその配偶者・被相続人の兄弟姉妹の子及びその配偶者、被相続人の配偶者の連れ子も含めれるとされています。※法的婚姻もしくは親族関係が必要とされ、内縁関係にある人は対象外となります。
〔特別寄与が認められる要件〕
ア 被相続人の親族
※相続人、相続を放棄した者、相続人の欠格事由に該当する者及び廃除により相続権を失った者を除く
イ 被相続人に対して
「無償で療養看護その他の労務の提供により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をすること」が必要
〔特別寄与を請求できる人の範囲〕
「被相続人の親族」
「被相続人の子の配偶者、被相続人の兄弟姉妹及びその配偶者、被相続人の兄弟姉妹の子及びその配偶者、被相続人の配偶者の連れ子も含めれる」
〔特別寄与の請求手続〕
ア 家庭裁判所に対する請求
「相続人当事者間にて協議が整わない、または協議することができない場合は、家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求することができます。」
イ 特別寄与料の算定
「家庭裁判所は、処分の請求に対して、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情をを考慮して、特別寄与料の額を定める」(家事事件手続法216条の3)
ウ 権利行使の制限 特別寄与の権利行使には制限があります。
「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6カ月を経過するまで、または、相続開始から1年を経過するまで。」
改正前は、被相続人に対して介護等により生活への貢献をしてきた親族(子の配偶者等)でも、相続人ではないとの形式的な理由のみで相続手続から除外されてきましたが、改正法では、一定の範囲でその貢献に報いるものとして、新設されたものです。
【 改正相続法に関する法律 】
・民法(改正民法)第885条〜第1050条
・法務局における遺言書の保管等に関する法律(新遺保法)
・家事事件手続法(改正一部)第3条の11・14、第200条、第215条〜第240条
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